SANSUI SP-511
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥55,000
1979年に,サンスイが発売したスピーカーシステム。1980年代を目前にして,サンスイが中級機の主力モデルとして
発売したものでした。ハードドーム型,リボン型など,よりワイドレンジをめざして各社が金属系等の新素材を使用し,特
に,中高域にコーン型以外の型式のユニットを搭載したスピーカーシステムを主力にラインナップしてきていたこの当時,
3ウェイのユニットすべてをコーン型でまとめたSP-511は,逆に個性的に見えました。
SP-511の最大の特徴は,上述のように,3ウェイシステムのウーファー,ミッドレンジ,トゥイーターのすべてにパルプコー
ンユニットを採用していたことでした。アルミニウム,チタン,マグネシウム,カーボンなど,様々な新素材を使用したユニッ
トを搭載したスピーカーシステムを各社が次々のアピールしている中,オーソドックスの極みともいうべきオールパルプコー
ンによる3ウェイとすることで,ナチュラルでバランスのとれた音をめざした設計がなされていました。
ウーファーは,32.2cm口径のコーン型で,コルゲーション入りのストレートコーンが搭載されていました。コーン紙は
外国産針葉樹パルプを使用し,適度な内部損失をもち,軽量で高剛性なプレスレスコーンが採用されていました。エッ
ジは,特殊発泡樹脂を熱成型した高ストローク化が図りやすいアップロールタイプが採用されていました。磁気回路に
は,120φ,20tの大型フェライトマグネットが採用され,連続的な大入力にも対処できる特殊処理を施した精密加工
のボイスコイルとあいまってすぐれたリニアリティ,過渡特性が実現されていました。さらに,ダンパーの材質や含浸剤
接着剤など,細部にわたる検討が行われていました。フレームには,強固なアルミダイキャストフレームが使用され,
有害な共振モード抑え,他のユニットへの影響も防止していました。
ミッドレンジは,13.2cm口径のコーン型で,カーブドコーン紙が採用されていました。コーン紙の材質や耐熱処理を
施したボイスコイルなど,振動系は軽量化が図られていました。磁気回路は85φの大型フェライトマグネットが搭載さ
れ,強力な駆動力により,すぐれた応答性が実現されていました。フレームには,強固なアルミダイキャストフレーム
が採用されていました。さらに,ユニットは最適な吸音を持たせた完全密閉型のバックキャビティが取り付けられ,ウー
ファーとの干渉を防ぎ,中音域の濁りを抑えていました。
トゥイーターは,3.6cm口径のコーン型で,コーン形状は指向特性や立ち上がりのよいストレート型で材質もヒヤリン
グを繰り返して決定されたものが使用されていました。磁気回路は,総磁束密度19,600マックスウェルという強力
な85φの大型フェライトマグネットが搭載されていました。エッジには,新たに波形エッジを開発して採用していました。
さらに,バッフル板との取り付けも,重量が大きく強度も高い大型のダイキャストフレームの使用により,音像定位,
解像力などを向上させていました。
エンクロージャーは,新開発の音響用パーティクルボードが使用された頑丈なバスレフ型エンクロージャーで,内部構
造の補強も十分に行われていました。バッフルは,ウーファーと他の2つのユニットをそれぞれ別のバッフルに取り付
けたセパレートバッフルが採用され,ユニット間の輻射音やエンクロージャーの振動による変調歪みの低減が図られ
ていました。バッフル上のユニット配置は音像定位を考慮した左右対称の配置となっていました。エンクロージャーの
仕上げは,リアルウッド・アメリカンブラック・ウォールナットの重厚な仕上げとなっていました。
吸音材は,それぞれ性質の異なる2種類のグラスウールとアセテート1種類を採用し,効果的に使い分けられていまし
た。また,バスレフダクトは,輻射効率にすぐれたL字型ツインダクトが備えられ,しっかりした低音再生を実現していま
した。
ネットワークは,低損失,低歪率設計のLC型ネットワークが搭載され,帯域間の相互干渉を防ぐためにネットワーク・ユ
ニットは分割配置されていました。ウーファー用コアには,大型アニール(熱処理のこと)・ラミネートコアが採用され,漏
洩磁束の発生を極力抑えていました。コイル,コンデンサーなどの部品配置も十分検討され,内部の線材も太めのもの
を使用し,音質への悪影響を最少限に抑えていました。また,ミッドレンジ,トゥイーターそれぞれに連続可変型のレベル
コントローラーが装備されていました。
以上のように,SP-511は,サンスイの中級クラスの主力機として,オーソドックスながらしっかりとしたつくりがなされた
1台でした。新素材の振動板,スピーカーユニットが主流となりつつあった中,オールコーン型ユニットのオーソドックスな
システムとして,同社の”Dシリーズ”プリメインアンプを使用し,リスニングルームでの特性を重視してしっかりと試聴テス
トを繰り返して設計・仕上げが行われ,バランスのとれた力強い音を実現していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



研ぎすまされた感性が磨きあげた
情感の3ウェイシステム。

オーソドックスなシステム作りを極めた
オールコーン型の新しい形。

◎リスニングルームでの動特性を重視。
◎変調歪の低減にセパレートバッフル採用。
◎細部にまで改善を施した新開発32.2cm
 コーン型ウーファー。
◎クリアーな中音域を再現する13.2cm
 コーン型ミッドレンジ。
◎音像定位や解像力を向上させた3.6cm
 コーン型ツイーター。
◎リアルウッド・アメリカンブラック仕上げの
 バスレフ型エンクロージャー。
◎音質重視の思想を細部にまで貫いた
 低歪率設計のネットワーク。
◎中・高音域連続可変型アッテネーター。




●SP-511規格●

型式 3ウェイ・3スピーカー
 ウーファー:32.2cmコーン型
 ミッドレンジ:13.2cmコーン型
 ツイーター:3.6cmコーン型
最大許容入力 100W
インピーダンス 8Ω
音圧レベル 93dB/W(New JIS at 1m)
周波数特性 35Hz〜20kHz
クロスオーバーネットワーク 3ウェイ,LC型
クロスオーバー周波数 800Hz,5kHz
仕上げ リアルウッド・アメリカンブラック・ウォールナット
寸法 400W×680H×328Dmm
重量 21.3kg
※本ページに掲載したSP-511の写真,仕様表等は1979年11月
 のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意く ださい。

                        
 

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