ROTEL RC-5000
STEREO CONTROL AMPLIFIER ¥290,000
1976年に,ローテルが発売したコントロールアンプ。ローテルは,半導体が主流になっていた1961年に
ローランド電子として発足したメーカーで,ROTEL(ローテル)のブランド名で,高性能なオーディオ機器を
開発・生産しているブランドでした。当初,高い技術力から,海外のオーディオメーカーからの生産依頼を
受けてOEM事業をを行っていました。1976年に,社名もブランド名のROTELに統一し,その統一後,最
初に発売された製品が,コントロールアンプRC-5000とパワーアンプRB-5000でした。

RC-5000の基本的な構成は,モノラルのプリアンプが2個という完全に左右が独立した方式がとられ,回
路構成では,MCヘッドアンプ,MICヘッドアンプ,イコライザーアンプ,TONE前段フラットアンプ,オクター
ブイコライザーから構成されており,高音質と多機能が両立された,まさに「the CONTROL amp」とメー
カーがうたった通りの作りになっていました。



MCヘッドアンプは,クロスオーバー歪やスイッチング歪が原理的に存在しないA級増幅が採用され,スー
パーローノイズトランジスターを2個,シリーズに接続し,ノイズフィギュアーを向上させた差動2段シンメトリ
カルプッシュプル構成としていました。初段には,特に厳選されたスーパーローノイズトランジスターをさらに
デュアル構成とし,4回路用いて等価雑音抵抗を下げ,入力換算雑音は-157dBVを実現していました。
さらに,すぐれた周波数特性,低歪率を実現し,トランスのリーケージフラックス(磁気漏れ)によるハム誘導
スイッチ切換時のノイズ,スイッチ接点のゼーベック効果(温度差による電位差)等の問題をクリアしていまし
た。また,この高性能ヘッドアンプを生かすために,PHONO-3のポジションをMCカートリッジ専用として設
計されていました。

イコライザーアンプは,初段にスーパーローノイズFETによる差動回路で,カスコードブートストラップ方式を
2段用いて高域特性の劣化を抑えていました。カスコードブートストラップ回路はMM型カートリッジからの周
波数の変動によって信号源インピーダンスが大きく変化したときの歪率の変化を抑えるはたらきもしており,
NFによって抑えることのできない入力端子での歪も,最小に抑えていました。
2段目の差動増幅は低電流負荷としており,初段に対する負荷を軽減させ,入力はもちろんインプットコンデ
ンサーを排除したダイレクトカップリングで低域の位相特性のバラツキを抑え,超低域での低雑音化も図ら
れていました。こうした構成により,S/N比は80dB(2mV入力感度),最大許容入力500mV(0.1%),
RIAA偏差は±0.2dB以下というすぐれた特性,精度を実現していました。



TONE前段フラットアンプは,A級増幅で,終段をSEPPとした差動2段カスコードブートストラップ回路で,入
力はインプットコンデンサーを排除したダイレクトカップリングとなっていました。
片チャンネルあたり2連の高精度4連ボリュームは,この部分の入力側と出力側へ挿入され,入力側では0
~40dB,出力側で-40~-∞dBと,分離して調整するという方式で,ボリュームを完全に絞り切ったとき
の残留雑音は5.6μVという極小値に抑えられていました。また,ボリュームを絞った場合,信号源インピー
ダンスが変化し歪が悪化することもカスコードブートストラップ回路で抑えられており,出力のカップリングコン
デンサーには,自社開発の物理特性のすぐれた大型のものを採用していました。



RC-5000には,トーンコントロールに比べ,大幅に多様でキメ細かな音質調整ができる,オクターブイコラ
イザーが搭載されていました。コントロールレンジは,+12~-12dBのスライド式で,32,63125,250
500Hz,1,2,4,8,16kHzと10分割されていました。
差動1段でFET使用の5段直結回路方式で,十分なダイナミックマージンを確保していました。出力側のカッ
プリングコンデンサーにはスーパーローノイズコンデンサーを使用し,低雑音・高特性を実現していました。
共振回路は,コイルではなく,アクティブインダクタンス方式で,トランジスター,コンデンサー,抵抗による半
導体の構成となっていました。コイルを使用したものに比べ,外部からの影響をきわめて小さく抑え,超低歪
率を実現しており,電磁誘導ハム等によるS/Nの劣化も抑えていました。

