RT-2022/2044の写真
PIONEER  RT-2022/RT-2044
STEREO TAPE DECK ¥249,000(RT-2022)
                   ¥288,000(RT-2044)


1976年にパイオニアが発売したオープンリールデッキ。もともとパイオニアは,どちらかという
とスピーカーやアンプ等のイメージが強いブランドですが,アナログプレーヤーやテープデッキな
ど,回転系メカニズムを持つコンポーネントにも高い技術を持ち,すぐれた製品を出していました。
RT-2022/RT-2044は,テープトランスポート部とアンプ部がセパレート化された,オープンリー
ルデッキならではの構成を持った,本格的テープファン向けの1台でした。

システム構成図

RT-2022/RT-2044の最大の特徴は,テープトランスポート部,ヘッドユニット,アンプ部が完全
セパレート構成になっており,2TR2ch(38/19cm/sec)から4TR4ch(38/19cm/sec)までの
テープデッキシステムをコンポーネントの組み合わせ次第で作り上げることができるというものでし
た。また,録音再生のイコライザー,バイアス発振回路,テスト用オシレーターがトランスポート部に
内蔵されており,テープトランスポート部だけでも録音再生が可能で,他のアクセサリー機器を接続
しての使用もしやすいようになっているなど,自由度の高いシステムとなっていました。

JT-2022TJT-2044T
ヘッドユニットJT-2022T

ヘッドユニットは,2TR/2chのJT-2022T(¥25,000)と4TR/4chのJT-2044T(¥25,000)
があり,トランスポート部はJT-2022Tを搭載したRTU-11/2T(¥210,000)とJT-2044Tを搭
載したRTU-11/QT(¥210,000)が用意されるという形になっていました。そして,ビス2本で着脱
できる構造となっており,ヘッドユニットを別売で購入することで,2TRヘッドと4TRヘッドの相互の交
換が可能となっていました。
ヘッド構成は,消去・録音・再生の3ヘッド方式で,録音ヘッド,再生ヘッドには,ヘッドタッチが良く,イ
ンライン特性にすぐれたコンターレスハイパボリック型のパーマロイヘッドが採用されていました。消去
ヘッドにはフェライトヘッドが採用されていました。
消去ヘッドと録音ヘッドの間には,テープの縦振動による変調雑音を抑えるために,慣性モーメントを
利用したスクレープフィルターが設けられ,SN比の良い歪みの少ない高域特性を実現していました。

トランスポート部(RTU-11/2T・RTU-11/QT)の走行系はシングルキャプスタン方式で,3モーター
構成となっていました。キャプスタン駆動用には,トルクに余裕のある4極-8極2速大型ヒステリシスシ
ンクロナスモーターが搭載されていました。直径100mmの大型フライホイール,精密研磨仕上げのス
トレートキャプスタン,特殊合金軸受けメタルなどによって精度の高い回転を確保していました。リール
駆動用には,6極インナーローター特殊インダクションモーターが2基搭載されていました。これは,エ
ディカレント型の理想的なトルクカーブとインダクション型のすぐれた起動特性を合わせ持ったもので,
2つのリール間のテープ増減によって生じるトルクの変化を最少にとどめ,安定したテープ走行(ワウ
フラッター0.04%WRMS,38cm/s)を実現していました。
シャーシは平面精度の高い5mm厚のアルミ材を使用したもので,ダイキャストフレームとの組み合わ
せにより,デリケートで重量のあるメカニズム部をブロックごとしっかり支え,大型10号リールの使用
や長期の使用,生録などでの移動に対しても充分な耐久性をもつものでした。
テープ走行の操作系は,早送り,巻き戻しなど,どのモードからもワンタッチで次のモードに移れるダイ
レクトチェンジコントロール機構が搭載されており,操作ボタンも軽く操作できるフェザータッチ式となっ
ていました。早送り,巻き戻しからPLAY動作に移るときには,完全にメカが停止した後にPLAY動作
に入るタイミング回路の採用によってテープに無理な力がかからないようになっていました。また,
別売のリモートコントロールユニットJT-211(ワイヤード,¥12,000)の接続で,3m以内でのテー
プ動作の操作が可能でした。

