Victor XL-V501
COMPACT DISC PLAYER ¥59,800
1986年に,ビクターが発売したCDプレーヤー。ビクターはCDプレーヤーの分野では,当初,
他社の機種のOEMからスタートするなど,あまりブランドイメージが強くはありませんでしたが,
1986年に,筐体構造をはじめ,各部にしっかりと技術を物量を投入したXL-V1100を発売
し,一気に評価を高めました。その弟機として,当時の最新の技術を投入して大きくコストパ
フォーマンスを高めて発売されたのがXL-V501でした。

D/Aコンバーターには,当時最新のバーブラウン製PCM54HPを搭載していました。すぐれた
性能を持つラダー抵抗型DACで,当時多くのCDプレーヤーに搭載されていました。上級機と
異なり,シングルDAC構成であるため,スイッチングによりL・Rに信号を振り分けていました。
D/Aコンバーターの前段にはデジタルフィルター・NPCのSM5806Pが搭載されていました。
35次・2倍のFIR型フィルターで,サンプリング周波数を88.2kHzとすることで,高調波ノイズ
を帯域外にシフトし,後段のローパスフィルターへの負担を小さくしていました。



XL-V501は,ビクターでは初めて光伝送・オプティカリンク方式を採用していました。デジタル部
とオーディオ部を電気的に分離し,デジタルの音声データ信号を光に変換して,フォトカプラーを
通じてオーディ部へ送る方式でした。これにより,伝送波形の乱れが低減されていました。さらに
電源部も,電源トランスはアナログ部とデジタル部は別巻線で,電源回路もオーディオ部を他か
ら独立させ,デジタルノイズが伝わるのを防いでいました。



ピックアップ部には,自社開発のハイプレシジョン3ビームピックアップ「OPTIMA-2」を搭載し
ていました。可動部の軽量化を徹底的に追求したことが特徴のピックアップで,素早い動きに
より応答性を高め,軽く動くことで少ないサーボ電流で動き,サーボノイズを低減していました。
さらに,ディスクのキズによる異常信号を打ち消してしまう独自のハイバランスYサーボともあ
いまって,高S/Nな俊速応答,安定したトレースを実現していました。



ピックアップ部を含むメカニズム部は,制振材メカベースに支えられ,さらに大型インシュレー
ターによってフローティングマウントされたIS(Independennt Suspension)メカニズムが採
用されていました。柔構造と剛構造の組み合わせにより,外来振動要素を排除していました。
そして,格子状のリブ構造で無共振性を高めたラジアルベースにより,オーディオ基板側のシャ
ーシを強化し,低重心,ウェイトバランスを実現していました。これによって,全体の振動モード
が整い,4本のフットにかかる荷重が平均化されて外来振動の影響を受けにくく安定した再生
が可能となっていました。



XL-V501は,CDプレーヤーとして同クラスの中で最も多機能な部類の1台でした。32曲プロ
グラム選曲,ランダムプレイ,約15秒ずつのイントロスキャン,イントロ当てクイズにも使えるラ
ンダムイントロプレイ,5モードのリピート機能(全曲/1曲/プログラム/ランダム/A-B)などが
搭載されていました。また,特徴的な機能として,テープ等への録音に便利なコンピューターエ
ディティング機能がありました。10キーで収録可能時間を指定すると,自動的に1曲目から収
録可能な曲までがプログラムされる機能でした。テープ等の時間が少し余るときには,残りの
曲で時間的に収まる曲がフラッシュし,そこで好きな曲番を指定できるようになっていました。

出力端子は,アナログは固定と可変の2系統,金メッキ端子が装備されていました。 アナログ
の可変出力には,モーター駆動できるボリュームが装備され,リモコンでの操作が可能となっ
ていました。デジタル出力端子は装備されていませんでした。

以上のように,XL-V501は,ビクターが中級価格帯に投入したコストパフォーマンスの高い
CDプレーヤーでした。当時,各社から実力あるモデルが投入され始め,競争が激化していた
598クラスに投入されただけあり,当時の最新のディバイスやしっかりした作り,多機能に加
え,ビクターらしい明るくバランスの取れた音も魅力あるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



X光年目の音

まっすぐに伸びてくる
これがデジタル新世紀の音,
光伝送オプティカリンク。

◎光伝送・オプティカリンク方式で
 D/A分離,デジタルノイズをカット。
◎D/A変換もいちだんとピュア,
 遮断特性のすぐれた新開発
 高次デジタルフィルター。
◎軽い光学ピックアップが
 サーボノイズを少なくした。
◎ここまで徹して音質重視,
 高剛性・低重心ラジアルベースと
 フローティングISメカ。
◎LEDの点滅で動作が分かる
 リモコン電動ボリューム
 快適操作と高音質。
◎断然使いやすい多彩な機能を満載。
 たとえば録音テープを余らせない
 コンピューターエディティング。
◎らくらく選曲のイージー&
 ダイレクトオペレーション。




●XL-V501の仕様●

周波数特性 2~20,000Hz
全高調波歪率(1kHz・EIAJ) 0.0035%
ダイナミックレンジ(1kHz・EIAJ) 97dB
SN比(デジタル・ゼロ時・EIAJ) 100dB
ワウ・フラッター 測定限界以下
出力レベル(フル・スケール) 2.0Vrms(FIX)
D/A変換 16ビット直線
操作機能 32曲ランダムプログラム,曲番およびインデックス頭出し
曲番およびインデックス・スキップ,マニュアルサーチ(リモコン2速度)
リピート(全曲,1曲,プログラム,ランダム,A-B間),ポーズ,
ランダムプレイ,イントロスキャン,ランダムイントロプレイ
エディティング,タイマープレイ
リモコン機能 トレイのOPEN/CLOSE,音量調整(可変出力およびヘッドホン出力)
フェード他
ディスプレイ 8ケタ大型FLによるトラックNo.,時間,インデックス,プログラム等の表示
20曲プログラムチャート,エンファシス検出表示
ディスク・ローディング センターホールド方式による水平ローディング
その他 出力端子:金メッキ(FIX,VARI2系統)
ボリューム付きヘッドホン端子(リモコン対応),シンクロ端子
GMD(グランド)端子,リモコン送信機RM-SX701付属
電源 AC100V(50/60Hz)
消費電力 12W
外形寸法 435W×100H×300Dmm
重量(本体) 5.5kg

※本ページに掲載したXL-V501の写真・仕様表等は
 1987年2月のVictorのカタログより抜粋したもので,
 日本ビクター株式会社に著作権があります。したがって
 これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
 で禁じられていますので,ご注意ください。

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