OPTONICA RT-3150
ELECTRONIC TAPE PROCESSOR ¥99,800
1977年に,オプトニカ(シャープ)が発売したカセットデッキ。家電総合メーカーであったシャープは,
1974年頃より,オーディオブランドとして「OPTONICA」を立ち上げ,アンプ,スピーカー,プレー
ヤーをはじめ,各コンポーネントにしっかりと技術や物量を投入した製品を作っていました。カセット
デッキの分野でも,個性的な製品をいくつか登場させました。そうした中で,同社得意のマイコン技
術を生かした1台がRT-3150でした。
RT-3150は,基本的にはオーソドックスな2ヘッドデッキでした。駆動系は1モーター・シングルキャ
プスタンで,テープの操作系も当時一般的であったレバー式が採用されていました。そして,走行系
の大きな特徴として,カセットデッキとして初めてモーターの回転制御に,PLLサーボによるクォーツ
ロックを採用していたことがありました。PLLサーボ(位相制御)の基準周波数に,変動がきわめて
少ない水晶発振器を採用し,負荷,温度,電圧などの対外変動にも強く,きわめて正確な回転を確
保していました。さらに,これらの制御回路はIC化され,安定性,信頼性をより高めていました。こう
した構成と,1モーターのシンプルなメカニズムにより,0.058%(WRMS)という低ワウフラッター
を実現し,安定した状態で維持していました。再生,録音,早送り,巻き戻し時にテープエンドに来た
り,電源が切れた際に,操作状態を解除するフルオートストップ機構には,ホール素子とICを使った
無接点方式が採用され,メカニズムに負担がかからない機構となっていました。
録再ヘッドは,新開発の耐摩耗性パーマロイヘッドが搭載され,テープセレクターは,バイアス・イコ
ライザー独立型で,Normal,CrO2,FeCrに対応した3ポジションで。ノイズリダクションとしてはドル
ビー(Bタイプ)NRが搭載されていました。
入力は,LINE以外にMIC(背面パネルのDINと切替式)入力が装備され,レベルボリュームも独立
して搭載され,LINEとMIC(または背面のDIN入力)とのミキシングが可能となっていました。
レベルメーターは,-20dB~+5dBの針式のVUメーターが搭載され,瞬間的な大入力に対応する
LEDピークレベルインジケーターも搭載されていました。
RT-3150は,最大の特徴として,マイコン(マイクロコンピュータ)を組み合わせることで,様々な
制御を行い,多機能化を図っていました。当時,マイコンとも呼ばれていたパソコン黎明期に,国内
ではパソコンの主要なメーカーの1つであったシャープがカセットデッキにマイコン制御を取り入れ
ようとしていたのは,ブランドイメージ上の戦略としてもあったのではないかと思います。
RT-3150に搭載されたマイコンは,シャープが開発したオーディオ用のマイクロコンピュータで,
5mm×6mm角の基板に電子部品20,000個分を集積した精密なもので,低消費電力のC-MOS
LSIにより構成されていました。
機能の操作部と表示部がフロントパネルの中央に設けられ,表示部には。当時のシャープが得
意としていたLCD(液晶)表示が採用されていました。表示部の上半分は,カウンター及びクロッ
クの表示となっていました。クロックは,水晶発振器を利用したクォーツロックで,月差±15秒以
内の精度を実現していました。このクロックとマイコンを組み合わせて多彩な機能を実現し,シャ
ープ自身「ELECTRONIC TAPE PROCESSOR」と称していました。
(1)タイマー機能として,指定の時間に自動録音・再生スタートするタイマースタート,指定の時間
にテープ走行停止をするタイマーストップ,必要な時間だけテープのスタートとストップが可能な2
点間タイマー,12時間または24時間での時計表示が搭載されていました。
(2)頭出し機能として,19曲まで曲の頭を一発で見つけるAPLD(自動頭出し演奏装置),テープ
中の任意の箇所を一発で見つけるカウンターメモリー,ワンタッチで現在のテープの位置を記憶
するカウンターダイレクトイン,カウンターの0点と任意の数値間を自動演奏する2点間メモリー
が搭載されていました。
テープカウンターは,正確にテープの走行をカウントする電子カウンターとテープ走行を分秒単位
で60分までカウントし,テープの使用時間と残量がわかるセコンドカウンターに切り換えられるよ
うになっていました。
これらの機能の主な操作は,上半分の機能選択キーと下半分の10キーの操作の組み合わせで
行うようになっていました。例えば,カウンター数機56まで早送りして頭出ししたいときには,
