YAMAHA A-950
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥118,000 
1983年に,ヤマハが発売したプリメインアンプ。ヤマハは,トランジスターアンプの時代になってオー
ディオに本格参入したブランドで,プリメインアンプは,当初「CA-」から始まるシリーズを展開していま
したが,1973年のA-1より,「A1桁シリーズ」を展開し,多くの意欲作を発売していきました。そして,
1983年に,「A1桁シリーズ」に代わって新世代のシリーズとなり,第1弾として発売されたのがA-950
とA-750でした。

A-950の最大の特徴は,「クラスAターボ回路」の採用でした。ヤマハは,1973年のCA-1000シリー
や1976年のCA-2000で,パワーアンプ部のA級動作とB級動作をスイッチで切り替える機能を搭
載し,A級動作のアンプのすぐれた性能をプリメインアンプの中で生かし,すぐれた音質を実現して高い
評価を得ました。「クラスAターボ回路」は,これを発展させた形ともいえ,ヤマハのプリメインアンプでは
久しぶりのA級動作アンプの採用でした。A-950では,A級動作とAB級動作の2種類の組み合わせが
スイッチで切り替えられるようになっていました。A-950では,A級動作領域が5Wまでとなっており,音
楽再生時をデータ的に見ると,ノンクリッピングパワー(最大出力)を音楽の最大レベルに合わせると,
平均して約97%程度はA級動作領域であるということで,実際に音楽を聴く音量では,これよりも10~
20dB程度低くなるであろうことから,ほとんどA級動作領域で使われることとなり,通常使用時には,ス
イッチ切替えでA級動作のみで使うモードを選ぶことで,実用上A級アンプとして使うことが可能でした。

そして,ヤマハ自慢の歪低減回路ZDRが搭載されていました。ZDRはZero Distortion Ruleの略で
(訳すと歪みゼロの法則!)ヤマハが開発した歪み低減方式でした。当時の各社のアンプでは,出力の
一部を逆相にして入力側に戻すことで歪みを低減するNFB方式のデメリットが盛んに言われ,各社NFB
以外の歪み低減方式を様々な名称で搭載していました。これらの方式の基本的な考え方は,アンプの入
力信号と出力信号を比較して歪み成分を検出し(入力信号と出力信号を同じレベルで逆相加算すること
で検出できます。)これを別のアンプで増幅して出力側で逆相にして加えることで歪み成分をキャンセル
するというものでした。ヤマハのZDRの場合は,歪み検出回路がブリッジ接続され,リアルタイムで検出
した歪み成分を入力電圧に同じレベルで同相で加えることによりあらゆる歪みをゼロにすることができる
とうたっていました。
このZDRにより,AB級動作時の高いリニアリティを確保していました。低出力時(5W以下)には,A級動
作し,さらに大出力になっていくと自動的にバイアス電流を変えてAB級動作に移行し,ZDRによりA級動
作に匹敵する動作性が得られ,スイッチング歪やクロスオーバー歪も打ち消され,低歪で,120W(8Ω)
140W(6Ω)の大出力までA級に匹敵する特性を実現し,「クラスAターボ」と称していました。さらに,も
ともと特性にすぐれたA級動作領域でもZDRが作用して,よりA級動作の音のリニアリティを高め,「Pure
A Class with ZDR」と称していました。



大出力を支える電源部は,大容量の電源トランスと33,000μf×2+22,000μF×2と大型のケミ
カルコンデンサーによる強力なものが搭載されていました。多分割箔マルチ端子を採用するなど,音質
面でもしっかりと配慮がなされた作りとなっていました。こうした電源部に支えられ,4~8ΩまでEIAJ定
格を保証する低インピーダンス設計となっており,8Ω時定格120Wに対して210W,6Ω時定格140
Wに対して270W,そして4Ω時には,320Wというダイナミックパワーを実現していました。

音質に大きな影響を与えるアース系(Ground)には,新開発のグラウンド・フィクスト回路が搭載されて
いました。ケミコンのセンター電位からトランス,スピーカーへの配線にわずかでも共通インピーダンス
があると,低い周波数の信号出力でケミコンの容量を補うようにトランスからチャージ電流が流れ,音の
フラつき・にごりを招いてしまう恐れがあります。グラウンド・フィクスト・ワンポイントアース回路は,トラン
ス系,放熱板系,大電流系,信号系のアースを完全にセパレート化し,最後にそれぞれを1箇所に放射
状に落とすワンポイントアースとして,共通インピーダンスをゼロにし,電位的にグラウンドにFixされる
極めて安定した回路とすることで,A級動作の音質を損なわないようになっていました。

