ＬＵＸＭＡＮ 　Ｔ-５０Ａ
ＡＭ/ＦＭ　ＳＴＥＲＥＯ　ＴＵＮＥＲ　￥６９，０００

１９７９年に，ラックスが発売したＦＭ/ＡＭチューナー。同年に発売された高級プリメインアンプＬ-５８Ａ等との
ペアを想定されたチューナーで，ウッドキャビネットをあしらった，ラックスらしいエレガントなデザインが特徴
的ですが，バリコン式チューナーとして技術的にも完成度が高められていました。

Ｔ-５０Ａの最大の特徴は，「ＣＬＬ（Ｃｌｏｓｅｄ　Ｌｏｏｐ　Ｌｏｃｋｅｄ）方式同調システム」の搭載にありました。これ
は，フロントエンド，ＩＦ段，検波段まで受信回路をトータルに制御して，ＦＭ局の送信周波数にロックしてしまう
という方式でした。受信したＦＭ局の正確な同調点を中心としたキャプチャ・レンジをきわめて狭く設定し，強
力なフィードバック回路が最良の同調状態にロックされ，安定かつ正確な受信が実現されていました。また，
このＣＬＬ回路には，再ロック回路（Ｄｙｎａｍｉｃ　Ｋｉｃｋ　Ｓｙｓｔｅｍ）が内蔵され，チューナーの電源を切っても
再度電源を入れた際，再度チューニングをとり直さなくても同調点が維持されるようになっていました。
このＣＬＬ回路に「アキュタッチ機構」が組み合わされていました。この機構は，ＣＬＬ回路の制御電圧を利用
して正確なセンターポイントを検出し，チューニングノブに機械的なロックをかけるもので，チューニングノブを
通常の速さで回していくと，手応えとともにチューニングノブが一時的（約１秒間）にロックされ，感触で正確な
同調点がわかるようになっているというユニークな機構でした。

フロントエンドは，ＲＦ段にＭＯＳ型ＦＥＴを使用し，低歪率局部発振回路の採用により，すぐれた妨害排除特
性，混変調特性と低歪率を両立させていました。
ＩＦ段には，帯域幅２段切替（ｗｉｄｅ/ｎａｒｒｏｗ）が設けられ，低歪率特性と高選択度特性を選択・両立させると
ともに，ビート防止回路を付加して，ｎａｒｒｏｗ時の混信対策が強化されていました。
検波段には，広帯域・低歪率特性のＮＥＷクオドラチュアＩＣが搭載され，ＭＰＸ段には，ＰＬＬ　ＩＣが使用され
高セパレーションが実現されていました。

機能的には，オーソドックスでシンプルなものとなっていました。ミューティングは，ミューティングのかかる電
界強度を自由に設定できるミューティングレベル・コントロールが搭載されていました。インジケーターとして
信号の強さを５段階に表示するシグナル・ストレングス・インジケーター，ＦＭ局を正確にとらえていることを
示すセンター・インジケーターが搭載されていました。

以上のように，Ｔ-５０Ａはラックスらしいエレガントなデザインの薄型の筐体の中に，当時の最新の素子が
投入された，実力派のチューナーでした。アキュタッチＣＬＬ方式など，操作面の工夫も行われ，使いやすい
１台となっていました。繊細な中高域が特徴的な音も魅力的なものでした。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

◎理想的な同調システムＣＬＬ方式を採用
◎正確にセンターポイントを捕える
　アキュタッチ機構
◎全段にわたり低歪率を追求
　音質重視設計のチューナー基本回路
◎必要十分な付属機能

●ＳＰＥＣＩＦＩＣＡＴＩＯＮＳ●


■ＦＭセクション■

ＩＨＦ実用感度	１．８μＶ（１０．３dBf）
ＳＮ比５０dBクワイティング感度	３．３μＶ（１５．６dBf）
２信号選択度	８０dB（ｎａｒｒｏｗ，±４００ｋＨｚ)，４０dB（ｗｉｄｅ，±４００ｋＨｚ）
振幅変調抑圧度	５５dB
キャプチャ比	０．９dB（ｗｉｄｅ），１．８dB（ｎａｒｒｏｗ）
イメージ比	５５dB
振幅変調抑圧度	６０dB
スプリアス特性	８０dB
ＳＮ比	７５dB
周波数特性	３０Ｈz〜１５，０００Ｈz（±０．５dB）
歪率	０．０７％（ｗｉｄｅ，１ｋＨｚ，ｍｏｎｏ），０．１％（ｗｉｄｅ，１ｋＨｚ，ｓｔｅｒｅｏ）
ステレオ・セパレーション	５０dB（ｗｉｄｅ，１kHz)，４５dB（ｗｉｄｅ，１００Ｈz)
出力電圧	１Ｖ
出力インピーダンス	１００Ω

■ＡＭセクション■

ＩＨＦ実用感度	２５０μＶ/ｍ
イメージ比	５０dB
ＩＦ妨害除去比	４０dB
ＳＮ比	５０dB
歪率	０．６％
出力電圧	０．３Ｖ

■その他■

付属装置	ＣＬＬ回路，チューニングロック機構 ＩＦ帯域幅切替，センターインジケーター ＦＭミューティング・スイッチ，ＦＭミューティング・レベル・コントロール
電源電圧	ＡＣ１００Ｖ（５０Ｈｚ/６０Ｈｚ）
消費電力	８Ｗ
外形寸法	４６６Ｗ×１２０Ｈ×３５０Ｄmm
重量	７ｋｇ