SD-60の写真
marantz SD-60
STEREO CASSETTE DECK ¥65,000

1989年にマランツが発売したカセットデッキ。マランツらしいゴールドパネルの高級感ある外観デザインに
音質を追求した高精度なメカを搭載した高性能デッキで,¥65,000という価格が信じられないような内容
を持つコストパフォーマンスの高い1台でした。

走行系は,精度を追求するために精密ダイキャスト一体構造ヘッドベースにまとめられていました。キャプス
タン,ピンチローラー,ヘッドブロック,カセットガイドピンなど走行性能を左右するパーツが高精度に一体化さ
れた構造となっていました。
2つのピンチローラーとキャプスタンを持つクローズド・ループ・デュアル・キャプスタン方式が採用され,安定
したヘッドタッチを実現していました。また,モーターの負荷変動を軽減し回転ムラを抑えるツインベルトドライ
ブ方式がとられ,安定したテープテンションとヘッドタッチを獲得していました。

精密ダイキャスト一体構造ヘッドベースカセットハーフ・スタビライザー

カセットハーフの不要な振動を点ではなく面で抑える構造のカセットハーフ・スタビライザーを採用し,カセット
ハーフの微振動や変調ノイズを効果的に解消していました。さらに,制振効果が高い亜鉛ダイカストパネル
をサイドパネルに採用し,筐体自体の不要な振動を抑えていました。フロントパネルも他の同社の高級アン
プ,高級CDなどとのマッチングを図った豪華なもので,その外観は6万円クラスにはとても見えないもので
した。また,ブラックパネルのモデルもありました。

ブラックパネルのSD-60

SD-60はアンプに強いマランツらしく,録音アンプ,再生アンプに優れた技術を投入していました。録音ア
ンプには,録音ヘッドの誘導性インピーダンスの影響を受けずに,必要とする録音電流が供給できる定電
流ドライブ方式を実現していました。再生イコライザーアンプには,高級アンプで培われたフォノアンプ回路
のノウハウをベースに,ローノイズFETによって構成された差動部を搭載し,SN比の改善を図っていまし
た。

SD-60は,録音・再生ヘッドにそれぞれ最適のギャップ設定を行ったコンビネーション3ヘッド方式で,録
音・再生コンビネーションヘッドのコア材には高硬度パーマロイを採用していました。また,ヘッドのコイル
巻線には,信号ロスを抑えたPCOCC(単結晶状高純度無酸素銅材)を使用していました。

ノイズリダクションとして,DOLBY B,Cを搭載し,録音時にバイアスをコントロールして高域の周波数特
性を改善するDOLBY HX-PROも搭載していました。機能的にもかなり多機能で,前後の曲の頭出しが
できるQMS,各曲のイントロ(約10秒)を次々に再生していくAMS,再生中の曲を繰り返すリピート,テー
プ再生中に,無録音部分をサーチして自動的に早送りするブランク・スキップなどを搭載していました。
テープセレクターはオートで,バイアス,録音感度,録音の左右バランスをマニュアル調整できるようになっ
ていました。

多機能なインジケーター部は,フロントパネルの上の方に見やすく集中配置されていました。カウンターは
通常の4桁,分・秒表示の切り替えができるリニアカウンターが搭載されていました。レベルメーターとして
見やすいFLディスプレイが搭載されているだけでなく,録音時0db〜12dBまでの範囲でピークレベルを
1dBステップで5秒間デジタル表示するデジタルピークレベル表示が搭載されていました。また,このピー
クレベルは,MAXピークレベルメモリー機能で録音レベルの最大値をメモリーでき,メモリーコールキーで
呼び出せるようになっていました。そのほか,テープの誤消去防止用のツメが折られているとき点灯する
アンチ・レックインジケーターや窓の小さいカセットホルダーのデザインのため,カセットがセットされている
とき点灯するカセット・イン・インジケーターなども搭載されていました。

録音入力は,LINE以外にCD,AUXとそれぞれダイレクトに入力できる専用の入力端子がある3系統を
備え,出力端子も,バリアブル/フィックスの2系統を備えていました。また,入出力端子はすべて金メッキ
が施されていました。
赤外線リモコンも装備され,リモコンで,録音・再生,曲の頭出し,アウトプットレベルコントロールなど主な
機能が遠隔操作できるようになっていました。

以上のように,SD-60は,6万円台とはとうてい思えない内容を持つ高性能・高機能なカセットデッキでし
た。カセットデッキの分野では,倍速デッキ,再生アジマスコントロールMAACなど個性的でなかなかいい
ものを作っていながら,あまりメジャーではなかったマランツの戦略的モデルだったのかもしれません。実
際あの筐体のダイカストの型代だけでも元が取れそうには思えませんでしたから・・。
 
 

いかに,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


新しい時代の音楽を語るSD-60。
忠実録音・再生を重視した
3ヘッドデッキです。
◎安定性にすぐれたテープ走行を実現する,
 精密ダイキャスト一体構造ヘッド・ベース。
◎定電流ドライブ方式を実現した録音アンプと,
 ローノイズFET採用の再生イコライザーアンプ。
◎高域の周波数特性を改善,クリアな
 音質を実現するドルビーHX PRO。
◎クイック・ミュージック・スキャンやブランク・
 スキップ,リピートなど,多彩な機能を搭載。
●SD-60の主な仕様●


トラック型式 4トラック2チャンネルステレオ
録音方式 交流バイアス方式
ヘッド 録音・再生コンビネーションヘッド×1
消去ヘッド×1
モーター キャプスタンモーター×1
リールモーター×1
ワウ・フラッター 0.03%W・RMS,±0.06%W・peak
周波数特性 メタル   20Hz〜21kHz(±3dB)
クローム 20Hz〜21kHz(±3dB)
ノーマル 20Hz〜19kHz(±3dB)
SN比 57dB(EIAJ/ピーク録音レベル聴感補正)
ドルビーB NR ON時:5kHz以上 10dB改善
ドルビーC NR ON時:1kHz〜20kHz 20dB改善
入力感度 70mV(47kΩ)
出力レベル ライン:500mV(2kΩ)
ヘッドホン:85mV(85Ω)
電源 100V AC 50/60Hz 
消費電力 22W(電気用品取締法)
最大外形寸法 454W×151H×359Dmm
重量 10.4kg
※本ページに掲載したSD-60の写真,仕様表等は1989年6月のmarantzのカタログ
 より抜粋したもので,日本マランツ株式会社に著作権があります。したがって,これらの
 写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
    

 
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