C-2の写真
YAMAHA C-2
NATURAL SOUND PRE-AMPLIFIER ¥150,000

1976年に,ヤマハが発売したプリアンプ。ヤマハは,前年の1975年に,超多機能の高級コントロールアンプ
C-1を発売し,高い評価を得ていましたが,C-2は,それとは対極の薄型のシンプルなデザインのプリアンプと
して発売されました。C-2が発売された1976年頃,当時アメリカのマークレビンソンから発売され,高い評価と
人気を得ていた薄型のプリアンプJC-2の影響を受けてか,各社から薄型の筐体を持つプリアンプ,コントロー
ルアンプが次々に発売されていきました。C-2は,そうした中の元祖的存在でした。

基本的な回路構成は,イコライザアンプ,トーンコントロールアンプ,MCカートリッジ用ヘッドアンプというシンプ
ルな構成になっており,コントロールアンプというよりプリアンプとして,性能を高度に追求し,アクセサリー回路
を必要最小限に抑えるという設計になっていました。実際,特性的には,歪率,SN比,過渡特性,位相特性,
クロストークなどすべてにおいて,マークレビンソンJC-2を超えようとしたといわれています。(C-2の型番にも
JC-2への意識がうかがえるといえば,うがちすぎでしょうか?)

イコライザアンプは,ヤマハオリジナルのスーパーローノイズペアFETを使用したカスコ−ドブートストラップカレ
ントミラー差動入力→ダーリントン接続定電流負荷エミッタ接地増幅→ピュアコンプリメンタリーパラレルプッシュ
プルA級出力段というパワーアンプにも似た回路構成となっていました。
初段の差動増幅に使用されたスーパーローノイズFETは,ヤマハがC-2用に開発したもので,(2SK-100と同
等品と考えられます。)雑音が非常に少なく,電気的特性が良く揃ったものを,1つのパッケージに封入した構造
となっていました。このスーパーローノイズFETの採用により,C-2の入力換算雑音は−139dB/V(IHF-Aネット
ワーク)と,当時の多くのイコライザーアンプより10dBほども改善されていました。
この差動増幅段は,カレントミラーカスコードブートストラップ付きの定電流バイアスで作動させ,入力の直流カット
コンデンサーをなくすることでノイズや低域の安定度の悪化も抑えられ,カスコードブートストラップ回路の採用に
より,信号源インピーダンスの変化による歪率の劣化も抑えられていました。
2段目は,ダーリントン接続の定電流負荷のエミッタ接地で,初段の負担を軽くし,かつゲインを十分に確保して
いました。出力段は,高域限界周波数(fTが約100MHz)が高く,コンプリメンタリー特性のよく揃ったトランジス
ターを2組使用し,ピュアコンA級パラレルプッシュプルで使用し,出力インピーダンスを下げ(660Ω),負荷安
定度の向上が図られ,かつ大きな出力電圧が低歪率で確保されていました。
このような構成のイコライザアンプはすぐれた裸特性が実現し,安定なNFを十分にかけることで,全帯域にわた
って0.003%以下(PHONO→REC OUT:20Hz〜20kHz)の低歪率が確保されていました。
また,RIAA素子には,高品位のスチロールコンデンサと金属皮膜抵抗が使用され,RIAA偏差は,±0.2dB以
内と高い精度が確保されていました。

スーパーローノイズIC

MCカートリッジ用ヘッドアンプには,ヤマハオリジナルのスーパーローノイズICが使用され,SN比70dB以上(定
格50μV:IHF Aネットワーク)と,当時のMM用のPHONO端子に近い値が実現されていました。これは,入力
換算雑音で−147dB/Vという値で,当時のアンプの中でも最高に近いものでした。C-2のヘッドアンプは,SN比
のみでなく,周波数特性も30Hz〜15kHz±0.2dB(PRE OUT)とすぐれた特性が確保され,歪率も0.02%以
下(20Hz〜20kHz)と低く抑えられていました。
また,PHONO入力は3系統装備され,PHONO-3がMCカートリッジ専用としてMCカートリッジ用ヘッドアンプに
直結され,できる限りムダな接点を省き,シンプルな回路構成にしようとする設計がうかがえました。(C-2aでは
PHONO端子が2系統になり,端子に関係なくMCカートリッジが使える,通常のスイッチ切換式になっていきまし
た。)

C-2のフロントパネル,リアパネル

C-2のトーンコントロールのユニットアンプの回路構成は,イコライザアンプとほぼ同様という豪華なものでNF型
のトーンコントロール回路になっていました。
BASS,TREBLEともに20ステップ,21ポジションの高精度アッテネーターが使用され,0,±0.5,±1.0,
±1.5,±2.0,±3.0,±4.0,±5.0,±6.0,±8.0,±10dBの微細なコントロールが可能となってい
ました。0のポジションでは,時定数を持つ素子が完全に回路から分離され,トーンアンプはフラットバッファアン
プとなり,TONE DEFEAT状態になるようになっていました。
トーンコントロールアンプの初段には,イコライザアンプ同様にカスコードブートストラップ回路が採用され,実使
用時に,前段のボリュームを絞って信号源インピーダンスが変化した状態でも,歪率の劣化が起きないように
なっていました。
C-2は,上述のように,基本的にシンプルなプリアンプでしたが,機能として,さらに,−20dBのオーディオミュー
ティング,15Hz(−3dB)で遮断特性−12dB/octのサブソニックフィルターなどが装備されていました。


