SU-3600の写真
Technics SU-3600
INTEGRATED AMPLIFIER ¥75,000

1970年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。総合電機メーカー・松下電器(当時
社名)は,1965年に,オーディオブランドとしてテクニクスブランドを発足させ,高い技術力を発揮して画期
的な製品を発売していきました。もともとはスピーカーのブランド名であったテクニクスブランドは,アンプの
分野でも,OTL(アウトプット・トランス・レス)真空管アンプ,OCL(アウトプット・コンデンサー・レス)アンプ等
を各社に先駆けて発売し,高い評価を得ていました。そして,国産初のOCLアンプとして高い評価を得てい
SU-50Aの弟機として発売されたのがSU-3600でした。

SU-3600は,SU-50Aゆずりの回路構成が採用され,2電源方式による全段直結回路が搭載されてい
ました。出力コンデンサーのないOCL構成で,超低域までダンピングファクターを落とさずフラットに保ち,し
っかりした低域再生が実現されていました。

全段直結回路のアンプで大切になる安定性を確保するために,パワーアンプ初段には,定電流回路使用
の差動アンプを採用し,直流ドリフトに対する安定度が高められていました。高域に対しては,チョークコイ
ルを用いた補償回路が搭載され,安定度が高められていました。
以上のようなパワー段から,実効出力50W/50W(8Ω)という,SU-50Aを上回る,当時のプリメインアン
プとしては驚異の大出力と0.2%以下の低歪み,7Hz〜50kHz(−3dB)の広い出力帯域幅という,すぐ
れた特性が実現されていました。

イコライザ段は,SU-50Aゆずりの低ノイズトランジスターを多く使用し,S/Nの劣化を抑え,PHONO入力
のS/N比は,73dB)IHF)が実現され,許容入力も130mVが確保されていました。このイコライザ段には,
PNP-NPN-PNPの3段直結回路と特殊バイアス回路が採用され,電源スイッチのON/OFFの際の,ショッ
ク音を皆無としていました。イコライザ特性も高い精度が確保され,RIAA偏差は±0.5dB以内に抑えられ
ていました。

機能的にはオーソドックスな構成でしたが,当時のアンプとしては,十分な機能が備えられ,縦横にラインの
入る個性的なデザインのフロントパネル上にすっきりと配置されていました。
PHONO入力は2系統搭載され,PHONO2は,入力インピーダンスが30kΩ,50kΩ,100kΩ,200kΩ
の4段切換が装備されていました。
トーンコントロールはBASS,TREBLE独立型で,機械的中点がそのまま特性フラットになる方式で,BASS
(125Hz,250Hz,500Hz),TREBLE(2kHz,4kHz,8kHz)と,それぞれターンオーバー周波数が3段
切換になっていました。
フィルターは,30Hz,12dB/octのローフィルターと8kHz,12dB/octのハイフィルターが装備されていまし
た。その他,小音量時に低域を持ち上げるラウドネススイッチ,−20dBのミューティングスイッチ,STEREO
REV,L+R,L,RのMODE切換が装備されていました。AUX端子,TAPE端子には入力レベルコントロー
ルが備えられ,他のソースと音量を揃えることもできるようになっていました。
スピーカー端子は2組装備され,その他,ヘッドホン端子も装備されていました。また,プリ・アウト,メイン・イ
ン端子も装備され,プリとメインはそれぞれ単独使用も可能となっていました。

以上のように,SU-3600は,プリメインアンプのトップモデル50Aの技術を受け継ぎ,高い性能と機能性を
実現した中級機でした。(当時としてはかなりの高級機になりますが・・。)物理特性のよさだけでなく,50Aよ
り,さらに若々しく元気な音をもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



素性のよさは名器50Aゆずり。
パワーにまさる頼もしいプリメイン


[全段直結差動増幅・OCL回路]の
メインアンプ

◎ダンピングのよさは直流域にまで
  およんでいます。
◎安定度の高い差動アンプ
◎大出力,低歪み,平坦な周波数特性


高忠実再生を徹底的に追求した
プ リ・アンプ

◎広いダイナミックレンジ,すぐれたS/N
◎不愉快なスイッチ・オン時のショック音を追放
◎イコライザカーブは正確そのもの
◎音場補正を自由にしたトーンコントロール
◎邪魔な音をカットするロー・ハイフィルター
◎小音量でも低音が豊か。ラウドネスコントロール




