OPTONICA SM-3000
INTEGRATED AMPLIFIER ¥88,000
1974年に,オプトニカ(シャープ)が発売したプリメインアンプ。家電メーカーであったシャープは,
1974年頃よりOPTONICA(オプトニカ)ブランドで力の入ったオーディオ機器を発売していきまし
た。そうしたオプトニカブランド初期のプリメインアンプの中で,最上級機SM-4000に次ぐ弟機が
SM-3000でした。
出力段は,差動増幅を2段採用したPNP-NPNパワートランジスターによる全段直結OCLパワー
アンプとなっていました。広帯域にわたって大出力と低歪率を実現し,0.05%歪時,1kHz実効出
力43W+43Wが確保されていました。特にクロスオーバー歪を抑える新開発の回路により,すぐ
れたパワー特性とクロスオーバー歪のない特徴をもち,1W出力時,0.02%歪という超低歪率特
性を実現していました。
さらに,大型のラジエーター(放熱器)採用とともに,ラジエーターの温度上昇の測定結果より,最も
放熱効果の高い位置にパワートランジスターを取り付けることにより,温度補償回路とあいまって
43W+43Wの連続出力を安定して得られるようになっていました。
また,大型の電源トランスと10,000μF×2の大容量のケミカルコンデンサーによる電源部によ
り,瞬間的大出力にも安定した電源供給が実現され,しっかりとした低域再生も可能としていまし
た。
イコライザー回路は,差動増幅回路と3電源方式によって,300mV,実効値850mVp-pとダイナ
ミックレンジが大きくとられ,高出力カートリッジを使用してもピーク値でのクリップがなく,低歪率が
実現されていました。また,独自のCAD(Computer Aided Design)手法で完成した本回路に,タ
ンタル抵抗器(±2%),スチロールコンデンサー(±1%))を使用したNF素子を組み合わせ,すべ
てをRIAA偏差0.3dB以内の高精度に抑えていました。
アンプやスピーカーを守るプロテクション回路は,負荷ショート時のアクシデントからアンプを守る過
電流保護回路に加え,スピーカーに直流が流れる事態が発生した場合に保護回路が動作してスピー
カーを守る,直流検出回路がスピーカー端子に設けられ,さらに,パワートランスには,温度ヒューズ
が設けられ,セット加熱による火災をも防止するようになっていました。これらのプロテクション表示
は,パネル前面の2色(緑・赤)のLEDで行われるようになっていました。
イコライザー部,トーンコントロール部,メインアンプ部,マイクアンプ部は,それぞれいずれも2電源
方式,3電源方式で,差動増幅によりDC結合になっており,DC/ACともに安定した動作が実現され
ていました。そして,各回路はモジュール化され,コンピューターに使われる無ハンダ接続のコネクタ
を使用したモジュールパッケージングシステムが採用され,各モジュールごとに徹底した品質管理が
行われたユニットで構成されており,メインテナンス性にも優れた構造になっていました。
機能的には,プリメインアンプとしてオーソドックスですが,必要な機能は充分に搭載されていました。
トーンコントロールはBASS,TREBLE独立形で,トーン回路にはNF型高利得ICが搭載されて低歪
率化が図られ,ブースト時にも十分NFが得られることで低歪率が確保されていました。ターンオーバー
周波数もBASSが300Hz・600Hz,TREBLEが1.5kHz・3kHzとそれぞれ2段切換式になってい
ました。また,スイッチ一つで平坦な周波数にできるトーンディフィートスイッチも装備されていました。
さらに,カットオフ特性6dB/octのハイカットフィルターと12dB/octのローカットフィルター,ラウドネス
スイッチも装備されていました。
PHONO入力は2系統装備され,PHONO-1は,インピーダンス47kΩ固定で,-6dBのアッテネー
ター装備,PHONO-2は,22kΩ,47kΩ,100kΩのインピーダンス切換スイッチ装備で,幅広い
カートリッジに対応していました。AUX入力も2系統装備され,AUX-2の端子は,操作性を考慮して
パネル前面に設けられていました。TAPE端子も2系統装備され,双方向のダビングも可能となって
いました。さらに,モノリシックICによる差動アンプ構成のマイクアンプ回路が±2電源で駆動されるマ
イク入力も装備されており,背面パネルには,アッテネーターも装備されていました。
スピーカー出力は,2系統搭載され,A,B,A+Bとスイッチ一つで切替えができるようになっていまし
た。
以上のように,SM-3000は,まじめな設計でオーソドックスにしっかりとした作り上げられたプリメイ
ンアンプでした。癖の少ない穏やかな音は,オプトニカの音作りのまじめな姿勢が表れていたように
