XK-009の写真
EXCELIA XK−009
STEREO CASSETTE DECK ¥99,800(ワイヤレスリモコン付属)
アイワが1988年に発売した高級カセットデッキ。当時アイワはEXCELIA(エクセリア)ブランドを展開し,音質重視の
高性能なカセットデッキやDATを発売していました。このXK−009は,当時のアイワの最高級機で,ユニークな振動対
策をはじめ,録再性能を追求した製品で,当時DATが話題になり,録音機器のデジタル化の中で,やや低迷しつつあっ
たカセットデッキの分野に登場した久々の力作で話題になりました。                              

XK−009の最大の特徴は,AMTS(Anti Modulation Tape Stabilizer)と称するテープスタビライザーにありました。
これは,音質を汚す原因と一つであるカセットハーフの振動を抑える機能で,非磁性体のアルミ板と無反発性の特殊ゴム
の2層構造のカセットボックスとし,プランジャーを利用して約1kgの力でカセットハーフを挟みつけるような構造になってお
り,カセットハーフを面でスタビライズするユニークな機構でした。これにより,変調ノイズの低減などの効果があるとされて
いましたが,心理的な安心感もあたえる機能でした。                                        

AMTS
テープ駆動系はFF/RWD用に1基,キャプスタン用に1基,録再時の巻取り用に1基のモーターを専用に搭載した3モ
ーター構成になっていました。テープ巻取り専用モーターは,信頼性を高めるため,従来のアイドラ−駆動に代えベルトド
ライブ駆動とし,FF/RWDを共用させる方式では困難だったゴギングからも解放され,ダイナミックバランスが正確に調
整された精密フライホイールと相まって,ワウ・フラッターは0.018%とアナログカセットデッキでは恐らく最も小さい値を示
していました。この値は恐らく現在でも破られていないはずです。走行系はクローズドループ・デュアルキャプスタンが採用
され,キャプスタンは2基のキャプスタンのシャフト径を変えて共振周波数の重なりを防いだ周波数分離型デュアル・キャプ
タンとしていました。また,テイクアップ側のキャプスタンに独自のマイクロ・グレイン・プロセッシング処理を行い,キャプスタ
ン表面に微細な粒状加工を行い,テープスリップを防止するFF−8以来のアイワ伝統の技術も採用していました。     

ヘッド系は,3ヘッド構成で,録音・再生ヘッドはアモルファスヘッドを搭載し,消去ヘッドは保磁力が非常に低く,自発磁化
作用の少ないアイワ独自のセンダスト消去ヘッドを搭載していました。捲線部には,純度99.997%というPC−OCCを採
用し,ヘッドは亜鉛ダイキャスト製の重量級(30g)のヘッドブロックに精密に固定され,ヘッドの振動による変調ノイズを抑
えていました。さらに,ヘッドブロックには,録音ヘッドワイヤーから再生ヘッドワイヤーへのバイアス漏れをカットするバイア
スシールドというシールド板がつけられた独自の構造になっていました。                             

電源部は,ロジック系と信号系にそれぞれ独立した電源トランスを搭載した2トランス構成で,ロジック系のデジタル信号と
アナログ信号を完全に分離した設計になっていました。トランス内部をエポキシ樹脂で固めて振動を抑え,さらに,トランス
を本体外部へ出して配置し,本体への振動,磁気等の悪影響を防ぐ設計になっていました。                 

ノイズリダクションは,ドルビーB,Cに加えてdbxを搭載していました。dbx使用時には,SN比95dB以上ダイナミックレン
ジ110dBと圧倒的な数値を誇りました。また,ドルビーにも高域信号の量に合わせて録音時バイアス量を最適状態に可
変させるドルビーHXプロを搭載し,優れた高域特性を実現していました。ちなみに,ドルビーHXプロは,アイワが1983年
に国産としてカセットデッキに初搭載したもので,それ以降国産デッキに広まりました。                    

機能的には,音質重視デッキらしくシンプルでしたが,音に関わる機能として,録音レベル,バイアスのマニュアル調整機
能を搭載し,また,録音イコライザーもLOW,NORMAL,HIGHの3段階に切り換えられるようになっていて,テープの特
性を引き出せるマニア向けの使いこなしがいのある設計でした。                                  

このように,XK−009は,DAT,MDが台頭してきた時代,アナログデッキの最後の華ともいえる力作でした。ここで開発
された技術は,D/Aコンバーター内蔵の高級デッキXK−S9000に生かされましたが,アイワが音質重視の高級デッキ
を手がけたのはそこまででした。カセットデッキが主役から退いていった時代の流れを感じたものでした。しかし,このデッ
キの聴かせてくれたしっかりした音は印象に残っています。                                    
 
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

 


A・M・T・S搭載・制振3ヘッドデッキ。
めざしたものはマスターの数値。   
◎ワウ・フラッター0.018%を実現。
  3モーター・クローズドループ・キャプスタンメカ。
◎音の透明度,音像定位の進化へ。
  PC-OCC捲線3ヘッド。
◎デジタルソースの再現へ。
  dbxまでをも含めたフルノイズリダクション。     
◎高域のダイナミックレンジ,周波数特性を著しく改善。
 ’83年にアイワが日本で初搭載のドルビーHXプロ。
◎高精度再生へ,差動入力DC構成。
  再生イコライザアンプ。                 
◎高精度録音のために。
  マニュアルキャリブレーション。
◎カウント精度もデジタルの時代へ。
  リニア・カウンター。                   

 

●主な仕様●


ヘッド (再生)PC-OCC巻線ピュア・アモルファスヘッド 
(録音)PC-OCC巻線ピュア・アモルファスヘッド 
(消去)ダブルギャップセンダストヘッド
モーター システムサーボモーター (キャプスタン専用)×1 
DCモーター (再生/録音)×1
DCモーター (FF/RWD専用)×1
ワウ・フラッター 0.018%(WRMS)
±0.035%(W・PEAK)
周波数特性 メタルテープ:(−20dB録音)20〜22kHz±3dB
        (0dB録音)   20〜18kHz±3dB
CrOテープ:(−20dB録音)20〜21kHz±3dB
        (0dB録音)   20〜15kHz±3dB 
LHテープ  :(−20dB録音)20〜20kHz±3dB
        (0dB録音)   20〜12kHz±3dB
SN比 95dB(dbx-NR ON,メタルテープピークレベル)
75dB(Dolby C NR ON,メタルテープピークレベル)
寸法 469W×136H×437.2Dmm(サイドウッド含む)
重量 10.2kg
 ※本ページに掲載したXK−009の写真,仕様表等は1988年6月のAIWAのカタログ
 より抜粋したもので,アイワ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等
 を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。     
    

 
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