counter memory→5→6→S→早送りキーといった順で操作するようになっており,後のCDプ
レーヤーにも通じるような操作感覚で,当時としては新鮮,しかし取っつきにくい面もあったかと
思います。
以上のように,RT-3150は,基本的には,ごくオーソドックスな2ヘッドデッキでしたが,マイコン
制御を積極的に組み合わせることで,機能面で先進的な内容をもつ個性的な1台となっていまし
た。オプトニカ(シャープ)らしい個性を感じるカセットデッキであったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
テープファンの夢がここに,
エレクトロニックテーププロセッサー。
蓄積した電子技術を注ぎ込み
カセットプレイの極致を求めた未来志向機。
マイクロコンピューターによる独創機能。
さらにクォーツロックモーターで
ワウ・フラッター0.058%
◎豊富な機能を創造
マイクロコンピューターを搭載
◎指定した機能を明瞭に表示する
大型液晶(LCD)表示
◎制度を高めるクォーツを
時計にも採用
●正確なタイマー録再高精度なクォーツ
クロック内蔵
●カセットデッキに初めてPLLサーボによ
るクォーツロックモーター搭載
充実した機能に応える精緻なメカ,
ハイクオリティな音質
◎曲間のホワイトスペースも思いのまま
テープ編集に便利なエディター機能
◎各種テープの特性を充分に発揮させる
バイアス,イコライザー独立3段切換方式
◎歪の少ない高忠実録音に,LED表示の
ピークレベルインジケーター
◎テープヒスノイズの低減
ピアニッシモが美しい
ドルビーノイズリダクション回路
◎ミキシングも自在
マイク/ライン独立ボリゥム採用
◎ホールIC採用フルオートストップ機構
◎音質・操作性の向上をはかる種々の特長
●新開発の耐摩耗性パーマロイヘッド
●出力レベルが調整できるアウトプットボリゥム
●軽快なフィーリングのエアダンプイジェクト
●新設計の一体型VUメーター
●使い勝手を配慮したフロントコントロール
●RT-3150定格●
トラック方式 | 4トラック2チャンネルステレオ |
録音方式 | 交流バイアス(84kHz) |
消去方式 | 交流消去(84kHz) |
ヘッド | 耐摩耗性パーマロイ録音・再生ヘッド,消去ヘッド |
モーター | クォーツロックPLLサーボモーター |
テープ速度 | 4.8cm/sec |
早送り時間 | 120秒(C-60) |
巻戻し時間 | 120秒(C-60) |
ワウ・フラッター | 0.058%(WRMS・JIS) |
周波数特性 | 30~14,000Hz(ノーマル) 30~16,000Hz(クローム) 30~17,000Hz(Fe-Cr) |
SN比 | 53dB(ドルビーOFF) 63dB(ドルビーON)5kHz以上 |
歪率 | 1.5% |
入力端子 | マイク:最小入力レベル0.2mV(-74dB)/300Ω~2kΩ ライン:最小入力レベル50mV(-26dB)/54kΩ |
出力端子 | ライン:出力レベル(0VU時)775mV/50kΩ ヘッドホン:出力レベル(0VU時)1mWV/8Ω |
録音・再生DIN端子 | 規定入力:30mV/80kΩ 規定出力(0VU時):775mV/50kΩ |
使用半導体 | IC:7個,トランジスタ:53石,ダイオード:30個 LED:2個,LSI:1個(マイクロコンピュータ用) |
電源電圧 | AC100V 50/60Hz コントロールユニット・バックアップ電源3V |
消費電力 | 14W |
外形寸法 | 420W×357D×152Hmm |
重量 | 7.5kg(電池含む) |
付属品 | パラレルピンコード×2,ヘッドクリーニングバー 単3乾電池×2(バックアンプ電源用)電池持続時間 (連続時間):約5000時間(EIAJ)但しシャープSUM-3E使用時 |
タイマー部 | |
型式 | 水晶発振式デジタル時計,表示は液晶 |
時刻表示 | 12時間(AM/PM)/24時間切換式 |
時間精度 | 月差±15秒以内 |
タイマー型式 | 24時間型,タイマースタート及びタイマーストップは 1分間隔でセット可能 タイマーストップをセットしない場合は24時間後にOFF |
タイマー精度 | +0.1 -0秒 |
ACアウトレット定格消費電力 | 最大300W |
※本ページに掲載したRT-31509の写真,仕様表等は1977年
11月のOPTONICAのカタログより抜粋したもので,シャープ株
式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意く
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