YANAHA CA-800
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥85,000
1973年に,ヤマハが発売したプリメインアンプ。同年にヤマハはプリメインアンプCA-1000を発売し,そのすぐれた
性能,洗練されたデザイン等で高い評価を受け,ヤマハブランドのアンプでの地位を築きました。そんなCA-1000の
直系の弟機がCA-800でした。
メインアンプ部は,全段直結ピュアコンプリメンタリーOCL回路が採用されていました。初段差動アンプにFETの定電
圧特性を応用した理想的なバイアス回路が採用され,トランジスター使用のバイアス安定化回路とともに,パワース
イッチON直後から動作の安定性がしっかり確保されていました。実効出力は50W+50W(1kHz,両ch駆動,8Ω)
ダイナミックパワー130Wとともに,全高調波歪率0.1%(実効出力時),0.04%(1W出力時)という低歪み特性が
実現されていました。
さらに,CA-1000と同様にB級動作・A級動作切換のオペレーションスイッチが装備され,等音量のまま動作が切換
えられるようになっていました。A級動作では,B級動作時の50W+50Wに対して,10W+10Wと,実効出力が約
1/5に低下しますが,全高調波歪率は,0.02%(1W出力時),0.015%(8W時)と,大きく特性が向上し,通常使
用領域ではクオリティの高い繊細でクリアーな音質が楽しめるようになっていました。
イコライザーアンプは,ローノイズトランジスターによるNFB方式4段直結回路が搭載され,定電圧+50Vの高供給電
圧や出力インピーダンスを低くとれるエミッターフォロアー方式出力段,十分なNFなどにより,低歪率・高安定度で大き
なゲインが確保されていました。ダイナミックマージンも,定格3mVに対して1kHzで最大許容入力310mVrms,15
kHzでは,2300mVもの値が確保されていました。イコライザー素子には,蒸着金属皮膜抵抗(誤差±1%)とスチロー
ルコンデンサー(誤差±2%)を組み合わせ,洩れ電流や経年変化の少ないタンタルコンデンサーを各所に採用するな
ど,RIAA偏差±0.2dB以内の高精度な特性が実現されていました。アース配線やシールドケースの対策もしっかりな
され,誘導ハムや外来ノイズにも強い設計となっていました。また,MC対応ではありませんでしたが,PHONO-1には
30kΩ,50kΩ,100kΩの3段階の入力インピーダンス切換スイッチが装備されていました。
電源部は,電圧変動の少ない大型コアのパワートランスと6800μF×2の大容量フィルターコンデンサーが搭載され,
パワー段を除く全段を駆動する別設定の定電圧電源とあいまって,アンプ全体の高い安定性が確保されていました。
トーンコントロール回路は,3段直結アンプによるCR形・NF形混合ヤマハ方式で,ブースト,カット,フラット時ともに特
性が素直で残留ノイズも少ないものとなっていました。調整ツマミはクリックストップ式で,BASSは約3dBステップで
±15dB,TREBLEは約2dBステップで±10dBの変化量となっていました。ターンオーバー周波数はBASSが250Hz
500Hz,TREBLEが2.5kHz,5kHzの2段階切換えで,TONE DEFEATポジションにすれば,回路はフラットアン
プとして動作するようになっていました。
フィルター回路は,3段直結アンプにより構成され,ローフィルターが70Hz・OFF・20Hzの3段切換,12dB/octで,20
Hzポジションはサブソニックフィルターとして設けられていました。ハイフィルターは6kHz・OFF・12kHzの3段切換で,
12dB/octとなっていました。
ラウドネスは,通常のON/OFFのスイッチ式ではなく,FLATポジションから,0dB〜−20dBの範囲で連続的に補正カー
ブを変えられるボリューム式のコンティニュアスラウドネス回路が搭載されていました。テープ端子は2系統装備され,同
時録音,相互のダビングもスイッチ一つで切換えられるようになっていました。スピーカー端子は2組装備され,A,B単
独再生の他,A+Bの再生も可能となっていました。その他,−20dBのオーディオミューティング,カプラースイッチを分離
して,プリアンプ,メインアンプを単独で使用できる,プリアウト,メインイン端子も装備されていました。
パネルデザインは,CA−1000と見分けが付かないほど良く似たもので,シャープでメカニックなシルバーへアライン仕
上げで,キャストールオープンポア仕上げの明るい色のキャビネットとともに,価格以上の上品さを感じさせるもので,そ
の後のヤマハアンプにつながる魅力的なものだったと思います。
以上のように,CA-800は,CA-1000の内部構成,機能,デザイン等をきちんと継承した正に直系の弟機で,コストパ
フォーマンスが高められた中級機(とはいえ,当時の¥85,000は相当な高価格でしたが・・)でした。その洗練された
デザインに通じる洗練された薄化粧的な美しさが感じられるCA-1000に比べると,よりストレートな音となっており,また
別の魅力を持っていたと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
CA-1000で完成された技術を
すべてを継承した姉妹機が新しく誕生
B級-A級動作切換えつきメインアンプ部
