TC-K666ESの写真
SONY TC-K666ES
コンポスタイル・ステレオ・カセットデッキ ¥120,000

ソニーが1982年に発売した3ヘッドカセットデッキ。上級機のTC-K777ESと弟機のTC-K555ESに挟まれた中間の
モデルという感じでしたが,3モーターメカニズムを搭載するなど,最上級機TC-K777ESとは,弟機として似ていながら
も,また違った魅力と特徴を持った実力機でした。

ヘッド部は,ソニー独自の「独立縣架3ヘッド方式」で,全体としてはコンビネーションヘッドと同一の大きさとヘッドタッチを
実現しながら,録音ヘッドと再生ヘッドが独立していて,独立してアジマスの微調整が行われるもので,コンビネーション3
ヘッドと独立3ヘッドの両者の特性を併せ持つ巧妙な方式でした。ソニーも後のモデルではこの方式をやめ,通常のコンビ
ネーションヘッドとなりましたが,この独立縣架3ヘッドは,独自の魅力を持ったヘッドだったように思います。録音ヘッド・再
生ヘッドの材質は,アモルファス合金でした。アモルファス合金は,本来結晶構造を持つ金属素材を急速に凝固させること
により非結晶構造としたもので,アモルファス状にすることで,素材の持つ磁気特性が各段に改善されたということでした。
TC-K666ESに搭載された「レーザーアモルファスヘッド」は,このアモルファス磁性合金を磁気ヘッドのコアに使用し,最
新鋭のレーザー加工技術を応用して耐摩耗性に優れた固いアモルファス素材を加工したもので,優れたSN比と周波数特
性を持った高性能ヘッドでした。

独立縣架3ヘッド3モーターメカニズム

テープ走行系は,クローズドループデュアルキャプスタン方式を採用し,さらに,テープの巻き始めと巻き終わりで供給リール
に側に巻かれたテープの量の変化による録音・再生時のバックテンションの変化で巻き終わりでのテープ速度のずれを防ぐ
ため,供給側リールの回転数を検出してマイクロプロセッサー処理で最適なバックテンションを得る電子式バックテンションを
搭載していました。

モーターには,トルクムラの原因となるスロットもブラシも取り去った構造を持つソニー自慢のリニアBSLモーター(BSLグリー
ンモーター)を搭載し,これをクォーツロックサーボでコントロールすることにより,高精度の回転特性を実現していました。TC
-K666ESでは,これを利用してキャプスタンの駆動にダイレクトドライブ方式を採用し,しかも,巻き取りリールと供給リール
の駆動にもそれぞれ専用のBSLグリーンモーターを配した本格的な3モーターメカニズムとして,メカニズム全体の動作精度
と耐久性を高めていました。このリニアBSLモーターを3個搭載した,上級機のTC-K777ESをも超える贅沢な3モーターメ
カニズムを,構造的にも材質的にも防振設計を施した亜鉛合金ダイキャストメカブロックに搭載していました。録音・再生時の
モーター回転数を,キャプスタン用毎秒約6回転,リール用を毎秒0.3〜0.7回転と低く抑え,高剛性なメカニズムとあいま
って低振動を実現していました。
また,このTC-K666ES専用の3モーターメカニズムは,C-60で35秒という高速早送り/巻戻しを実現していました。モータ
ーコントロールに専用のマイクロプロセッサーを配し,きめ細かく制御して,テープの巻き始め,巻き終わりに対する保護対策を
図った高速2段階早送り/巻戻しとなっていました。ポーズボタンと同時に押すことでテープの微少送りも可能となっていました。

録音・再生アンプ部は,全段L・Rツインモノ構成とし,信号の流れに沿った回路レイアウトでまとめたDCアンプ構成となってい
ました。そして,再生ヘッドとアンプの間のカップリングコンデンサーを追放したダイレクトカップリング方式をとり,さらに,デュア
ルFET差動2段SEPP回路とし,厳選したパーツ構成による強力なアンプ部としていました。ノイズリダクションは,ドルビーB
タイプとCタイプを搭載し,Lch,Rchそれぞれ専用のICを開発した「シンメトリープロセスドルビーIC」により,シンメトリカル(左
右対称)な回路構成をとることで,L・Rツインモノ構成のアンプ部と合わせ,音の定位を向上させていました。

機能的には,FL表示管によるピークプログラムメーター,減算機能付きのリニア電子カウンター,バイアス・録音レベルマニュア
ルキャリブレーション,オートテープモニター(フェザータッチのテープモニタースイッチ兼録音時・再生時モニター出力テープ/ソ
ース自動切換)などを搭載し,音質重視型の3ヘッドデッキとして実質的なものを備えていました。TYPET,TYPEU,TYPEV
TYPEWまで,4ポジションのテープセレクターを持ち,ソニー自慢のDUADカセット(Fe-Crカセット)も使えました。オーソドックス
でシンプルながら使いやすいデッキでした。

以上のように,TC-K666ESは,オーソドックスながら優れた性能を持つ3ヘッドデッキとして,最上級機とはまた違った魅力を
持った1台でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 

レーザーアモルファス独立3ヘッド,
クォーツD.D.など音質本位設計の
ESシリーズ・中核デッキです。
 


●主な仕様●


ヘッド 消去1,録音1,再生1
モーター リニアBSLモーター×3
SN比   56dB(EIAJ) 
60dB(ドルビーOFF,ピークレベル,METALLICカセット) 
73dB(ドルビーNR・Cタイプ)
周波数特性(EIAJ) 25〜19,000Hz±3dB(METALLICカセット)
周波数範囲(EIAJ) 20〜20,000Hz(METALLICカセット)
ワウ・フラッター ±0.04%W・Peak(EIAJ) 
0.025%(WRMS)
ひずみ率 0.5%(DUADカセット)
大きさ 430(幅)×105(高さ)×280(奥行)mm
重さ 6.5kg
消費電力 38W
※本ページに掲載したTC−K666ESの写真,仕様表等は1982年11月のSONYのカタ
 ログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作権があります。したがって,これらの写
 真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。 
    
 
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