トランスポート部には,上記したように録音再生のイコライザー,バイアス発振回路,テスト用オシレー
ターが4ch分,及び再生アンプが内蔵されており,トランスポート部だけでも録音・再生が可能となって
いました。
バイアスは,FIX(固定)とVARIABLE(可変)・LOW/HIGHの3ポジションが搭載され,FIXはSCOT
-CH206の最適バイアス値に設定されていました。VRIABLEでは,LOWにするとFIXに対して−40
%〜−8%,HIGHでは−15%〜+38%の範囲で微調整できるようになっていました。イコライザー
は,NAB/IECごとにそれぞれSTD・LHの2ポジションとなっていました。
テスト用オシレーターは1kHzと10kHzが内蔵され,バイアスや録音ヘッドのアジマスの調整に活用で
きるようになっているだけでなく,フロントパネルから取り出せる(6φジャック)ようになっており,外部
機器の調整にも利用できるようになっていました。
トランスポート部には,低雑音シリコントランジスターを使用した3段直結回路方式の再生回路が4ch分
内蔵されていました。この再生回路は0VUから20dB以上という広いダイナミックレンジが確保されてい
ました。この再生回路により,テープトランスポート部を直接プリメインアンプ等に接続して再生をするこ
とも可能でした。

RT-2022
RT−2044

アンプユニットTAU-11(¥39,000)はLINE入力2ch,MIC入力2chを備え,組み合わせることでよ
り多彩な録音が可能となりました。4トラックヘッドとTAU-11を2組使用することで4TR4chレコーダー
RT-2044として使用することが可能となっていました。マイク用アンプは高S/Nで55dBの広いダイナ
ミックレンジを確保したもので,低インピーダンスのプロ用マイクロホンを使ってのピークファクターの大
きい録音も可能としていました。また,マイクアッテネーター(0dB,−20dB,L・R独立切換)も装備され
ていました。
入出力端子は,リアパネルのピンジャック以外にフロントパネルに6φジャックで入出力ともL・Rが装
備され,エコー録音やSOS(サウンド・オン・サウンド)が付属の6φパッチングコードを使って容易に
行えるようになっていました。TAU-11に備えられた録音ヘッドの一部を再生ヘッドとして使うシンクロ
モニター機構を使うとSWS(サウンド・ウィズ・サウンド,1トラックに1つのソースを録音する多重録音)
も可能となっていました。
TAU-11には,−40dB〜+6dBのレンジを持つ対数アンプ使用のワイドレンジレベルメーターが装備
され,レベルの監視やバイアス値等の調整に用いられるようになっていました。

可搬用カバーケーブル収納用ポケット

当時,これほど大きな(RT-2022:27.5kg,RT-2044:32.7kg)オープンリールデッキを用いて
の生録・ロクハン(これも死語?)を行うオーディオファンもいました。そのため,可搬型への対応として
把手やフロントカバーも付属し,アンプユニットには接続ケーブルを収納するポケットも設けられていま
した。

以上のように,RT-2022/RT-2044は,高い精度を持つパイオニアの最上級機で。オープンリール
デッキらしい性能の余裕と安定性,高い機能性を実現した実力派の1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



テープ特性を効果的に生かす,
BIAS連続可変NAC/IEC各2段
イコライザー切換えテープセレクター
とテストオシレーター装備。
最新設計のテープデッキシステムです。


テープデッキを構成する,
ヘッド,テープトランスポート,アンプなどの
ユニットを完全に分離,
将来への発展性を可能にした設計です。
しかも,テープトランスポートユニットだけの
単独使用を考慮して,
ダイナミックレンジの広い録再アンプを
4ch分内蔵した構成ですから,
ミキシングアンプやピークメーターユニットなどと
直接組み合わせて使用することができます。

◎38cm/secのハイスピード走行で,ダイナミック
 レンジの広い録音・再生が楽しめます。
◎10号型リール使用可能。堅牢で信頼性あふれ
 る耐久メカニズム。
◎2TR・2ch−4TR・4chの発展が簡単にできる
 高性能3ヘッド・プラグイン式ヘッドユニット。
◎ヘッドハウジング内で発生するテープの縦振動
 による変調雑音を除去するスクレープフィルター。
◎バイアス連続可変型・イコライザー2段切換
  (NAB/IEC各2段)テープセレクター。
 テープの持ち味を生かせます。
◎適正な録音状態にセットできる1kHzと10kHz
 のテストオシレーターを内蔵。
◎ダイナミックレンジの広い再生アンプを内蔵。
◎LINEとMICの入力回路は,
 それぞれ独立したダイナミックレンジの広い
 録音アンプを内蔵。
◎幅広い録音テクニックが駆使できるシンク
 ロモニター機構。
◎テープ保護システムの組み込まれたダイレ
 クトチェンジのフェザータッチ操作ボタン。
 (PLAY,REC表示ランプつき)




