ソニーが１９８１年に発売した同社のカセットデッキのトップモデルでした。ソニーが１９６１年に発売したオープンリール
デッキの名機ＴＣ－７７７の型番を受け継ぐカセットデッキＴＣ－Ｋ７７７（１９８０年発売）の２世代目モデルで，本機から
ドルビーＣタイプが搭載され，各部が改良された完成度の高いカセットデッキでした。ヘッド部はソニー独自の独立縣架３ヘッド方式でした。この方式は，コンビネーション３ヘッドと独立３ヘッドの中間のよ
うな構造で，通常，録音ヘッドと再生ヘッドが一体化されているコンビネーション３ヘッドに対して，録音ヘッドと再生ヘ
ッドを分離構造とし，なおかつ全体の形はコンビネーション型のようなもので，これにより。録音ヘッド再生ヘッドそれぞ
れ独立してアジマスの精度が高められ，また，テープのヘッドタッチが安定して得られるという巧妙な構造でした。ヘッ
ドの材質には当時最先端の非結晶構造のアモルファス磁性合金を採用し，レーザー加工技術により精密な加工が施
され，「レーザーアモルファスヘッド」と称していました。
テープ走行系は，クローズドループ・デュアルキャプスタンで，安定した走行とヘッドタッチを得ていました。キャプスタン
駆動用モーターは，ソニー自慢のＢＳＬグリーンモーターでした。これは，Ｂ（ブラシ・アンド）Ｓ（スロット）Ｌ（レス）モータ
ーの名の通り，トルクムラの原因となるスロットとブラシを取り去ったシンプルな構造のモーターで優れた耐久性も誇り
ました。クォーツロック制御のダイレクトドライブにより，ワウ・フラッター０．０２０％（ＷＲＭＳ）の優れた回転精度を実現
しました。オーディオ回路も全段ＬＲツインモノ構造のＤＣアンプとし，デュアルＦＥＴ差動２段ＳＥＰＰ回路として，パーツも厳選され
しっかりしたアンプ系を構成していました。再生アンプとヘッドは直結され，ここからもコンデンサーを排除していました。
アンプ部を支える電源部は，変形トロイダルコアによるカセットデッキとしては大型のトランスを搭載していました。シャーシ部は，振動を抑制する堅牢なもので磁気歪みを防ぐために銅メッキが施された，高級アンプ並の構造でした。
さらに，アルミニウム製振動分散抑圧メカブロック，録音・再生ヘッドを支える堅牢なダイキャストベースなど，各部とも
抜かりのないしっかりした構造を誇りました。機能的には，リニアタイムテープカウンター，バイアス，録音再生レベルのマニュアル調整などオーソドックスながら実
質的なものを備えていまいた。また，変わったところでは，ＴＹＰＥⅠ，ＴＹＰＥⅡ，ＴＹＰＥⅢ，ＴＹＰＥⅣまで，４ポジション
のテープセレクターを持ち，ソニー自慢のＤＵＡＤカセット（Ｆｅ-Crカセット）も使えました。オーソドックスでシンプルなが
ら使いやすいデッキでした。このように，ＴＣ－Ｋ７７７ＥＳは，きわめてオーソドックスながら安定した高性能を誇る使いやすいカセットデッキとして
この後（１９８５年）ＴＣ－Ｋ７７７ＥＳⅡとなりロングランを誇りました。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