プリアンプ部には,ヤマハ自慢のDCサーボリアルタイムイコライザが搭載されていました。RIAA素子を
NF型とCR型の2種類使用し,組み合わせて両者の良いところをとるという巧妙なもので,100kHzま
で正確なRIAAカーブを作り,位相ズレによる問題も,CRによるローパスフィルタで相殺され,ナチュラル
で安定度の高い理想に近いイコライジング特性が確保されていました。RIAA偏差は,20Hz~20kHz
で±0.2dB,そして,20Hz~100kHzのワイドレンジにわたって±0.5dBという特性を実現していまし
た。また,ゲインとカートリッジの負荷抵抗を切り換えることによりMCイコライザアンプとしても機能し,
この際にも,RIAA偏差は20Hz~20kHzで±0.3dB,20Hz~100kHzで±0.5dBを実現していま
した。
プリアンプ部の各ユニットアンプの電源には,安定した電流供給を保証するピュアカレントダムを採用し
ていました。これまでのヤマハアンプに搭載されていた,電源系の非直線成分の影響を抑える技術「ピュ
アカレントサーボ」を発展させたもので,電源に直列に入る半導体インダクタンスと大容量ケミコンによっ
て供給電流が数Hzでカットオフされ,電源ラインには直流成分だけが流れ,各ユニットアンプが交流的
には電源から遮断され,同時に,アースラインの電流変化をも抑えて,それぞれが独立した電源を持つ
のと同じ効果を持つという技術でした。

シーリングパネルを用いたデザインのため,一見機能的にはシンプルに見えますが,プリメインアンプと
してしっかりと機能は搭載されていました。15Hz・12dB/octのサブソニックフィルタ,10kHz・12dB/
octのハイフィルタ,フォノロード切替え連続可変式のラウドネスコントロール,BASS,TREBLE独立
のトーンコントロール,ミューティングスイッチ,モードスイッチ,パワーアンプに直結されるメインダイレ
クトスイッチ,などが装備されていました。
入力は,PHONO2系統(PHONO1はMM/MCのフォノセレクタ付き),TUNER,DAD,AUX,TAPE
2系統が装備されていました。TAPEは,入力セレクタと別に録音ソースを選べるレックセレクタも装備
され,相互ダビングも可能となっていました。

以上のように,A-950は,1980年代に入っての新世代のプリメインアンプのシリーズの中核となる
モデルとして,ヤマハが積み上げてきたプリメインアンプの技術を継承しつつより洗練させて搭載して
いました。滑らかで音の粒子の細かい帯域バランスのとれた音をもち,音と機能のバランスのとれた
使いやすいアンプとなっていました。


YAMAHA A-750
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥73,800


A-950の弟機A-750は,クラスAターボ,DCサーボリアルタイムイコライザ,グラウンド・フィクスト回
路等,基本的な回路構成はほぼ同じで,電源部をはじめ,全体にスケールダウンした構成になってお
り,いくつかの機能が簡略化されていましたが,コストパフォーマンスが大きく高められていました。デ
ザイン的には,高さがわずかに低くなり,シーリングパネルではなくなっているため,共通性は強いも
のの,全体のイメージが少し変わっていました。



電源部は,電源ケミコンが22,000μF×2という構成で,出力は,8Ω時定格100Wに対して150
W,6Ω時定格120Wに対して190W,そして4Ω時には,270Wというダイナミックパワーを実現し
ていました。
機能的には,フィルターがサブソニックフィルターのみとなり,PHONO入力が1系統のみとなっていま
した。
音質的には,スケールはやや小さくなるものの,その分,やや軽快でフレッシュなイメージが高まって
いました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



A-950

純A級アンプはここまで完成されてしまった。
Pure A Class with ZDRパワーステージが
生む,空前の量感ピュアネス。革命アンプ登場!

