Technics SV-P100
DIGITAL AUDIO CASSETTE RECORDER ¥600,000
テクニクスが1982年に発売したデジタルオーディオテープレコーダー。技術的にはDATの元祖といえるか
もしれません。同年にテクニクスが発売したデジタルプロセッサーSV-100(¥148,000)は重量2.9kg
とソニーのPCM-F1の4.0kgより大幅に軽量化された対抗機としてテクニクスの意地を見せたプロセッサー
でした。SV-P100は,そのSV-100とVHSデッキを一体化してデジタルオーディオテープレコーダーとして
完成させた先進的で実験的な製品でした。
Technics SV-100
DIGITAL AUDIO PROCESSOR ¥148,000SV-P100及びSV-100は当時最先端を行く半導体集積技術により完成された製品でした。PCMデジタル
信号処理は,2つの新開発の大集積LSIによりコントロールされていました。チップサイズ6.08×5.58mm
のNM6601は約1万個の素子を集積した録音用信号処理回路で,A/D変換されたデジタルデータの誤り検
出符号,訂正符号を付加してビデオデータとして送り出す働きをし,また,チップサイズ6.46×6.18mmの
NM6602は,約1万5000個の素子を集積して,デジタル信号の再生用で,再生されたPCMデジタル信号
の複号化,誤り訂正を行い,シリアルデータとしてD/Aコンバータに送る働きをしていました。汎用ロジックIC
200個分に相当するというこの2つのLSIにより,ボディーの小型化が実現されていました。
A/DコンバータMA6193,及びD/AコンバータMD6192は,高度な薄膜IC技術と精密トリミング技術によ
り新開発されたLSIでした。また,周辺ロジック回路は,高速・高密度IILを用い,アルミ2層による高密度配線,
外部とのバッファーキーにはショットキー接合を用いて高速化したゲート数1100の大集積バイポーラLSIに1
チップ化されて搭載していました。以上のような当時の最先端の半導体技術が可能にした当時としては画期的
な小型化,ワンボディー化でした。
テープ走行系は,持ち前のVHSビデオデッキの技術を生かした,高精度なVHSテープ用のメカニズムで,高
精度なテープ走行を実現していました。テープ操作部は,フルロジックコントロールで精度の高い操作を実現し
ていました。VHSビデオカセットの挿入取り出しは専用モーターによる自動開閉式で,カセットをホルダーに入
れるだけで,自動的にホルダーが閉まり,ローディングが行われるようになっていました。再生キーを押しなが
ら早送り,巻き戻しキーを押すことにより,それぞれ8倍速でのキュー,レビューコントロールが可能でした。ま
た,サーチマークという特殊な信号を書き込むことで,録音した任意の位置へ再生せずに早送りさせるジャン
プ機能,任意のテープ位置をメモリーさせて簡単に捜し出せるサーチ機が搭載されていました。また,テープ
カウンターを利用した,カウンター途中で頭出しメモリーができるロケート機能も装備していました。
録音レベル調整は,L・R独立式で,L・R同時に録音レベルを変えられ,スムーズなフェードイン,フェードアウ
トが可能なマスターフェーダーツマミも搭載されていました。
レベルメーターは,見やすく美しい液晶表示型で,ピークホールド機能や,テープの品質がチェックできる再生
データチェック機能も装備されていました。また,テープカウンターも液晶表示となっていました。
以上のように,当時最先端のデジタル技術とビデオ技術を合体して,デジタルレコーダーとして完成された本機
は,最長2時間連続のデジタル録音・再生を可能にした,当時夢のテープレコーディングシステムでした。ここで
の技術が,後のDATなどのデジタル録音機へとつながっていったという意味で,デジタルの歴史の中でも記憶
に残る名機だと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
入力信号を損なうことなく,受信側に伝達できるPCM。こ
れをステレオに導入したのが,PCMデジタルオーディオ
です。変調歪,ワウ・フラッタはゼロ,極めて広いダイナミ
ックレンジ,極めてフラットな周波数特性・・・。その特性の
素晴らしさは,オーディオの夢とまでいわれたものです。
その夢をテクニクスがいま形にします。コンパクトボディに
驚異的高性能を秘めたSV-P100。
◎原音高忠実度再生を可能にする
PCM(Pulse Code Mojulation)
◎VHSテープメカニズムを内蔵・一体化
カセットデッキの手軽さでPCM録再
◎43cm幅のコンパクトボディに
先進の半導体技術を凝縮
◎AD/DAコンバータ及び
周辺ロジック回路LSIを開発,採用
◎マイコン制御のロジックコントロール
極めて精度の高い操作性を実現
◎編集,サーチ,ロケート機能等
操作性も重視した多機能設計
SV-P100 | SV-100 | |
型式 | デジタルオーディオレコーダ | デジタルオーディオプロセッサ |
PCM規格 | EIAJステレオ技術委員会・ビデオ編集委員会ファイル
STC-007”民生用PCMエンコーダ・デコーダ”による (録音・プリエンファシス入り) |
|
量子化 | 14ビット直線 |
|
複号化 | 14ビット直線 |
|
使用テープ | VHS規格ビデオカセット | |
テープ記録方式 | NTSC TV信号化したPCM信号をVHS規格に基づいて記録 | |
録音時間 | 最大2時間40分(NV-T160ビデオカセット使用) | 最大8時間(NV-T160ビデオカセット使用) |
オーディオチャンネル数 | 2チャンネルステレオ |
|
周波数特性 | 2Hz〜20kHz(±0.5dB) |
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高調波歪率 | 0.01%以下(1kHz,0dB) |
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ダイナミックレンジ | 86dB以上 |
|
入力レベル/インピーダンス | ライン 30mV(−15dB)/50kΩ
マイク 0.7mV(−15dB)/600Ω デジタルコピー 1Vp-p/75Ω(ビデオフォーマット) |
ライン 55mV(−15dB)/50kΩ
マイク 1.1mV(−15dB)/600Ω ビデオ 1Vp-p/75Ω |
出力レベル/インピーダンス | ライン 400mV
デジタル 1Vp-p/75Ω(ビデオフォーマット) |
ライン 400mV(−15dB)/600Ω
デジタル 1Vp-p/75Ω ビデオ 1Vp-p/75Ω |
電源 | AC100V(50/60Hz) | AC/DC/カーバッテリー(DC12V,1.6A) |
消費電力 | 80W | 14W(DC12V) 50VA(AC100V,ACパワーユニット使用) |
外形寸法 | 430W×278H×346Dmm | 244W×95H×251D(本体)
78W×95H×259Dmm(ACパワーユニット) |
重量 | 21kg | 2.9kg(本体),2.3kg(ACパワーユニット) |
※本ページに掲載したSV-P100,SV-100の写真,仕様表等は1981年10月,
1983年12月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式
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