●定格●

形式
ソリッドステイト ステレオプリ・メインアンプ
回路方式
全段直結差動増幅OCL回路(メイン部)
使用石
30トランジスタ,15ダイオード




●メインアンプ部●

出力ミュージックパワー 180W(4Ω) (IHF)
120W(8Ω) (IHF)
実効出力
60W/60W(4Ω)
50W/50W(8Ω)
パワーバンド幅
7Hz〜50kHz(−3dB,歪0.2%)
周波数特性
5Hz〜100kHz(−3dB)
歪率(1kHz,8Ω負荷)
50W/50W 歪0.2%以下
20W/20W 歪0.02%以下
SN比
110dB以上(IHF)
ダンピングファクター 100以上(1kHz,8Ω)
入力感度
1.0V
インピーダンス 80kΩ
出力端子
スピーカ 2組(MAIN ON-OFF,REMOTE ON-OFF)
ヘッドホン 




●プリアンプ部●

入力感度/インピーダンス
(1kHz,VR max)
PHONO 1:入力感度1.5mV
         入力インピーダンス:50kΩ
PHONO 2:入力感度1.5mV
         入力インピーダンス:30kΩ,50kΩ,100kΩ
TUNER   :入力感度100mV
         入力インピーダンス50kΩ
AUX1    :入力感度100mV(アジャストVR max)
         入力インピーダンス50kΩ
AUX2    :入力感度100mV
         入力インピーダンス50kΩ
テープモニター PLAYBACK:入力感度200mV(アジャストVR max)
         入力インピーダンス80kΩ
REC-OUT:出力感度100mV
        インピーダンス10kΩ
トーンコントロール BASS:20Hz +17dB〜−18dB
 ターンオーバー周波数125,250,500Hz
TREBLE:20kHz +15dB〜−15dB
 ターンオーバー周波数2,4,8kHz
ラウドネスコントロール
50Hz +15dB
フィルター LOWフィルター:30Hz −12dB/oct
HIGHフィルター:8kHz −12dB/oct
SN比
(IHF)
PHONO1,2:73dB以上
TUNER:85dB以上
AUX  :85dB以上
周波数特性
5Hz〜90kHz(±0.5dB)
高調波歪 0.1%以下(1kHz・定格出力時)
ミューティング
−20dB




●総合●

電源
AC 100V(50/60Hz)
消費電力
140W
電源コンセント
SWITCHED 2
UN-SWITCHED 1
寸法
420W×150H×330Dmm
重量
12.5kg


SU-3602の写真

Technics SU-3602
INTEGRATED AMPLIFIER ¥79,000

1972年,SU-3600の改良型であるSU-3602が発売されました。外観上はほとんど見分けが付か
ないくらいそっくりですが(実際には奥行きが少し長くなっています),内部は大幅に強化されていました。

最大の改良点は,メインアンプ部でした。直流安定性を高めるための定電流回路を用いた差動増幅段
を初段に採用した,全段直結OCL回路が継承されたメインアンプ部には,新たに出力段にPNP NPN
トランジスターを組み合わせた完全コンプリメンタリー構成が採用され,歪みの低減と高域特性の改善
が図られていました。

機能的には,新たにプリセットボリュームが搭載されていました。いつも聴くレベルにセットしておけば,
ボリュームツマミの回転がその点で止まる仕組みで,レコードのかけ替えなどの時,オーディオミューティ
ングに比べ,音量の変化がなめらかに得られるようになっていました。
テープモニタ回路は,2系統に増やされ,相互のダビングも自由にできるようになっていました。

以上のように,SU-3602は,SU-3600をベースに,改良を加え,性能的にも機能的にも,より現代的
なしっかりしたアンプになっていました。歪み感が減った,完成度の高められた音となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