◎B級-A級操作切換可能,超低歪率・高安定度の
メインアンプ(全段直結ピュアコンOCL回路採用)
◎許容入力310mV,RIAA偏差±0.2dBの高精
度イコライザーアンプ(4段直結NFB方式)と入力
インピーダンス切換スイッチの装備
◎超低歪率3段直結トーンコントロールアンプ(ヤマ
ハ方式),フィルターアンプ
◎音量による聴感補正を可能にするコンティニュアス
ラウドネス回路
◎リレー駆動式スピーカー保護と純電子式トランジス
ター保護からなる完璧な保護回路
◎大型パワートランスと6800μF×2大容量ケミコン
を採用した電源部
◎豊富な付属回路
◎人間工学に基づいた操作性とデザインを徹底追求
ヤマハならではの木工技術から生まれた風格ある
アンプキャビネット
●CA-800の規格●
■パワーアンプ部■
回路方式 |
B級・A級切換式全段直結ピュアコン プリメンタリーSEPP OCL回路 |
ダイナミックパワー(IHF 8Ω,B級) | 130W |
実効出力 |
20Hz〜20kHz(両ch駆動) B級8Ω 45W+45W B級4Ω 50W+50W A級8Ω 10W+10W 1kHz(両ch駆動) B級8Ω 50W+50W B級4Ω 60W+60W A級8Ω 10W+10W 1kHz(片ch駆動) B級8Ω 55/55W B級4Ω 70/70W A級8Ω 10/10W |
全高調波歪率 |
B級実効出力時 0.1%以下 B級1W出力時 0.04%以下 A級実効出力時 0.1%以下 A級1W出力時 0.02%以下 |
混変調歪率 (70Hz:7kHz=4:1) |
B級実効出力時 0.1%以下 B級1W出力時 0.05%以下 A級実効出力時 0.1% A級1W出力時 0.05%以下 |
パワーバンド幅 (IHF,両チャンネル駆動) |
B級 5Hz〜70kHz A級 5Hz〜100kHz |
周波数特性 | 10Hz〜100kHz +0,−1dB |
入力感度 |
B級 775mV A級 345mV |
入力インピーダンス | 40kΩ |
出力端子 |
スピーカー端子 A,B ヘッドホーン端子 4Ω〜16Ω |
ダンピングファクター(1kHz,8Ω) | 70 |
S/N(IHF Aネットワーク) | 100dB |
残留雑音(8Ω,プリ+パワーアンプ) | 0.8mV |
回路方式 |
イコライザーアンプ・マイクアンプ 4段直結NFB型アンプ トーンコントロールアンプ・フィルターアンプ 中間エミッターフォロワー型3石直結アンプ |
入力端子(感度/インピーダンス) |
PHONO 1 3mV/30kΩ,50kΩ,100kΩ PHONO 2 3mV/50kΩ MIC 2.5mV/50kΩ TUNER,AUX1,AUX2 120mV/40kΩ TAPE PB A,B 120mV/40kΩ |
出力端子(レベル/インピーダンス) |
TAPE REC OUT A,B 120mV/2kΩ PRE OUT 775mV/2kΩ |
高調波歪率 (PRE OUT定格出力時20Hz〜20kHz) |
PHONO 1,2 0.1%以下 TUNER,AUX 1,2,TAPE 0.02%以下 |
PHONO 1,2許容入力(1kHz,歪率0.1%) | 310mVrms(870mVp-p) |
周波数特性 |
PHONO 1,2(RIAA偏差) 30Hz〜15kHz ±0.2dB TUNER,AUX 1,2,TAPE PB 10Hz〜50kHz +0.5,−1dB |
トーンコントロール |
BASS 50Hz ±15dB ターンオーバー周波数 250Hz,500Hz TREBLE 10kHz ±10dB ターンオーバー周波数 2.5kHz,5kHz |
オーディオミューティング | −20dB |
フィルター |
LOW 20Hz,70Hz(12dB/oct) HIGH 6kHz,12kHz(6dB/oct) |
ラウドネスコントロール | 等ラウドネスカーブに準ずるコンティニュアスラウドネス |
S/N(IHF クローズドサーキットAネットワーク) |
PHONO 1,2 80dB MIC 70dB TUNER,AUX 1,2,TAPE 90dB |
付属回路 |
トランジスター保護回路(ASO検出リミッター方式) スピーカー保護回路(電圧検出リレー駆動方式) オペレーションスイッチ(A級・B級切換スイッチ) テープダビングスイッチ コンティニュアスラウドネス |
電源電圧 | AC100V 50-60Hz |
定格消費電力 | 190W |
最大消費電力 | 300W |
電源コンセント | 電源スイッチ連動2 max200W 電源スイッチ非連動2 max200W |
外形寸法 | 436W×144H×323Dmm |
重量 | 13.5kg |
YAMAHA CA-800U
NATURAL SOUND STEREO AMPLIFIER ¥95,000
1974年,CA-800は,CA-800Uへとモデルチェンジされました。パネルデザイン等はほとんど変更がなく一見
見分けが付かないほどでしたが,内部では各部に改良・強化が行われていました。
まず,変わったところでは,出力が45W+45Wから50W+50Wへ(20Hz〜20kHz,両ch駆動,8Ω),50W
+50Wから55W+55W(1kHz,両ch駆動,8Ω)とアップしていたことがありました。この裏には,電源部が,
