PIONEER PLC-1700
ARM-LESS DIRECT DRIVE PLAYER ¥88,000
1973年に,パイオニアが発売したアームレス・プレーヤーシステム。アームレスの名の通り,アームが付いていな
いため,ターンテーブルシステムともいえるもので,アームを自分で選択するアナログファン向けに発売された,当
時のパイオニアのもつすぐれた回転系の技術が投入された1台でした。
心臓部のフォノモーターには,DC駆動の超低速ホールモーターが搭載されていました。このモーターは,磁極切換
(スイッチング)機構にホール素子を応用したもので,従来DCモーターで必要であったブラシ,コミュテーターを用い
ておらず,ブラシによる機械的スイッチングに比べて低振動,高S/N比,高耐久性を実現していました。ホール素子
は,固体(半導体薄膜)に電流を流し固体表面に対し垂直に磁界を加えたとき、電流方向及び磁界方向それぞれに
垂直な方向に電圧が発生するという原理(ホール効果)を利用した磁気量を電気量に変換することができる素子で,
現在でもCD−ROM、DVDドライブ用などの小型高性能モーター等に使用されている技術です。パイオニアは1969
年に他社に先駆けて真空蒸着により0.8ミクロンという極薄で感度が高く,安価で小型というホール素子を量産する
技術を確立し,これを使用したホールモーターを開発,翌1970年には,このホール素子を用いたホールモーターの
商品化を実現していました。PLC-1700のDCホールモーターは,18極で,ローターのマグネットには,N極,S極が
順に並び,ステーターは2相捲の36スロットで構成され,滑らかな回転が確保されていました。
モーターの回転数制御として,電子回路により自動制御するDCサーボ機構を採用していました。回転数検出機構に
は,周囲温度の影響を受けにくい周波数発電型が採用され,回転数を一円周で積分して検出する複合型となってお
り,誤算や偏心が相殺されるようになっていました。PLC-1700では,こうした複合型の一種であるコンデンサー型
検出器を搭載していました。コンデンサー検出器は,回転により交流信号を発信するもので,回転数の変化に応じて
発信周波数が変動する仕組みになっており,この周波数の変化を直流電圧の変化に変換して駆動電圧をコントロー
ルするようになっていました。コンデンサー基板の縞数は180あり,331/3rpmで100Hzの周波数を発振し,その結
果微少な回転変動に対しても微妙に制御され,正確な回転が得られるようになっていました。
ターンテーブルは,直径31cm・重量1.4kgのアルミ合金ダイキャスト製で,センターシャフトは,1/1000%という高
精度の仕上げが行われていました。モーターは,1.04kg・cmの起動トルクにより,定速回転に入るまで1/2回転,
起動時間は1秒以内という性能が確保されていました。大きなフライホイール効果により,そのままでは電源OFFにし
ても10数秒間回り続けるほどですが,PLC-1700には,電源をOFFにすると同時に,ターンテーブルが停止するブレ
ーキメカを一般用のプレーヤーとしてははじめて採用していました。
回転数の切換は純電子式で,±4%の範囲内で,ターンテーブルの外周に刻まれているストロボを見ながら速度の微
調整ができるようになっていました。ストロボを照らすランプは,ON/OFFスイッチにより,不必要なときは消せるように
なっていました。
ターンテーブルを支えるキャビネットは,30mmの厚さをもつ合板とメタルベースをがっちり組み合わせた二重構造
の新設計のキャビネットで,ハウリングにも強い重量型となっていました。木部はローズウッド天然木仕上げで,高
級感をもつものでした。
全体を支える大型インシュレーターは,しっかりと外部振動やハウリングを抑えるもので,また,自由に高さ調整が
でき,パネルの全部の上面にある水準器を見ながら,水平度の調整ができるようになっていました。
アームの取り付けは,サブパネル式で,6つのビスで簡単に取り外せる着脱式のサブボードにトーンアームを取り
付けるようになっていました。別売りのサブパネル(PP-307)を使えば,何種類ものアームの交換が簡単にでき
るようになっていました。
以上のように,PLC-1700は,アームレス・プレーヤーシステムとして,各部にバランスのとれた設計が行われ,完
成度の高い1台となっていました。デザイン,操作性等,使いやすいプレーヤーでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



世界の一流トーンアームが自由に取り付けられる
最高級アームレスプレーヤー。フォノモーターは
ホール素子応用のDCサーボダイレクトドライブ方式

◎ホール素子応用のダイレクトドライブフォノモーター
◎常に正確に回転を制御するDCサーボ機構
◎優れた立ち上がり
◎電源スイッチ連動のブレーキメカを採用
◎±4%の範囲で速度微調ができます
◎新開発の防振強化型キャビネット
◎水平度が調整できる大型インシュレーター
◎トーンアームの取り付けはサブパネル式です




●規格●

モーター ブラシレスDCサーボホールモーター
(18極36スロット)
駆動方式 ダイレクトドライブ方式
回転数 331/3・45rpm
回転数切換 電子式
回転数微調 ±4%(各回転数とも)
回転ムラ 0.04%以下(WRMS)
S/N 60dB以上
ターンテーブル 31cm径アルミ合金ダイキャスト 
重量1.4kg
使用半導体 トランジスター:23石
ダイオード:15石
ホール素子:2コ
IC:1コ
付属機構 回転数微調整つまみ
ストロボ・ストロボ照明
水準器
停止ブレーキ
インシュレーター
取り付け可能アーム 14型,16型(フード取付不可)
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 5.5W(定格)
外形寸法 570W×187H×434Dmm
重量 15.6kg
※ 本ページに掲載したPLC-1700の写真・仕様表等は,1973年の
 PIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に著
 作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
 をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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