●RT-2022,RT-2044の仕様●

ユニット構成
[RT-2022]テープトランスポート:RTU-11/2T(ヘッドユニット:JT-2022T付)
        アンプユニット:TAU-11
[RT-2044]テープトランスポート:RTU-11/QT(ヘッドユニット:JT-2044T付)
        アンプユニット:TAU-11×2台
駆動方式
3モーター(キャプスタンベルトドライブ,100mmφフライホイル使用)
モーター
リール用:6極インナーローターインダクション型×2
キャプスタン用:4極-8極2速度大型シンクロナス型×1
ヘッド構成
[RT-2022]2トラック2チャンネル3ヘッド方式/消去(フェライト)×1
        録音(パーマロイ)×1,再生(パーマロイ)×1
[RT-2044]4トラック4チャンネル3ヘッド方式/消去(フェライト)×1
        録音(パーマロイ)×1,再生(パーマロイ)×1
テープ速度
38cm/sec,19cm/sec(±0.8%以内)
早巻き時間
110秒以内・10号リール(740m),90秒以内・7号リール(370m)
回転ムラ
38cm/sec:0.04%WRMS(0.06%RMS)
19cm/sec:0.08%WRMS(0.09%RMS)
総合S/N
[RT-2022]57dB以上,38cm/sec,IEC時はさらに3dB(5kHz以上)向上
[RT-2044]55dB以上,38cm/sec,IEC時はさらに3dB(5kHz以上)向上
総合歪率
38cm/sec:0.8%以下,19cm/sec:1.0%以下
周波数特性
38cm/sec:30〜28,000Hz±3dB,19cm/sec:40〜20,000Hz±3dB
ステレオセパレーション
[RT-2022]53dB以上
[RT-2044]50dB以上
バイアス
125kHz FIX:基準テープ用(固定)
VARIABLE/LOW(−40%〜−8%)HIGH(−15%〜+38%)
イコライザー
NABカーブ(38cm/sec,19cm/sec)及び,IECカーブ(38cm/sec,
T2=35μs)高性能テープ補償用セレクタースイッチ付)
入力
(感度/最大許容入力/インピーダンス)
MIC:0.11〜100mV/27kΩ(−20dBATTスイッチつき)6φジャック,
    アンバランス式,2チャンネル(※RT-2044は2チャンネル×2)
LINE:34mV〜25V/100kΩピンジャック(リアパネル)6φジャック
    (フロントパネル)2チャンネル(※RT-2044は2チャンネル×2)
RTU-11/2Tのみでは,2チャンネル100mV/13kΩ固定
RTU-11/QTのみでは,4チャンネル100mV/13kΩ固定
出力
(基準レベル〜最大レベル/負荷インピーダンス)
LINE:450〜930mV/50kΩピンジャック(リアパネル)6φジャック
    (フロントパネル)2チャンネル(※RT-2044は2チャンネル×2)
PHONE:64mV(0.5mW)〜133mV(2.2mW)・8Ω
出力レベルコントロール(基準レベル位置450mVクリック)付
RTU-11/2Tのみでは,2チャンネル100mV/40kΩ固定
RTU-11/QTのみでは,4チャンネル100mV/40kΩ固定
テストオシレーター
OFF/1kHz(バイアス調整用etc)/10kHz(ヘッドアジマス調整用etc)
切換え,外部出力端子つき(316mV/50kΩ固定)
主な付属機構
RTU-11/2T,RTU-11/QT
1.テープセレクター,2.テストオシレーター,3.キュー機構(ロック可能)
4.リモートコントロール機構※リモートコントロール別売JT-211
5.ポーズレバー(PLAYタイミング解除兼用),6.多系統入・出力端子
TAU-11
1.ワイドレンジメーター(−40〜+6dB),2.レベルメモリーマーカー
(入力・出力共),3.シンクロ録音モニター付モードスイッチ
4.コード収納用ポケット,5.キャリング用把手及びフロントカバー
その他
テープトランスポートユニットアンプユニット結合金具等
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
135W
外形寸法
RTU-11/2T,RTU-11/QT:460W×411H×207Dmm
TAU-11             :460W×141H×207Dmm
重量
RT-2022:27.5kg
RT-2044:32.7kg

※本ページに掲載したRT-2022,RT-2044の写真,仕様表等
 は1976年6月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイ
 オニア株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
 を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
 意ください。

   
 
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