Technics SL-P10
COMPACT DISC PLAYER SYSTEM ¥198,000
1982年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したCDプレーヤー。この年は,「CD元年」ともいわれ,
各社からCDプレーヤー第1号機が発売され,デジタルオーディオのディスク規格・CDがスタートした年
でした。そうした中,テクニクスのCDプレーヤー1号機として発売されたのがSL-P10でした。

CDプレーヤーは,オーディオメーカーにとって,従来のオーディオ系の技術だけでなく,デジタル関係の
技術,半導体技術など多くの技術を総合したものだけに,当時,自社だけで製品化するのは難しいもの
がありました。実際,主要部分を自社で開発できたメーカーは,CDのオリジネーターであるソニー,フィ
リップスなど,数少なかったといわれています。そうした中,総合電機メーカーである松下電器(当時)を
母体にもつブランドであったテクニクスだけに,SL-P10の開発に当たって,メカニズム系からデジタル
系の半導体に至るまでほぼ自社開発していました。




レーザーピックアップは高精度3ビーム方式で,半導体レーザー,対物レンズアクチュエーター,プリズム,
フォトディテクター等が精密なアルミダイカスト一体成型ボディーに収納され,堅牢な構造により信頼度が
高められていました。ピックアップを制御にしたがって動かすアクチューエーターは,ツインパラレルサス
ペンションなど独自の構造により,スムーズで正確なフォーカス&トラッキングサーボを実現していました。
さらに,専用に開発した超小型のD.D.モーターによってCDを駆動し,精度の高い回転制御が確保されて
いました。そして,これら光学機械ブロックをアルミダイカストシャーシに高精度に一体化し,オプティカル
デッキ・ユニットとして構成し,総合的な高精度・高性能を実現していました。



SL-P10の開発に当たって,専用のLSI14種,IC8種を開発し,専用デジタル回路のほぼ全面的なIC化
LSI化が実現されていました。特に,主要回路のデジタル信号処理回路では,100%のトーンアンプの集
積化が実現されていました。また,誤り訂正には,独自の「テクニクス・スーパー・デコーディング・アルゴリ
ズム方式」を採用し,補間確率1/9000万時間という性能が実現されていました。
D/Aコンバーターには,専用の1チップ16ビットD/AコンバーターAN6806をバイポーラICとして開発し
採用していました。ニクロム系の高精度皮膜抵抗を使用し,さらにレーザーを用いて超高精度トリミングを
行うという製法により,非直線歪±0.002%という高性能を実現していました。

各社の第1号機に多かった縦型ローディングタイプで,ドア側のディスクホルダーにCDを入れると自動的
にドアが閉まり,PLAY可能状態になるようになっていました。本体に10キーが装備されており,選曲機
能は,直接10キーでの選曲ができるほか,10キーを使って任意の曲番だけでなく,曲中の分・秒を1秒
単位で指定して選曲できるようになっていました。また,ディスク上の任意の位置(演奏開始位置・終了位
置)を曲番,分・秒で63ステップまでプログラム指定できるようになっており,ランダムアクセスプログラム
再生ができるようになっていました。さらに,リピートキーで,ディスク全体,または複雑なプログラム内容
をリピート再生できるようになっていました。
FLディスプレイは,track,time表示の上に,幅14cm,290セグメントのバーグラフ状のディスプレイが
装備されていました。このバーグラフ状のディスプレイは,3段に分かれており,上から1列目は演奏経過
時間(ピックアップ位置)と最終曲の終了位置を,2列目は全収録曲の開始位置,3列目はプログラム曲
を表示するようになっているという凝ったもので,当時のテクニクスのCDプレーヤーのデザイン上の特徴
となっていました。

以上のように,SL-P10は,テクニクスのCDプレーヤー第1号機として,パーツから主要部分を自社開発
した力作でした。機能的にも操作性もよく考えられたもので,テクニクスの優れた技術力を感じさせるもの
でした。音質も,癖の少ないすっきりとしたもので,テクニクスらしい音はひとつの魅力を持っていたと思い
ます。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音質と操作性の両面において完成度を徹底追求。
テクニクスCDプレーヤの最高峰。

◎テクニクスの総合技術力を駆使,
 音質・操作性に完成度を極めたSL-P10
◎オプトエレクトロニクス,メカトロニクス
 技術の粋を結集したオプティカルデッキ
◎徹底したLSI,IC化により,
 補間確率1/9000万時間の高性能を実現
◎非直線性歪±0.002%,極めて高忠実度の
 変換を実現した高性能D/Aコンバータ
◎最大63ステップのプログラム演奏など,
 極めて多彩な使いこなしが可能
●曲頭ランダムアクセスプログラム
●任意の開始位置指定ランダムアクセスプログラム
●終了指定ランダムアクセスプログラム
●オートリピートプレイ

◎高さ5cm,幅14cm,290セグメント。
 多彩な情報を表示するFLディスプレイ。
●曲頭表示/収録最終位置表示/ピックアップ位置表示
●プログラム予約表示
●演奏曲番/演奏時間デジタル表示
●プログラム内容デジタル表示




●SPECIFICATIONS●



●オーディオ●

オーディオチャンネル数 2チャンネルステレオ
周波数特性 4Hz~20,000Hz(±0.5dB)
ダイナミックレンジ 96dB以上
SN比(N:デジタルゼロ) 96dB以上
高調波歪率 0.003%以下(1kHz,0dB)
チャンネルセパレーション 90dB以上(1kHz)
ワウ・フラッタ 測定限界以下



●信号フォーマット●

標本化周波数 44.1kHz
誤り訂正方式 テクニクス・スーパー・デコーディング・アルゴリズム
復号化 16ビット直線



●ピックアップ●

方式 アスティグマ3ビーム
対物レンズ・サスペンション ツインパラレルサスペンション 
光源 半導体レーザー
波長 800nm



●機能●

サーチモード マニュアルサーチ,トラックスキップ,イントロスキップ
プログラム機能 最大63組のプログラム,頭出し選曲
演奏開始位置指定(トラック,時間(分,秒単位))
演奏終了位置指定(トラック,時間(分,秒単位))
ディスプレイ機能 バーグラフ表示:ピックアップ位置表示,曲数表示
          プログラム曲表示,演奏時間表示
デジタル表示:トラック表示,演奏時間表示,総曲数表示
         総収録時間表示
操作キー 基本キー6/プログラムキー14/リピートキー1
ディスクローディング モーター駆動正立ローディング方式



●総合●

出力電圧 2V(0dB時)
電源/消費電力 AC100V(50/60Hz)/48W
外形寸法/重量 幅430×奥行333×高さ145mm/10kg

※本ページに掲載したSL-P10の写真・仕様表等は1983年12月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社
 に著作権
があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引
 用等をす
ることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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