フィルターは,ローフィルターとハイフィルターが装備され,ローフィルターは,4Hzと16Hzを12dB/octの特
性でカットし,ハイフィルターは,12kHzと24kHzを12dB/octの特性でシャープにカットするようになってい
ました。ロー,ハイそれぞれ2段切換タイプとなっており,超低域(サブソニック),超高域(スーパーソニック)
のピークを抑えることが可能となっていました。
フィルター回路は,FET+バイポーラトランジスター採用の2段直結方式により,歪率特性の向上,ダーリン
トン接続によるフィルター効果の向上が図られていました。遮断特性にすぐれたアクティブ型の採用により
シャープで正確なスロープ波形が得られており,ノイズ成分も効果的にカットされていました。
トーンスイッチも装備されており,OFFを中心にOCT EQ&FIL INとFIL INの切換で,オクターブイコライ
ザーとフィルター回路経由,フィルター回路のみ作動または両者の回路をジャンプするモードが選べるように
なっていました。

RC-5000には,ステレオマイクロフォンが接続出来るマイク端子も装備されており,左右独立で ミキシン
グレベルが調整でき,マイクインピーダンスも50kΩと600Ωの2段切換,さらにリバース,モノラル,ステレ
オのモードセレクターも装備されていました。
マイクアンプは,2個のICとFETを使用したもので,2段VRを採用していました。1段は,NF量の可変用とし
て使用することにより,オーバーロード特性,S/N特性を向上させていました。

入力は,PHONO3系統,TUNER,AUX2系統,TAPE入出力3系統が搭載されていました。出力は,PINと
CANNON端子の2通りが選択可能となっていました。ヘッドホン端子は2系統あり,HEADPHONE Bには
HIGHとLOWの出力インピーダンス切換が装備されていました。
PHONO入力は,PHONO1がアディショナルキャパシタンス6段階,ロードインピーダンス6段階,感度3段
階の3種類のコントロールをもち,多様なMM型カートリッジに対応できるようになっていました。PHONO3は
MC型専用となっていました。AUX2系統のうち,AUX1は,PIN端子とCANNON端子の切換ができるように
なっていました。TAPE端子は3系統あり,1系統はフロントに設けられていました。リアにある2系統は,PIN
とDINの両方式の端子を備えていました。TAPEの3系統の端子は,REC OUTツマミの切換で,すべての
相互ダビングが可能となっていました。また,REC OUTツマミにはすべての系統の入力からの録音が可能
となっており,聴いているソースと同時に,別のソースの録音が可能となっていました。

その他,機能的には,2段切換式ラウドネス,2段切換式ミューティングスイッチが装備されていました。また
モードスイッチは,2つのレバースイッチがあり,REV-NORM-MONOとLEFT-NORM-RIGHTの組
み合わせで9通りのモードが選択できるようになっていました。



RC-5000は,上述のようにツインモノラルアンプ構成がとられており,部品,基板とも完全に独立した構造
で,完全ともいえるシールド処理,左右独立の電源部ともシールド効果を考慮に入れた配置が行われ,相互
干渉を抑えていました。
電源部は,レギュレーションにすぐれた電源トランスを採用した安定化電源回路によって構成されていました。
左右完全独立の電源トランスによる±2電源とヘッドフォン回路・リレーの動作用の電源トランスの3トランス
方式となっており,L・Rの完全独立化,さらにアース線もL・R独立と,徹底された構成となっていました。

以上のように,RC-5000は,ローテルが,性能面でも機能面でも技術をしっかりとつぎ込み,盛りだくさんな
内容をもつコントロールアンプとして作り上げられていました。コントロールアンプとしては,巨大な筐体とパネ
ル面を埋め尽くすほどのツマミ,スイッチ類などにもそのことは表れていました。クリアで図太いしっかりとした
音と使いこなしがいのある多機能は,高い完成度を誇る,当時世界でも有数の1台となっていました。ローテ
ルは,その後,国外へと主力を移し,日本国内ではマイナーなブランドとなっていきましたが,音質,機能など
を考えると,今でも知る人ぞ知る実力派のブランドであることには間違いないと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



唯一・至高を意味する
Theを冠し,エレクトロニクスと
芸術の接点に位置する
第一級のコントロールアンプ

ザ・パワーアンプRB-5000とペアを組むコントロールアンプ
RC-5000はかつてないほどスケールの雄大なアンプです。
プリアンプ本来に求められる音質のためのあらゆる特性を
徹底的に追求,すべての面においてまさしく第一級の
プリアンプとしての仕上りを見せています。
さらに,音場補正のためのオクターブイコライザー,
マイクミキシングアンプを内蔵するなどリスニングルームの
コントロールセンターとして十二分な能力を発揮できるよう
豊かな機能を備えています。
各ブロックの回路構成,使用素子には一点の隙もないほど
注意を払い音質最優先の思想を入口から出口まで徹底させており,
全段DC構成,A級増幅設計,あくまで左右独立のツインモノラル
アンプ構成,まさに完ぺきといえるほどのコントロールアンプです。
ザ・コントロールアンプRC-5000はローテルの技術の蓄積と
音楽への愛情が生みだした世界の銘品と申せましょう。