高精度4連ボリューム

実使用時のSN比等に影響の大きいボリュームには,片チャンネルあたり2連の高精度特殊4連ボリュームが
搭載されていました。この2連のボリュームをトーンアンプの入力側と出力側に入れ,−∞〜−20dBまでは,ア
ンプの出力側,−20dB〜0dBまでは,アンプの入力側で調整するという方式になっており,ボリュームを絞り切
った場合に残留ノイズが完全に0になるようになっていました。さらに,通常の連続可変抵抗ながら,アッテネー
ター式にほぼ近い高精度が実現され,表示値からの誤差,ギャングエラーも非常に少なく,アッテネーター式で
はないため,微細な音量調整も可能となっていました。

C-2は,実使用時において,性能を発揮できるように,さらに対策が施されていました。イコライザアンプ部には
2重シールドが施され,リレーによるミューティング回路をPRE OUTだけでなくREC OUTにも挿入し,コンプリ
メンタリーA級パラレルプッシュプルの出力段によって出力インピーダンスがPRE OUTで400Ω,REC OUT
で660Ωと低く,各種関連機器を接続しても諸特性の劣化が起きにくいようになっていました。そして,高い電源
電圧とあいまって定格775mV(0dBm)に対して10V(10kΩ負荷)の最大出力が得られ,600Ωの負荷条件
下でも使用することができるようになっていました。

以上のように,C-2は,薄型でシンプルな回路に,しっかりと物量と技術を投入したヤマハの力作で,当時,海外
の製品にも負けない性能を持った,すぐれたプリアンプでした。アナログ系の実力は,現在でも相当に高いものが
あります。歴代のC-2の中では,この初代C-2が設計的にも最も先鋭的な部分があり,音の方も最もクリアで鋭
い音をもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ヤマハFETによる,85dB以上という驚異的な高S/N設計
20〜20kHzで0.003%以下の低歪率特性。MM型なみの
高S/NでMC型が聞けるヘッドアンプ。音あくまで精妙




●C-2の規格●

入力感度/インピーダンス PHONO 1,2   2mV/47kΩ
PHONO 3(MC)  50μV/10Ω       
TUNER,AUX   120mV/47kΩ
TAPE PB A,B 120mV/47kΩ
最大許容入力 PHONO 1,2   30mV(20Hz)
            300mV(1kHz)
           3000mV( 20kHz)
PHONO 3    1.25mV(20Hz)
             7.5mV(1kHz)
              20mV( 20kHz)
出力レベル/インピーダンス PRE OUT 1,2 775mV/400Ω
REC OUT A,B 120mV/660Ω
周波数特性 PHONO 1,2,3(RIAA偏差) 30Hz〜15kHz0±0.2dB(RIAA)
TUNER,AUX             5Hz〜100kHz0 +0,−1.5dB
TAPE A,B              5Hz〜100kHz0 +0,−1.5dB
SN比(IHF-Aネットワーク) PHONO 1,2   2mV定格入力時85dB(入力ショート)
               10mV入力時99dB(入力ショート)
PHONO 3(MC) 50μV定格入力時70dB(入力50Ωショート)
TUNER・AUX               100dB(入力ショート)
残留ノイズ −∞dB
歪率 PHONO 1,
 VR Maxにて  7.75V出力時  0.003%以下
 VR −30dBにて775mV出力時   0.003%以下
PHONO 3(MC)
  VR Maxにて  7.75V出力時  0.02%以下
  VR −30dBにて775mV出力時   0.05%以下
TUNER,AUX,TAPE A,B
 VR Maxにて  7.75V出力時  0.003%以下
 VR −30dBにて775mV出力時   0.003%以下 
トーンコントロール特性 BASS(fto=350Hz),TREBLE(fto=3.5kHz)
 0,±0.5,±1.0,±1.5,±2.0,±3.0,±4.0
 ±5.0,±6.0,±8.0,±10dB
 (BASS at 20Hz,TREBLE at 20kHz)
サブソニックフィルタ 15Hz 12dB/oct
オーディオミューティング −20dB
定格消費電力
100V・50/60Hz,25W
使用半導体
IC:2,FETモジュール:4,FET:2
Tr:61,Zennor Diode:7,Diode:23
外形寸法 435W×72H×320Dmm
重量 7.8kg


※本ページに掲載したC-2の写真,仕様表等は1976年4月のYAMAHA
 のカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。

  
 
 
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