PIONEER PL-88F
FRONT LOADING STEREO TUNRNTABLE ¥79,8001981年にパイオニアが発売したフルオートプレーヤーシステム。「フロントローディング方式」という後のCD
プレーヤーに通じるようなユニークな構造を採用し,通常のコンポーネントと同様にたの機器と積み重ねがで
きるなど,その便利さが人気を呼びました。PL-88Fの大きな特徴は,上記の「フロントローディング方式」にありました。ターンテーブルとトーンアーム
をのせたスライダーが前面のアクリルカバーを開けて前にせり出し,レコードをセットするというもので,通常
のアナログプレーヤーでは使えなかった上部の空間を有効に利用できるようになりました。キャビネット自体
も40kgの荷重に耐えるように作られており,他の機器を積み重ねることが可能になりました。また,この強
固なキャビネットの中にターンテーブルが格納されて動作するため,外部の振動の影響も受けにくいという
メリットを持ち合わせていました。
このような形状のプレーヤーながら,トーンアームはリニアトラッキング方式ではなく通常のスイングアーム方
式を採用ていました。トーンアームはターンテーブルの奥に収納されており,アームの駆動は水平DDモータ
ーとDCモーターにより行われるようになっていました。収納されているトーンアームを,レコードの中心までは
DCモーターでスピーディーにリードアウトし,その後は水平DDモーターにバトンタッチされ,正確に曲間をサ
ーチしながらアームをレコード外周まで駆動させるようになっていました。特に,モーターシャフトがそのままア
ームの回転軸に直結した水平モーターは,サーボに対する応答精度が高く,緻密なオート動作も確実に行え
る設計になっていました。また,トーンアームは無共振設計のストレートアームを採用し,バランスウェイトをア
ームの支点に近づけた質量集中方式として,低等価質量を実現していました。PL-88Fは,フルオートプレーヤーとして便利さを追求し,8曲・14ステップまでの自動頭出し・プログラム演
奏ができるようになっていました。PL-88F以前にも赤外線などを利用した自動頭出し機能を持つプレーヤー
は存在していましたが,PL-88Fでは,より精度を高めた設計が行われていました。
曲間をサーチし,正確にその中心に針先を降下させるセンサー機構には,「デュアルアイセンサー」を採用し
ていました。アームの先端に取り付けられた2つの光センサーがたえずレコード盤面からの光の反射率を読み
取り,曲間の中心を正確に検出する方式で,サーボ機構と連動して,正確に曲間に針先をおろすことができま
した。2つのセンサーで曲間(反射光の多くなる地点・反射光からのピーク信号)を検出することで,2つのピー
ク信号が得られることになり,この2つのピーク信号を差動回路に通して,2つの信号による波形のゼロクロス
点を利用して正確な曲間検出が行われるようになっていました。
さらに,素早いプログラム演奏を実現するため,「アドレスセンサー」が搭載されていました。アームの根本に取
り付けられた扇形のスリットと,光学式センサーを組み合わせたもので,レコードをターンテーブルにセットしてか
らスタートボタンを押すと,トーンアームはレコード盤上を横切ってリードアウトされ,その際に,デュアルアイセン
サーが曲間を検出,その位置をアドレスセンサーがスリットの番地として検知し,マイコンに記憶させるシステム
でした。プログラム演奏時には,このアドレスセンサーの働きで,指定した曲間まで素早くアームを移動させるこ
とができるようになっていました。
このような機構を利用して,便利なフルオート機能として「プログラム演奏」「インデックスキャン(イントロ連続再生)
」「スキッププレイ(現演奏中の曲から次の曲頭へ)」「リピート再生」が搭載されていました。また,同社のカセット
デッキCT-980,880,780,580と別売のシンクロコードで接続すると,PL-88Fの演奏動作とデッキの録音
動作が連動できるようになっていました。ターンテーブルの駆動部には,軸受け構造に,ローターの支点と重心をほぼ一致させ,安定した回転を実現した
パイオニア自慢のSH・ローター方式が採用されていました。モーターには,コアレス&スロットレスモーターを搭
載し,応答速度を高めたクォーツPLLサーボにより,ワウ・フラッター0.012%以下(FG直読法)という安定性の
高い滑らかな回転を実現していました。PL-88Fには,専用のMCカートリッジ41MCが付属していました。このカートリッジは,左右独立6極4マグネッ
トの磁気回路の採用により磁束密度を大きく高め,1.5mVというMMカートリッジ並の高出力を実現し,MMポ
ジションで使えるようになっていました。このカートリッジは,マグネットとコイルを左右独立としてセパレーションを
高めた左右独立構造をとるとともに,シンプルな構造となっており,MC型ながら針交換が可能になっていました。以上のように,PL-88Fは使いやすさを追求し,アナログプレーヤーの新機軸を打ち出した高性能・高機能プレー
ヤーでした。また,優れた回転系と,コンパクトながら頑丈な筐体,優れたMCカートリッジなどにより,音質的にも
優れたプレーヤーとなっていました。このPL-88Fには,オート機能を簡略化した66F,44Fなどのシリーズ機も
あり,後にシルバーボディのモデルのPL-88FS,PL-55FS,PL-44FSも登場しました。また,これ以降,各社
から,本機のような,積み重ね可能なタイプのアナログプレーヤーが相次いで登場することになりました。パイオニ
アでもプライベートなどのセットステレオにも採用され,各社のセットステレオでも採用されていきました。そのような
意味でも,アナログプレーヤーの形態を変えた画期的なモデルであったと思っています。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
プログラム機能を装備。
先進技術を凝縮した
フロントローディングプレーヤー。
◎フルオートプレーヤーの新しいカタチを
示唆するフロントローディング機。
◎聴きたい曲をプログラムできるプログラム
演奏機能付マイコン制御フルオート。
◎回転ムラ0.012%以下(WRMS/FG直読法),
SH・ローター方式&コアレスモーター。
◎MMなみの使いやすさでクリアーな再生音,
高出力MCカートリッジ。
●PL-88Fの仕様●
■フォノモーター■
モーター | コアレスQuartz PLL DCサーボ・ホールモーター |
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
軸受構造 | SH・ローター方式 |
ターンテーブル直径 | 28cm |
回転数 | 331/3・45rpm |
回転ムラ | 0.012%以下(WRMS FG直読法)
0.025%以下(WRMS/JIS) |
SN比 | 78dB以上(DIN−B) |
起動特性 | 1/3回転以内 |
回転数偏差 | 0.002%以内 |
ドリフト | 時間ドリフト:0.00008%/h 以下
温度ドリフト:0.00003%/℃以下 |
■トーンアーム■
型式 | 水平DDスタティックバランスストレートアーム |
実効長 | 208mm |
オーバーハング | 20.2mm |
■カートリッジ■
型式 | MC型(針先0.3×0.7milダイヤモンド楕円針) |
出力電圧 | 1.5mV(1kHz,50mm/sec水平) |
適正針圧 | 2g±0.3g |
周波数特性 | 10〜35,000Hz |
■その他■
付属機能 | プログラム選曲,オートリードイン,オートカット,オートリターン,
マニュアルロケーション,スキップ, インデックススキャン(ノーマルインデックス,プログラムインデックス) オートリピート(ノーマルリピート,プログラムリピート) |
供給電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 12W |
外形寸法 | 420W×98H×335Dmm |
重量 | 10.3kg |
※本ページに掲載したPL-88Fの写真・仕様表等は1982年2月のPIONEER
のカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
ていますので,ご注意ください。
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