MICRO SOLID-5
BELT DRIVE PLAYER ¥54,800
1974年に,マイクロが発売したプレーヤーシステム。マイクロは,1965年に,国産初の
8極シンクロナスモーターを搭載したリムドライブ方式のターンテーブル,M-8Pを発売し,
その後,MB-800など,MBの型番をもつベルトドライブ方式のターンテーブルそしてMR
の型番を持つレコードプレーヤーを発売し,ベルトドライブ方式のプレーヤーで評価を高
めていきました。さらに,1970年にテクニクスから始まったDDプレーヤーの流れの中で,
1970年代には早くからDDプレーヤーも手がけ,DDプレーヤーも数多くラインナップして
いきました。そうした中,ベルトドライブ方式のプレーヤーとして完成度を高めた1台が
SOLID-5でした。

ターンテーブルは,直径31cm,重量1.5kgのアルミ合金ダイキャスト製で,上述のように
ベルトドライブで駆動されていました。ターンテーブルシャフトには精密仕上げの直径12mm
のステンレス材を使用し,軸受ベアリングは砲金材をたっぷり使った本格的なものとなって
いました。駆動ベルトには,耐熱性,耐候性,耐油性が高く,材質や硬度仕上げ精度にす
ぐれた合成ゴム系のネオプレーンベルトが使用され,安定した駆動が実現されていました。



駆動モーターには,小型のDCサーボモーターが搭載され,サーボメカニズムの働きで,わ
ずかな回転偏差もコントロールして,安定した定速回転を実現していました。モーターの回
転は,ターンテーブルの20倍比の低速回転で,モーター振動も少なく,SNにすぐれ,耐久
力も確保されていました。さらに,モーターユニットの安定性の維持のため,外部温度の影
響の少ない大型ハウジング(覆い)を取り付けていました。
そして,電源部には,電流制限回路を採用し,モーターの温度上昇をコントロールし,耐久
性を一段と向上させていました。
こうした回転系は,基本動作に徹した設計で,回転ムラ0.035%(WRMS)以下,立ち上
がり時間0.9秒以内SN比58dB以上という性能を実現していました。
33・45回転ともにそれぞれ独立した微調用コントロールを備えており,規定速度に対して
±6%の調整が可能となっていました。回転数のチェックはターンテーブルの外周に刻まれ
たストロボとネオンランプでできるようになっていました。

トーンアームは,同社の定番アームMA-202(¥15,800)をベースにしたものが搭載さ
れていました。スタティックバランス方式のS字型ユニバーサルアームで,有効長222mm
の標準タイプでした。回転部分軸受けは,超精密アンギュラー型ベアリングとマイクロ独自
のピボットの組み合わせになっており,さらに改良が施され,水平軸受部には,上下2点に
ラジアルベアリングが用いられた構造で,初動水平垂直感度10mg以下を実現していまし
た。
また,針圧対応可変式インサイドフォースキャンセラーを搭載しており,独自の針圧対応可
変式構造によりレコード外周と内周に応じてキャンセル量が相対して変化するためインサ
イドフォースによる針圧の左右アンバランスを解消でき、カートリッジのトレーシング能力を
向上させていました。アームリフターメカニズムは,オイルダンプ式でスムーズな動きを実
現していました。また,アームリフターの高さ調整が簡単にできるキューイングガイドピンが
付いていました。ヘッドシェルにはダイキャスト製のH-303を採用し,ヘッドロックコネクター
部は垂直調整が可能となっていました。

キャビネットは,40mm厚の積層合板による強固なものとなっていました。当時のプレーヤー
は,通常,モーターにより駆動されるターン・テーブル,アーム,ケースの3点によって構成
されていました。しかし,SOLID-5は,ターンテーブルとケースはまったく一体化された構造
となっていました。通常のプレーヤーはターン・テーブルとそれを駆動するためのモーターが
取り付けられている「モーター・ボード」といわれる部分がありますが,SOLID-5はスリムな
外観で,軽やかに見えますが,中味の完全に詰まった積層合板のケースそれ自体がモー
ター・ボードとなっている構造でした。積層合板によるキャビネットは,1972年のビクターの
JL-B77以来多く見られるようになっていましたが,特にベルトドライブプレーヤーでは,こう
した一体構造は全く新しい画期的なものでした。こうした構造は,剛性の高い専用キャビネッ
トが必要となり,プレーヤー専業メーカーのマイクロならではの作りといえ,SOLID-5の名前
も,こうした構造を表していたといわれています。
こうした一体型キャビネットの脚部には大型アブソーバーが装備され,振動による影響を低
減していました。この脚部は高さ調整が可能となっており,キャビネットには水準器も装備さ
れており,水平調整が可能となっていました。



以上のように,SOLID-5は,マイクロが音楽を聴く道具として完成度を高めたプレーヤーシ
ステムでした。薄型のキャビネットにスマートにメカニズムを収めたその設計は,実にバラン
スがとれており,DDプレーヤーが主流になりつつある時代に,ベルトドライブでしっかりした
性能を実現した1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



DCサーボ・コントロールによる
ベルトドライブ型の最高峰




●SOLID-5規格●

■フォノモーター■

駆動方式 ベルトドライブ方式
モーター DCサーボモーター
回転数 331/3,45rpm
回転数微調整範囲 ±6%(33,45独立調整)
ターンテーブル アルミダイキャスト,31cm,1.5kg
回転ムラ 0.035%以下(WRMS)
SN比 58dB以上



■トーンアーム部■

形式
スタティックバランス型
(インサイドフォースキャンセラー付)
アーム有効長 222mm
オーバーハング 15mm
針圧可変範囲
0~3g(1回転)
適合カートリッジ自重 4~11g
別売サブウェイトA:8.5~16.5g
別売サブウェイトB:13.5~21.5g
付属機構
アームリフター(高さ可変型)
ストロボライト,水準器,オーバーハングゲージ



■総合■

使用電圧
AC100V,50/60Hz
消費電力
3.5W
寸法
466W×342D×142Hmm
重量 9.3kg

※本ページに掲載したSOLID-5の写真・仕様表等は1975年
3月のMICROのカタログより抜粋したもので,マイクロ精機株
式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無
断で転載,引用等をすることは 法律で禁じられていますので,
ご注意ください。

 
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