Technics SU-V6
STEREO INTEGRATED DC AMPLIFIER ¥59,800
1979年に,テクニクス(現パナソニッック)が発売したプリメインアンプ。SU-V10以来,同社が展開して
いった可変バイアスによるノンスイッチング方式である「ニュークラスA方式」を採用したプリメインアンプと
して,エントリークラスに投入されたのがSU-V6でした。

メインアンプ部は,初段に,特に温度特性のすぐれたワンチップのデュアルFETを採用し,DCドリフトも
-10℃~+50℃の通常動作では±10mV以下という,従来の約1/5の極小レベルに抑えられていま
した。そして,ハイゲインDCパワーアンプに,ハイレベル入力(tuner,aux,tape)が直結されたストレート
DC方式が採用されていました。スイッチでストレートDCを選択することで,トーンアンプもパスしてパワー
アンプ直結となるようになっており,直流域までの忠実な波形伝送特性を実現し,可聴周波数帯域の振
幅・位相周波数特性をさらにフラットなものにしていました。
そして,ハイゲインDCパワーアンプには,上級機同様に「シンクロバイアス回路」による「ニュークラスA方
式」を採用していました。+側の信号が入ったときには増幅作用を停止している-側の出力段に,また,
-側の信号に対しては+側の出力段に一定のバイアス電流を与え,出力段を信号の有無にかかわらず
常時能動状態におき,トランジスタをノンカットオフとして,スイッチング歪を抑えるもので,さらに,信号経
路とバイアス電流が独立しているため,出力トランジスタが常に適切な動作点をキープし,波形を切換え
る高速応答ダイオードが理想の二乗特性に近い合成伝達特性をもつため,クロスオーバー歪も解消して
いました。当時多くのオーディオメーカーが開発していた,いわゆる疑似A級,ノンスイッチングアンプの
うちの1つで,実際にテクニクスらしい歪み感の少ない音を実現していました。
パワーアンプ部は,上級機同様に,出力トランジスタと電源部を一体化して最短距離で結び,電磁波によ
る高域の歪を極少レベルに抑えた「コンセントレーテッドパワーブロック」が採用されていました。



フォノイコライザーは,初段にローノイズデュアルFETによる差動増幅器を採用し,FETの採用により,MM
MCとも入力コンデンサーを追放したICLイコライザーとしていました。どの結果,ストレートDCスイッチをON
にすると,フォノ入力からスピーカー端子までの間には,カップリングコンデンサー(イコライザーの出力コン
デンサー)ただ1つというシンプルな回路構成を実現していました。
フォノイコライザー次段には,高ゲインIC(100dB以上)を採用し,きわめて低雑音のFETの採用と相まって
ゲイン切換により,MCカートリッジもダイレクトに使用できる,ハイゲインイコライザーとしていました。

電源部は,整流・平滑回路を左右ch独立させたL・R独立型2電源を採用し,70W+70Wの出力を安定し
て供給する十分な電力容量を確保していました。電源トランスは,コイルを特殊樹脂中にフロートさせてシー
ルドケースに収納した高性能トランスを採用し,有害な機械振動が少なく,SN比にすぐれた,シールド効果
の高い電源トランスとしていました。
定電圧電源の誤差検出回路の負荷に,FETを採用し,有害なハム雑音の原因となるリップル(交流成分)除
去率の高い安定した電圧を,メインアンプ初段までの電圧増幅段に供給するようになっていました。

機能的には,オーソドックスながら,サブソニッククフィルター,ハイフィルター,ラウドネス,バス・トレブル独
立のトーンコントロール,RECセレクターと,プリメインアンプとして主な機能は過不足なく備えられていまし
た。また,配線の引き回しを最少限にするため,RECセレクター,入力セレクター,PHONOセレクターに,
リモートアクションスイッチを採用していました。

以上のように,SU-V6は,プリメインアンプとしては単品コンポーネントのエントリーモデルといった1台で,
上級機やセパレートアンプで開発された技術を投入し,コストパフォーマンスの高いモデルとなっていました。
歪み感の少ない,低音のしっかり出る音は,プリメインアンプとして使いやすいものとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



70W+70W,スイッチング歪ゼロの衝撃
どこまでも澄みきった音楽が
パワフルに躍動します




●SU-V6 主な定格●


(tuner,aux→SP out総合特性)

実効出力(両ch駆動時)
70W+70W(20Hz~20kHz,8Ω,0.007%)
全高調波歪率
0.005%(20Hz~20kHz,定格出力-3dB)
出力帯域幅
5Hz~100kHz(THD,0.02%)
周波数特性
(ストレートDC)
 DC~20kHz(+0,-0.1dB)
 DC~150kHz(+0,-3dB)
SN比(IHF-A)
106dB(ストレートDC)
残留雑音
450μV(ストレートDC)
ダンピングファクタ
60(8Ω)
負荷インピーダンス
main or remote :4Ω~16Ω
main and remote:8Ω~16Ω


(その他の特性)


入力感度/入力インピーダンス
phono MM:2.5mV/47kΩ
phono MC:170μV/47Ω
tuner,aux,tape:150mV/47kΩ
SN比(IHF-A)
phono MM:86dB
phono MC:68dB(250μV入力)
周波数特性
20Hz~20kHz,RIAA±0.5dB
シェルビングトーン
bass(50Hz)±10dB,treble(20kHz)±10dB
フィルタ
high:7kHz(-6dB/oct)
subsonic:20Hz(-12dB/oct)
ラウドネスコントロール
(VR -30dB)
+7dB(50Hz)


(総合)


電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
182W
外形寸法
430W×153H×351Dmm
重量
12.3kg

※本ページに掲載したSU-V6の写真,仕様表等は,1980年4月の
 Technicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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