 本機は,メインアンプを完全コンプリメンタリ全段直結
回路で構成。ボリュームにユニークなプリセット方式を
採用。さらに2組のテープモニタ回路を装備するなど,
高級プリメインアンプSU-3600を基本に,その高性能
とすぐれた機能性をさらに前進させることに成功したプ
リ・メインアンプです。

◎完全コンプリメンタリ・OCL回路のメイン部
 超高域から直流域まで特性が一段と向上
◎広いダイナミックレンジ,低雑音の
 PNP-NPN-PNP 3段直結イコライザ
◎オーディオミューティング兼用
 プリセットボリューム採用
◎2組のテープモニタ回路。同時録音
 一方から他方へのダビングも自由自在
◎テクニクス式トーンコントロール
◎50W/50Wの余裕あるパワー
◎メイン,リモートスピーカ接続端子2組
◎ヘッドホンジャックつき
◎ロー・ハイ・フィルタ
◎ラウドネススイッチ
◎イージーコネクタ採用のスピーカー接続端子




●定格●

形式
ソリッドステート プリ・メインアンプ
回路方式
完全コンプリメンタリー全段直結差動増幅OCL(メイン部)
使用石
35トランジスタ,9ダイオード



●メインアンプ部●

出力ミュージックパワー 180W(4Ω) (IHF)
120W(8Ω) (IHF)
実効出力
60W/60W(4Ω)
50W/50W(8Ω)
パワーバンド幅
7Hz〜50kHz(−3dB)
周波数特性
5Hz〜100kHz(+0,−3dB)
歪率(実効出力時)
0.2%以下
SN比
110dB以上(IHF)
ダンピングファクター 100(8Ω負荷)
入力感度
1V
インピーダンス 80kΩ
負荷インピーダンス
4〜16Ω 




●プリアンプ部●

入力感度/インピーダンス
 
PHONO 1:1.5mV/50kΩ
PHONO 2:1.5mV/30kΩ,50kΩ,100kΩ
TUNER   :100mV/50kΩ
AUX1,2  :100mV/50kΩ
テープモニター1,2 REC-OUT:100mV/10kΩ
PLAYBACK:100mV/80kΩ
REC/PLAY(DIN):100mV/50kΩ,50mV/80kΩ
出力電圧/インピーダンス
定格出力   :1V/5kΩ
最大出力電圧:3V/5kΩ
PHONO最大許容入力
130mV(1kHz)
周波数特性 PHONO1,2:RIAA標準カーブからの偏差±0.5dB以内
TUNER:5Hz〜90kHz+0,−3dB
AUX1,2:5Hz〜90kHz+0,−3dB
トーンコントロール BASS:50Hz +15dB〜−15dB
 ターンオーバー周波数125,250,500Hz
TREBLE:20kHz +17dB〜−18dB
 ターンオーバー周波数2,4,8kHz
ラウドネスコントロール
100Hz +10dB(音量ボリューム−30dBにて)
フィルター ローフィルター:30Hz −12dB/oct,
  ターンオーバー周波数500Hz−12dB/oct
ハイフィルター:8kHz
  ターンオーバー周波数2kHz
ファンクション
プログラムセレクタ
 PHONO2/PHONO1/TUNER/AUX1/AUX2
モード
 REVERSE/STEREO/L+R/L/R
テープモニタスイッチ
 TAPE1/SOURCE/TAPE2
レコーディング
 TAPE1→TAPE2/SOURCE→TAPE1,2
 TAPE2→TAPE1
ラウドネススイッチ,プリセットボリューム
スピーカ切換スイッチ
 MAIN,REMOTE  ON/OFF
フィルタ
 LOW,HIGH  ON/OFF
ターンオーバー切換スイッチ,ヘッドホンジャック
PHONO入力インピーダンス切換スイッチ
プリアウト・メインイン端子,スピーカ保護ヒューズ
外部電源コンセント
 SWITCHED:2 UNSWITCED:1





●総合●

電源
AC 100V 50/60Hz
消費電力
110W(定格出力時)
外形寸法
420W×150H×373Dmm
重量
12.4kg

※本ページに掲載したSU-3600,SU-3602の写真,仕様表等は1970年
 1973年4月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用
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