フィルターコンデンサーの大容量化(6800μF×2→10000μF×2)など,強化されていたことがありました。
2つ目に変わったところとして,トーンコントロールがありました。トーンコントロール回路が,新たに位相反転型6
石アンプによるNF型に変更されていました。さらに,TONE DEFEATに加え,トーンジャンプスイッチが設けられ
ていました。ミューティングスイッチに併設されたポジションをTONE JUMPにすることで,トーンアンプ,フィルター
アンプをバイパスすることになり,信号がボリュームの後のバッファーアンプからダイレクトにメインアンプに流れる
よりシンプルな回路構成になり,音質の向上が図れるようになっていました。
以上のように,CA-800Uは,CA-800を改良した2世代目のモデルで,音質的にも,より自然な感じになり,レ
ンジもより広がった,さらに洗練された方向に変わっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
回路方式 |
A級・B級動作切換式全段直結ピュア コンプリメンタリーSEPP OCL回路 |
ダイナミックパワー(IHF 8Ω,B級) | 160W |
実効出力 |
20Hz〜20kHz(両ch駆動) B級8Ω 50W+50W B級4Ω 60W+60W A級8Ω 10W+10W 1kHz(両ch駆動) B級8Ω 55W+55W B級4Ω 70W+70W A級8Ω 10W+10W 1kHz(片ch駆動) B級8Ω 60/60W B級4Ω 90/90W A級8Ω 10/10W |
全高調波歪率 |
B級実効出力時 0.1%以下 B級1W出力時 0.04%以下 A級実効出力時 0.1%以下 A級1W出力時 0.02%以下 |
混変調歪率 (70Hz:7kHz=4:1) |
B級実効出力時 0.1%以下 B級1W出力時 0.05%以下 A級実効出力時 0.1% A級1W出力時 0.05%以下 |
パワーバンド幅 (IHF,両チャンネル駆動) |
B級 5Hz〜70kHz A級 5Hz〜100kHz |
周波数特性 | 10Hz〜100kHz +0,−1dB |
入力感度 |
B級 775mV A級 345mV |
入力インピーダンス | 100kΩ |
出力端子 |
スピーカー端子 A,B ヘッドホーン端子 4Ω〜16Ω |
ダンピングファクター(1kHz,8Ω) | 70 |
S/N(IHF Aネットワーク) | 100dB |
残留雑音(8Ω,プリ+パワーアンプ) | 0.8mV |
回路方式 |
イコライザーアンプ・マイクアンプ 4段直結NFB型アンプ トーンコントロールアンプ 6石アンプ |
入力端子(感度/インピーダンス) |
PHONO 1 3mV/30kΩ,50kΩ,100kΩ PHONO 2 3mV/50kΩ MIC 2.5mV/50kΩ TUNER,AUX1,AUX2 120mV/40kΩ TAPE PB A,B 120mV/40kΩ |
出力端子(レベル/インピーダンス) |
TAPE REC OUT A,B 120mV/2kΩ PRE OUT 775mV/2kΩ |
高調波歪率 (PRE OUT定格出力時20Hz〜20kHz) |
PHONO 1,2 0.1%以下 TUNER,AUX 1,2,TAPE 0.02%以下 |
PHONO 1,2許容入力(1kHz,歪率0.1%) | 310mVrms(870mVp-p) |
周波数特性 |
PHONO 1,2(RIAA偏差) 30Hz〜15kHz ±0.2dB TUNER,AUX 1,2,TAPE PB 10Hz〜50kHz +0.5,−1dB |
トーンコントロール |
BASS 50Hz ±15dB ターンオーバー周波数 250Hz,500Hz TREBLE 10kHz ±10dB ターンオーバー周波数 2.5kHz,5kHz |
オーディオミューティング | −20dB |
フィルター |
LOW 20Hz,70Hz(12dB/oct) HIGH 6kHz,12kHz(6dB/oct) |
ラウドネスコントロール | 等ラウドネスカーブに準ずるコンティニュアスラウドネス |
トーンジャンプ | トーン,フィルターアンプをバイパス |
S/N(IHF クローズドサーキットAネットワーク) |
PHONO 1,2 80dB MIC 70dB TUNER,AUX 1,2,TAPE 90dB |
付属回路 |
トランジスター保護回路(ASO検出リミッター方式) スピーカー保護回路(電圧検出リレー駆動方式) オペレーションスイッチ(A級・B級動作切換スイッチ) テープダビングスイッチ コンティニュアスラウドネス トーンジャンプ |
電源電圧 | AC100V 50-60Hz |
定格消費電力(電気用品取締法による表示 | 140W |
電源コンセント | 電源スイッチ連動2 max200W 電源スイッチ非連動2 max200W |
外形寸法 | 436W×144H×323Dmm |
重量 | 14.0kg |
※本ページに掲載したCA-800,CA-800Uの写真,仕様表等は1973年,
1974年7月のYAMAHAのカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に
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