ONKYO T-406
SERVO LOCKED FM STEREO AM TUNER ¥45,000
1978年に,オンキヨーが発売したFM・AMチューナー。オンキヨーはスピーカーやアンプのブランド
イメージが強いメーカーですが,バリコンチューナーの時代からチューナーでも数々の実力機を作っ
てきました。そして,同年に,当時最先端の高性能を実現すべく開発された,オンキョー初の本格的
な高性能デジタルシンセサイザーチューナーT-410DGが発売されました。その弟機として発売され
たバリコンチューナーの中級機がT-406でした。
フロントエンドは,RF段に雑音指数が低く,ダイナミックレンジの広いデュアルゲートMOS FETが使
用され,周波数直線4連バリコンが搭載されていました。こうした構成により,実用感度1.8μV(新
IHF10.3dBf),イメージ妨害比80dB(83MHz),スプリアス妨害比90dB(83MHz)という高感度
と妨害波排除特性,相互変調妨害排除を実現していました。
受信安定度に対しては,オンキョーのチューナーとしては第3世代のサーボロックが搭載されていまし
た。検波器の歪最少・セパレーション最大の音質最良点と,実際の通過信号とのずれを検出し,高利
得オペアンプICを使用して,局部発振器へフィードバックさせ,局発周波数を固定するようになってい
ました。このときの同調周波数精度は±5kHz以内という高精度で,受信中の周波数ドリフトを排除し
ていました。
このサーボロックには,タッチセンサーが組み合わされていました。選局操作時に,同調点±50kHz
以内に入ると,ロックドインジケーター(赤)が輝き,ロック範囲に入ったことを示し,チューニングノブか
ら手を離すと瞬時に最適同調点にロックし,チューンド・インジケーター(緑)が選局完了を示すように
なっていました。これにより敏速で正確な選局が可能となり,正確な同調点の保持が実現していました。
フロントエンドのミキサー部からの正確な中間周波数(IF)を増幅するIF部は,微分利得直視法によっ
て厳選された広帯域リニアフェイズフィルターを使用するとともに,IFアンプに高性能差動ICを採用して
充分なリミッター効果を確保し,選択度と位相特性を両立させる構成がとられていました。歪率0.15%
(400Hz),S/N比73dBというすぐれた音質と,60dBというすぐれた選択度を両立していました。さら
に,検波器も微分利得直視法によって,広帯域でリニアな特性を確保していました。
MPX部には,安定度の高いAFアンプ内蔵の新型PLL・ICを使用し,セパレーション50dB(1kHz)とい
うクリアなステレオ信号を得ていました。さらに,わずかな歪の発生も抑えるために,安定したPLL・IC
に強化フィルターを追加し,MPX部全体としての低歪率化を実現していました。
こうした広帯域リニアフェイズフィルターのIF部や低歪率MPX部,ダイナミックマージンの大きいAFアン
プにより,ダイナミックレンジの大きいFM放送に対しても十分に対応し,150%変調時に0.15%以下
200%変調時に0.3%以下(400Hz・ステレオ)という低歪率を実現していました。
フロントパネルは,走行長250mmのロングスケールダイヤルと大型フライホイール付きチューニングノ
ブ,そして信号強度を表示するシグナルメーター,同調点を表示するセンターチューニングメーター,変
調レベルを表示するデビエーションメーターの3つのメーターが配置されていました。その他機能的には
50%変調,440Hz連続音を発振するエアチェック・キャリブレーター,ノイズフィルター,出力レベルボ
リュームが装備されていました。
オーディオ出力は,VARIABLE端子と出力固定のREC端子が装備されていました。その他,マルチパ
スをリニアに検出するマルチパス出力端子が装備されていました。
以上のように,T-406は,中級クラスのチューナーとしてオーソドックスながら手堅い作りで,使いやす
いチューナーとして仕上げられていました。オンキヨーはチューナーではメジャーなブランドとは言えませ
んがバランスのとれた1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
インテグラのクオリティ・エアチェック宣言。
快適なタッチセンサー・チューニングを装備した
サーボロック第3世代。
◎完璧同調をめざしたサーボロック方式
◎タッチセンサーによる敏速なジャストチューン機
◎FMエアチェックに威力を発揮するロック機構
◎クオリティ・エアチェックを可能にしたアクセサリー回路
●変調レベルを表示するデビエーションメータ
●エアチェック・キャリブレータ装備。
●マルチパス出力端子。直接視聴も可能
◎TQ=トータル・クオリティを貫いて
広ダイナミックレンジを達成
◎MOS FET使用4連バリコンのフロントエンド
◎低歪率と高選択度特性を両立させた
広帯域リニアフェーズフィルタのIF部
◎強化フィルタによって歪を低減したMPX部
◎全回路を通じてオーバー変調対策を徹底
◎快適な操作性,そして音質の良いAM部
●主な仕様●
FMセクション | |
受信周波数 | 76~90MHz |
実用感度 | IHF・300Ω 1.8μV 新IHF 10.3dBf |
S/N50dB感度 | IHF 3.0μV 新IHF 14.8dBf |
イメージ妨害比 | 80dB(83MHz) |
IF妨害比 | 95dB(83MHz) |
S/N比 | MONO 77dB STEREO 73dB |
スプリアス妨害比 | 90dB |
2信号選択度 (±400kHz離調) |
60dB |
AM抑圧比 | 53dB |
キャプチュアレシオ | 1.0dB |
歪率 | MONO 400Hz 0.08% MONO 50Hz~10kHz 0.15% STEREO 400Hz 0.15% STEREO 50Hz~10kHz 0.3% |
周波数特性 | 20~15,000Hz(+0.5,-1.5dB) |
アンテナインピーダンス | 75Ω・300Ω |
ステレオセパレーション | 1kHz 50dB 100Hz~10kHz 38dB |
キャリアリーク | -60dB |
出力電圧 (400Hz100%変調) |
可変出力 0~1200mV 録音出力 450mV |
出力インピーダンス | 可変出力 最大時2.2kΩ 録音出力 3.9kΩ |
AMセクション | |
受信周波数 | 535~1605kHz |
実用感度(バーアンテナ) | 150μV/m |
イメージ妨害比 | 52dB(1MHz) |
IF妨害比 | 38dB(1MHz) |
S/N比 | 60dB |
歪率 | 0.5%(400Hz) |
出力電圧 (400Hz 30%変調) |
可変出力 0~400mV 録音出力 150mV |
使用半導体 | 4IC,19Tr(1FET),21Di |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 14W(電気用品取締法) |
寸法 | 435W×108H×386Dmm |
重量 | 6kg |
※本ページに掲載したT-406の写真,仕様表等は1978年11月のONKYO
のカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら
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