●RC-5000 規格●


(イコライザーアンプ部)

出力電圧/インピーダンス(1kHz) 定格出力 DIN出力50mV:150mV
最大出力 0.5%T.H.D.:30V 
高調波歪率(5V出力,20~20,000Hz)  PHONO1,2(MAG):0.003%
PHONO3(MC):0.004%
RIAA偏差(20~20,000Hz)  PHONO1:±0.2dB
PHONO2,3:±0.2dB 
S/N比
(ハム&ノイズ)(IHF・Aネットワーク,1V出力) 
PHONO1,2(MAG):80dB
PHONO3(MC):70dB 
入力感度/インピーダンス PHONO1(MAG)±1dB:2~8mV/15,25,35,50,70,100kΩ
                      0,50,100,200,300,400PF
PHONO2(MAG)±1dB:2mV/50kΩ
PHONO3(MC)±1dB:90μV/22Ω
クロストーク(20,000Hz)  50dB 
オーバーロード(1kHz,0.5%THD)  PHONO1(MAG):500~2000mV
PHONO2(MAG):500mV
PHONO3(MC):20mV 
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1)  0.009% 



(プリアンプ部)

出力電圧/インピーダンス RCAジャック 定格:1V/300Ω
         最大(0.5%T.H.D.):7V/300Ω
CANNONジャック 定格:1V/600Ω
            最大(0.5%T.H.D.):5V/600Ω 
高調波歪率(定格出力,20~20,000Hz)   RCAジャック(1kHz時,0.003AVE):0.008%
CANNONジャック(1kHz時,0.005AVE):0.01% 
周波数特性  RCAジャック(+0dB,-1dB):DC~250,000Hz
CANNONジャック(+0dB,-1dB):10~250,000Hz 
S/N比(ハム&ノイズ,IHF・Aネットワーク)  TUNER,AUX1(RCAジャック),AUX2:95dB
TAPE MONITOR1,2,3:95dB
AUX1(CANNONジャック):83dB
残留雑音(ボリューム最小):6μV/100dB
入力感度/インピーダンス  TUNER,AUX1(RCAジャック),AUX2:150mV±1dB/50kΩ
TAPE MONITOR1,2,3:150mV±1dB/50kΩ
AUX1(CANNONジャック):150mV±1dB/600Ω 
オーバーロード(1kHz,0.5%T.H.D.)  TUNER,AUX1(RCAジャック),AUX2:9V
TAPE MONITOR1,2,3:9V
AUX1(CANNONジャック):9V 
クロストーク  1kHz:80dB AVE
10kHz:65dB AVE 
混変調歪率(70Hz:7kHz=4:1)  0.04%



(マイクアンプ部)

高調波歪率  0.05% 
周波数特性(+0dB,-3dB)  20~25,000Hz 
S/N比(ハム&ノイズ,IHF・Aネットワーク)  70dB
残留雑音(IHF Aネットワーク)  20μV/100dB 
入力感度/インピーダンス(±1dB)  4mV/600Ω,50kΩ 
オーバーロード(1kHz,0.5%T.H.D.)   1V
クロストーク  40dB(10,20kHz) 



(ヘッドフォンアンプ部)

高調波歪率  0.05% 
周波数特性(LOW INP)+0dB,-1dB  50~50,000Hz 
S/N比(ハム&ノイズ,IHF・Aネットワーク) 80dB
出力(最大0.5%T.H.D.1kHz)  0.5W(両CH・8Ω)
0.35W(両CH・600Ω) 
出力インピーダンス  4~16Ω(LOW)/600Ω(HIGH) 
クロストーク(10kHz)  40dB 
定格出力(定格入力1kHz)  30mW(8Ω)・15mW(600Ω) 



(コントロール特性)

オクターブイコライザー中心周波数 32,63,125,500,1000,2000,4000,8000
16000Hz/±12dB可変・左右独立 
ラウドネスコントロール  1(50Hz/10kHz):+13dB/+6dB
2(50Hz/10kHz):+7dB/+3dB 
ハイフィルター  12kHz:12dB/oct
24kHz:12dB/oct 
ローフィルター 16Hz:12dB/oct
4Hz:12dB/oct 
ミューティング -20dB±1dB 



(その他)

電源  AC100V,50-60Hz 
最大消費電力  60W 
寸法  482W×190H×410Dmm 
重量  15kg 
※本ページに掲載したRC-5000の写真,仕様表等は1978年6月の
 ROTELのカタログより抜粋したもので,ローテル株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。

  
 
 
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