Technics RS-B905
STEREO CASSETTE DECK ¥89,800

1987年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したカセットデッキ。テクニクスは,家電ブランドゆえか,テープデッキで人
気ブランドとは言えませんでしたが,オープンリールデッキの時代からテープデッキにすぐれた製品を発売し,カセットデッ
キにおいてもDD(ダイレクトドライブ),3ヘッドなどの技術を早くから投入するなど,意欲的なモデルを多く発売していまし
た。1987年は,DAT(デジタルオーディオテープ)デッキ元年で,カセットデッキにおいては,よりコストパフォーマンスを
高めた製品が望まれる時代となっていました。そうした中,当時のテクニクスのカセットデッキの最上級機として発売され
たのがRS-B905でした。
走行系は,2つのキャプスタンとピンチローラーで構成されたクローズド・ループ・デュアルキャプスタン方式が採用され,良
好なヘッドタッチじが確保され,変調ノイズが大幅に低減され,ハーフなどで起きる外乱もシャットアウトされていました。
さらに,キャプスタン&ピンチローラー,ヘッドブロック,カセットハーフガイドピンなどを高精度に一体化した新開発の精密
ダイカストによる一体構造メカベースが採用され,走行の精度を向上させる土台をしっかりと固めていました。また,真鍮
削り出しによる慣性質量の大きい精密大型フライホイールが搭載され,走行の安定性をより高めていました。
録再ヘッドは,R/P・MXコンビネーションヘッドが搭載されていました。硬質パーマロイ系のヘッドで,メタル対応ヘッドと
して1980年代の主力ヘッドとして開発されたものでした。録音ヘッド部は効率のよいワイドギャップ4μ,再生ヘッド部は
高域周波数特性にすぐれたナローギャップ1μに設定されていました。ヘッドの取り付けには,新しくニードルピボットによ
りヘッドの基準位置を明確化する方式・ピボット・バランスド・ヘッドブロック・システムが採用され,ヘッドの垂直方向に加
えて水平回転方向の調整も加えられ,アジマスなど厳密なテープタッチの位置決めが可能となっていました。消去ヘッド
は,ダブルギャップフェライトヘッドが搭載されていました。
ヘッドに録音電流を供給する録音イコライザアンプには,テクニクス自慢の「classAA」回路が採用されていました。録音
イコライザアンプの出力には,録音ヘッド,バイアストラップ回路などいろいろな成分の組み合わさった負荷がつながるこ
とになり,電流位相,電圧位相が過渡的に複雑に変化し,歪みが発生する原因となっていました。電圧コントロールと負
荷への電流供給を各々専用のアンプを設けて分担させた「classAA」回路の採用により,出力波形は,負荷の変動によ
る影響を全く受けない電圧制御アンプが決定することとなり,波形応答のすぐれた録音イコライザーアンプが実現されてい
ました。
また,録音補償回路や再生イコライザを抱えるアンプ部自体には,そのキャパシタンスやインダクタンスの影響により位相
周波数特性が変化し,特に高域での位相ズレが目立つようになり,音楽信号の波形の乱れ,特にダビング時の音質劣化
を招くという問題点がありました。RS-B905では,この問題に対応して,アンプ部に位相補正回路を搭載し,音楽信号の
群遅延特性を一定に保つことにより,波形の乱れを解消していました。
ノイズリダクションとして,ドルビーB,Cに加え,dbxも搭載されていました。さらに,高域の特性を大幅に改善するドルビー
HX-PROが搭載されていました。録音時に入力信号の変動を常時監視し,ハイレベルな高域信号が入ってきたときその
量に合わせて適切な有効バイアスを与えて,高域にとってオーバーバイアスにならないよう,低域にとっては理想的なバ
イアス量となるように働くもので,録音時に動作させることで再生時にはテープデッキに関係なく効果が期待できるもので
した。また,ドルビーNR,dbxと併用することで,より大きなダイナミックレンジが実現されるものでもありました。
また,マニュアルでテープの感度差を補正できる,L・R独立のRECキャリブレーション,10kHz±4dBのバイアスアジャス
ト機構,−40〜+18dBのワイドレンジ3色FLピークメーター,3桁電子テープカウンターも搭載されていました。
以上のように,RS-B905は,テクニクスらしく,主要部に高度な技術が投入され,薄型の筐体に合理的な設計がなされた
実力派のカセットデッキでした。
また,弟機として,RS-B705が発売されていました。dbx,RECキャリブレーションが省かれており,レベルメーターとテー
プカウンター以外はほぼ同一の内容をもち,その意味では非常にコストパフォーマンスが高い1台となっていました。

Technics RS-B705
STEREO CASSETTE DECK ¥69,800



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



究極のテープ走行で,
デジタルソースを忠実に録/再。
3NRシステム搭載の
3ヘッド・リファレンスモデル。

◎テクニクス独自の精密ダイカスト一体構造メカベース。
◎高精度ピボット・バランスド・ヘッドブロックシステム。
◎高域での位相ズレを解消する位相補正回路を内蔵。
◎効率のよいワイドギャップ(4μ)録音ヘッド部, 高域
 再生周波数特性に優れた(1μ)再生ヘッド部による
 高性能3ヘッドシステム。
◎dbx&ドルビーB・Cの3NRを搭載。
◎テープの感度差を補正,RECキャリブレーション。
◎ワイドレンジ3色FLピークメーター。
◎10kHz±4dBのバイアス・アジャスト機構。





●RS-B905,RS-B705の主な定格●

  RS-B905 RS-B705
ヘッド 消去:ダブルギャップフェライト×1
録音・再生:R/PコンビネーションMXヘッド×1
消去:ダブルギャップフェライト×1
録音・再生:R/PコンビネーションMXヘッド×1
ワウ・フラッタ 0.04%(W.R.M.S.),±0.08%(W.Peak,EIAJ) 0.05%(W.R.M.S.),±0.1%(W.Peak,EIAJ)
周波数特性 ノーマル(ED):20Hz〜20kHz,30Hz〜18kHz±3dB(EIAJ)
CrO(EX):20Hz〜21kHz,30Hz〜19kHz±3dB(EIAJ)
メタル(EM):20Hz〜22kHz,30Hz〜20kHz±3dB(EIAJ)
ノーマル(ED):20Hz〜19kHz,30Hz〜17kHz±3dB(EIAJ)
CrO(EX):20Hz〜20kHz,30Hz〜18kHz±3dB(EIAJ)
メタル(EM):20Hz〜21kHz,30Hz〜19kHz±3dB(EIAJ)
SN比 NR  off:60dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率),
      56dB(クロムテープ,EIAJ)
Dolby NR B:66dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率)
Dolby NR C:72dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率)
dbx :92dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率)
NR  off:60dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率),
      56dB(クロムテープ,EIAJ)
Dolby NR B:66dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率)
Dolby NR C:72dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3%3次歪率)
入力端子 ライン 60mV(入力IMP47kΩ) ライン 60mV(入力IMP47kΩ)
出力端子 ライン 400mV(出力IMP2.2kΩ)
ヘッドホン 125mV/8Ω(適合IMP8〜600Ω)
ライン 400mV(出力IMP2.2kΩ)
ヘッドホン 80mV/8Ω(適合IMP8〜600Ω)
電源 AC100V,50/60Hz AC100V,50/60Hz
消費電力 25W 18W
外形寸法 430W×109.5H×285Dmm 430W×109.5H×285Dmm
重量 5kg 4.4kg
※本ページに掲載したRS-B905,RS-B705の写真,仕様表等は
 1988年5月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニッ
 ク株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無
 断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
 ださい。

   
 
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