TC-K555ESXの写真
SONY TC-K555ESX
3HEAD CASSETTE DECK ¥105,000

1986年にソニーが発売したカセットデッキ。ソニーの音質重視型カセットデッキ「ESシリーズ」としては,初めて
テープ走行部をセンターに配置したモデルで,これ以降のソニー「ESシリーズ」カセットデッキの原型となったと
もいえる転機となった1台でした。

TC-K555ESXの最大の特徴は,上記したようにソニーのカセットデッキ初のメカニズム部中央配置「ミッドシッ
プドライブ・システム」でした。中央にメカデッキ部と電源部を配置し,両サイドにオーディオ回路と操作コントロー
ル系を分離して配置した構成になっていました。
総重量に占める割合の大きいメカデッキ部と電源部を中央に配置することで,4つの脚部にほぼ均等に重量がか
かる良好な重量バランスが得られていました。しかもシャーシ内部は,メカデッキ部と電源部を取り付けたU字型
のインナーシャーシでほぼ3等分する構造となっており,トータルな剛性も向上し,各回路のプリント基板の取付ス
パンも短くなるなど,不要振動の影響を受けにくくなっていました。

TC-K555ESXの内部構造

ヘッド部はソニー独自の独立縣架3ヘッド方式でした。この方式は,コンビネーション3ヘッドと独立3ヘッドの中間
のような構造で,通常,録音ヘッドと再生ヘッドが一体化されているコンビネーション3ヘッドに対して,録音ヘッド
と再生ヘッドを分離構造とし,なおかつ全体の形はコンビネーション型のようなもので,これにより。録音ヘッド再生
ヘッドそれぞれ独立してアジマスの精度が高められ,また,テープのヘッドタッチが安定して得られるという巧妙な
構造でした。ヘッドの材質には当時最先端の非結晶構造のアモルファス磁性合金を採用し,レーザー加工技術に
より精密な加工が施され,「レーザーアモルファスヘッド」と称していました。TC-K555ESXでは,さらにコイル巻
線にLC-OFCを使用して性能を高めていました。
電源部はK777ESUの設計思想を受け継ぎ,大型の電源トランスを搭載していました。信号系の線材に,LC-OFC
を多用するなどパーツの面からも厳選されていました。

テープ走行系は,「ESシリーズ」伝統のクローズドループ・デュアルキャプスタンで,安定した走行とヘッドタッチを
得ていました。キャプスタン駆動用モーターは,ソニー自慢のBSLグリーンモーターでした。これは,B(ブラシ・アン
ド)S(スロット)L(レス)モーターの名の通り,トルクムラの原因となるスロットとブラシを取り去ったシンプルな構造
のモーターで,優れた耐久性も誇りました。クォーツロック制御のダイレクトドライブにより,ワウ・フラッター0.025%
(WRMS)の優れた回転精度を実現していました。また,カセットローディング時にテープのたるみをとるたるみ防止
機能が搭載されていました。

ノイズリダクションとしてドルビーNR BタイプとCタイプを搭載していました。ドルビーNR・ICには,TC-K777ESU
用に開発したICを使用し,ノイズリダクションON時の音質を自然なものとしていました。
テープセレクターは,TYPET/TYPEU/TYPEW対応のオートテープセレクターとなっていました。TYPEV(Fe-Cr)
への対応はされていませんでした。また,テープ毎の特性差に対応するために,±20%の範囲で録音バイアス値を
微調整できるバイアスキャリブレーション機能とテープ感度による録音・再生のレベル差をなくす録音レベルキャリブレ
ーション機能が装備されていました。さらに,録音イコライザーの高域特性をLOW/NORMAL/HIGHに切り替えられ
る録音イコライザー切替スイッチも装備されていました。
レベルメーターは,−40dB〜+8dBのFL表示のピークメーターで,ピークホールドとリアルタイムのピーク値を同時表
示するようになっていました。テープカウンターは減算機能付きのリニアタイムカウンターが搭載されていました。
また,ワイヤレスリモコンRM-99が付属し,主要なテープ走行の操作がリモコンで可能となっていました。

以上のように,TC-K555ESXは,センターメカを採用した新しい世代の「ESシリーズ」カセットデッキの最上級機とし
て発売された実力機でした。これ以降777型番のものは発売されず,最上級機としてTC-K555ESR(1988年)
TC-K555ESG(1989年),TC-K555ESL(1990年),TC-K555ESJ(1992年)と続いていき,DAT時代に
おいてもアナログカセットデッキの系譜を作っていきました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


デジタル時代の新しいリファレンス
としての理想像を求めて,
音質向上の可能性を
根本から問い直し,
新たな発想でアプローチした
次世代のESデッキです。
◎新たな発想で,カセットデッキの理想型を追求した
 ミッドシップドライブ・システム。
 ■理想的なウェイトバランスと剛体構造の追求
 ■相互干渉を絶つレイアウトおよびノンループ・サーキット
 ■シンプル&ストレート伝送に徹したオーディオ回路
◎LC-OFC巻線レーザーアモルファスヘッドによる
 ソニー独自の独立懸架3ヘッド方式。
◎さらにメカニズム精度を高めたクォーツロックD.D.&
 クローズドループ・デュアルキャプスタン方式。
◎新開発ドルビーIC,大容量電源トランスなど,
 厳選した高音質パーツを大量投入。
◎テープの能力をフルに引き出せる
 バイアスおよび録音レベル・キャリブレーション。
◎3ポジションの録音イコライザー切替スイッチ。
 
 
 
●主な仕様●

 
ヘッド 消去1,録音1,再生1
モーター リニアトルクBSLモーター1,DCモーター1
SN比   56dB(ドルビーOFF,ピークレベル,METAL-Sカセット) 
73dB(ドルビーNR・Cタイプ,ピークレベル,METAL-Sカセット)
周波数特性(EIAJ) 20〜20,000Hz±3dB(METAL-Sカセット)
周波数範囲(EIAJ) 15〜22,000Hz(METAL-Sカセット)
ワウ・フラッター ±0.04%W・Peak(EIAJ) 
0.025%(WRMS)
ひずみ率 0.5%(METAL-Sカセット)
大きさ 430(幅)×125(高さ)×350(奥行)mm
重さ 8.9kg
消費電力 27W
※本ページに掲載したTC-K555ESXの写真,仕様表等は1987年
 11月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用
 等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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