◎オーディオの音というよりも,何かもっと別な音が新しく生
 まれたような印象です。純粋で,力溢れる,いままでにない音。
◎二重の革新,まず①純A級がさらに磨かれて純度を高め,同
 時に②そのピュアネスが壁をつき破って未知の大音量ゾーンへ
◎はかり知れない深いピュアネス,そして限りなく巨大なエネル
 ギー。誰がこんな音を想像できただろうか・・・?
◎スピーカーのローインピーダンス化に,こんなに誠実に応えた
 アンプはかつて存在したろうか。4Ω連続320Wの大パワー。
◎音質の最後の鍵を握るアース系(Ground)の問題。新開発
 グラウンド・フィクスト回路がその問題に一気に終止符を打つ!
◎高度なスペックが音に結実しています。ズラリ並んだ充実の
 フルファンクションで純A級クオリティを存分に楽しめます。



A-750

そのピュアネスが大音量ゾーンへ解放される時,
あなたは未体験の陶酔を全身に感じることだろう。
クラスAターボ搭載。純A級アンプのニューヒーロー。

◎クラスAターボにのって,巨大なピュアネスを体験してみな
 いか。純A級アンプの若きニューヒーロー,いよいよ発進!
◎あの純A級音質が,空前の量感を獲得した。クラスAターボ
 が,未体験音域へつれていってくれる。
◎天才回路ZDRは二つの革新をもたらしてくれた。①純A級
 がさらに純度を高め,②そのピュアネスが未体験の力を持つ。
◎回路の優秀さは,何よりも音に明らかです。のびやかで,美
 しい,巨大な音の陶酔をぜひ味わってください。
◎スピーカーの低インピーダンス化に正面から応える4Ω連続ド
 ライバビリティの実力。DAソースにもラクに対応します。
◎アース系の問題を本質的に解決します!共通インピーダンス
 をゼロにしたグラウンド・フィクスト・ワンポイントアース回路。
◎高スペックが音に結実する。そして,あなたのデリケートな
 音への要求に応える充実のフルファンクション。




●主な規格●

   A-950  A-750
定格出力 120W+120W(8Ω・20Hz~20kHz・0.003%)
140W+140W(6Ω・20Hz~20kHz・0.005%)
160W+160W(4Ω・20Hz~20kHz・0.02%)
100W+100W(8Ω・20Hz~20kHz・0.003%)
120W+120W(6Ω・20Hz~20kHz・0.005%)
140W+140W(4Ω・20Hz~20kHz・0.02%) 
入力感度・インピーダンス  160μV・100Ω・10kΩ(PHONO MC)
2.5mV・47kΩ・220pF・330pF・100Ω(PHONO MM) 
160μV・100Ω・10kΩ(PHONO MC)
2.5mV・47kΩ・220pF・330pF・100Ω(PHONO MM)  
最大許容入力  10mV(PHONO MC,1kHz・0.01%)
165mV(PHONO MM,1kHz・0.01%) 
10mV(PHONO MC,1kHz・0.01%)
165mV(PHONO MM,1kHz・0.01%)  
周波数特性  20Hz~20kHz+0,-0.5dB(AUX,DADなど)  20Hz~20kHz+0,-0.5dB(AUX,DADなど)  
RIAA偏差  ±0.3dB(PHONO MC・20Hz~20kHz)
±0.2dB(PHONO MM・20Hz~20kHz) 
±0.3dB(PHONO MC・20Hz~20kHz)
±0.2dB(PHONO MM・20Hz~20kHz)  
全高調波歪率
(20Hz~20kHz) 
0.005%(PHONO MC→REC OUT・3V)
0.003%(PHONO MM→REC OUT・3V) 
0.005%(PHONO MC→REC OUT・3V)
0.003%(PHONO MM→REC OUT・3V) 
SN比(IHF-A-Network)  74dB(PHONO MC・250μV換算) 
88dB(PHONO MM・2.5mV換算)
70dB(PHONO MC・250μV換算) 
86dB(PHONO MM・2.5mV換算) 
フィルタ特性  15Hz・12dBoct(サブソニックフィルタ)
10kHz・12dBoct(ハイフィルタ) 
15Hz・12dBoct(サブソニックフィルタ)
 
ラウドネス  コンティニュアス  コンティニュアス  
定格電源電圧・周波数  AC100V・50&60Hz  AC100V・50&60Hz  
定格消費電力  250W  240W 
寸法  435W×146H×424.5Dmm  435W×136H×401.5Dmm 
重量  13.0kg  11.2kg 
※本ページに掲載したA-950,A-750の写真, 仕様表等は,
1983年11月
のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,
ヤマハ株式会社に
著作権があります。したがって,これらの
写真等を無断で転載・
引用等することは法律で禁じられてい
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