思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
「歪」と徹底的に取り組んだ最新鋭機。
ソースの忠実な再生のための
ユニークな回路,イコライザ,そして・・・
◎ユニークな新回路構成による全段直結
純コンプリメンタリOCL出力段
◎大許容入力,RIAA偏差極小のCAD
手法によるイコライザ設計
(CAD・・・Computer Aided Design)
◎3段保護の完璧を期した
プロテクション回路
◎安定度の高い回路構成
◎ターンオーバー切替え式
トーンコントロール
◎適正マッチングのための
PHONO入力切替えスイッチ
◎ステレオ用マイク入力端子つき
◎A,B,2組のスピーカシステムを,
A,B,A+Bとスイッチひとつで
自由に切替え可能
◎2台のテープデッキが活用でき,
どちらのデッキへのダビングも可能
◎効果的なカットオフ特性の
6dB/octハイカットフィルター,
12dB/octローカットフィルター
◎ワンタッチで周波数特性を平坦にできる
トーンディフィートスイッチ
◎AUX 2の端子は操作性を考慮して
パネル前面に配慮
●規格●
■パワーアンプ部■
回路方式 | 差動増幅2段全段直結 純コンプリメンタリOCL |
実効出力 | 43W+43W(1kHz,両CH駆動8Ω) |
高調波歪率 | 0.05%(実効出力時) 0.02%(1W出力時) |
混変調歪率 | 0.1%(実効出力時) 0.05%(1W出力時) |
出力帯域幅 | 5Hz~40kHz(IHF両CH駆動,0.05%歪時) |
周波数特性 | 5Hz~150kHz+0,-1dB |
入力端子(感度/入力インピーダンス) | POWER IN:800mV/50kΩ |
出力端子 | SPEAKER:A,B,A+B(4Ω~16Ω) HEADPHONE:4Ω~16Ω |
ダンピングファクタ | 60以上(1kHz,8Ω) |
SN比 (IHFショートサーキットAネットワーク) |
100dB以上 |
残留雑音 | 0.4mV以下(8Ω,プリ+パワーアンプ) |
■プリアンプ部■
回路方式 | イコライザアンプ:初段差動増幅 コントロールアンプ:初段差動増幅 |
入力端子(感度/入力インピーダンス) | PHONO 1:4mV/2mV/47kΩ(-6dB切替え) PHONO 2:2mV/22kΩ,47kΩ,100kΩ MC 0.2mV/100Ω PHONO最大許容入力(1kHz):300mVrms,850mVp-p MIC:2mV/10kΩ(VR MAX),20mV/10kΩ(VR MIN) TUNER:150mV/47kΩ AUX 1:150mV/47kΩ AUX 2:150mV/47kΩ TAPE MONITOR 1,2:150mV/47kΩ TAPE MONITOR2(DIN端子):150mV/47kΩ |
出力端子 (レベル/出力インピーダンス) |
TAPE REC1,2:150mV TAPE REC2(DIN端子):30mV/80kΩ |
周波数特性 | PHONO(RIAA偏差):30Hz~15kHz±0.3dB MIC:7Hz~30kHz+0,-1dB TUNER,AUX,TAPE MON:5Hz~70kHz-0,-1dB |
トーンコントロール | BASS :ターンオーバー600Hz ±10dB(100Hz) ターンオーバー300Hz ±10dB( 50Hz) TREBLE:ターンオーバー1.5kHz ±10dB(10kHz) ターンオーバー 3kHz ±10dB(20kHz) |
フィルター | LOW :30Hz(12dB/oct) HIGH:7kHz(6dB/oct) |
ラウドネスコンター | +7dB(100Hz) +4dB(10kHz) ボリューム-40dBで |
SN比 (IHFショートサーキットAネットワーク) |
PHONO:80dB以上 MIC:70dB以上 TUNER,AUX,TAPE MON:90dB以上 |
ミューティング | -20dB |
■電源部,その他■
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 100W(電気用品取締法に基づく) |
電源コンセント | 電源スイッチ連動2,電源スイッチ非連動1 |
使用半導体 | IC2,トランジスタ47,ダイオード24,LED1 |
外形寸法 | 144H×442W×380Dmm |
重量 | 14.5kg |
※ 本ページに掲載したSM-3000の写真,仕様表等は1974年
11月のOPTONICAのカタログより抜粋したもので,シャープ株
式会社に著作権があ ります。したがって,これらの写真等を
無断で転載・引用等することは法律で禁じら れていますので
ご注意ください。