CDP-XA7ESの写真
SONY  CDP-XA7ES
COMPACT DISC PLAYER ¥250,000

1994年にソニーが発売したCDプレーヤー。「ESシリーズ」のCDプレーヤーの最上級機にあたり
前年に発売したプレステージモデルCDP-R10で新開発・搭載された光学系固定メカニズムを一般
モデルに初搭載した1台でした。

CDP-XA7ESの最大の特徴は,上記したように光学系固定メカニズムの採用にありました。軽量な
光学ピックアップを強固なベースに固定してしまい,逆にディスク側がメカベース上を移動する機構に
なっており,光学ピックアップの受ける振動は大幅に減少し,サーボに必要な電流はディスクのゆが
みや偏心に対する補正を行う比較的ゆっくりとした動きで済むようになります。このため,サーボ電
流がグランド等に流れて音質に悪影響を与える度合いが抑えられていました。さらに,ディスクは,
スタビライザーやチャッキング機構を使って,上からプレスする仕組みになっており,ディスクの振動
が抑えられ,ブレの少ない安定した回転が確保されていました。また,ディスクを回転させるモーター
には,回転ムラの少ないBSLモーターが搭載され,モーターの軸受けには,高硬度で摩擦係数が少
ないサファイヤが使用され,長期の安定性が確保されていました。光学ピックアップのサーボには
演奏ディスクごとにサーボ量を調整することで,ディスクのコンディションをより的確に反映したサー
ボコントロールを実現する「ハイプレシジョン・デジタルサーボ」が採用され,安定した読み取りが実
現されていました。
そして,ディスク回転系および光学ピックアップのドライブ回路を,バランスプッシュプルで構成した
ファインドライブ方式が採用され,同相ノイズを打ち消し,アースラインへのノイズ混入を防いでいま
した。また,デジタル回路を小さくまとめた上でオーディオ回路基板から分離したデジタルミニマム基
板が採用され,デジタル系のオーディオ部への影響を少なくしていました。さらに,前面の表示部に
は,表示に変化のない部分は点滅しないスタティック方式のFL管が採用され,表示部で発生するノ
イズも低減してオーディオ部への影響を抑えていました。

CDP-XA7ESのメカニズム部
CDP-XA7ESのメカ・トレイ


CDP-XA7ESでは,デジタルフィルターにも特徴がありました。ディスクから得られた本来のデータに
演算処理で生成した補間データを加え,D/Aコンバーターに送るのがデジタルフィルターですが,CDP
-XA7ESでは,ディスクから得られたデータとデータの中間点に最初の補間データを生成し,できたデ
ータを使って次の補間データをつくるという,2倍型のデジタルフィルターを3段階連結した方式がとら
れていました。その際に,生成された補間データには,元になったデータよりはるかに細かな値が含ま
れており,回路の処理能力の関係で,通常は演算結果の下位ビットを四捨五入し上位ビットだけが次
に送られていました。CDP-XA7ESに搭載された「FF(フル・フィードフォワード)方式デジタルフィルター」
では,四捨五入された下位ビットを別ルートで伝送しメモリー,次段の演算結果と合成する「フル・フィード
フォワード演算」が行われ,下位ビットを反映したオーバーサンプリング演算が実現されていました。この
結果,下位ビットの四捨五入の誤差等によって生じる可聴帯域内での再量子化ノイズがほぼ完全に除
去され,レベルの小さい信号のクオリティが大きく改善されていました。

DAC関係素子

D/Aコンバーターには,ソニー自慢の「カレント・パルスD/Aコンバーター」が搭載されていました。これ
は,入ってきたデジタルデータを,きわめて高密度(毎秒5000万回の電子スイッチのON/OFFが行わ
れる)のパルス列に変換し,得られたパルス列をローパスフィルターを通すことでオーディオ信号に再現
するという1ビット系の「パルスD/Aコンバーター」をベースに改良されたものでした。「カレント・パルス
D/Aコンバーター」は,カレントの名の通り,デジタルデータのパルス列を電圧から電流に転換したもの
でした。従来の「パルスD/Aコンバーター」では,パルスが電圧で表現される方式であるため,パルスの
高さを表す電圧値は,コンバーターICに加えられている電源電圧そのものとなります。ところが,電源電
圧は,消費電流の変動によりその値が変動し,それとともに電圧値であるパルス列のわずかながら高さ
が変動してしまう問題点が生じてしまいます。また,電圧パルスであるために,演算回路等が発生する電
圧ノイズの混入を完全に防止することが難しいという問題もありました。これらの問題点を電流パルスへ
の転換で解決しようとしたものでした。まず安定したきれいな電流源を用意し,パルス生成器の出力を利
用してスイッチングすることで電流パルスを生成していく仕組みになっていました。この転換により,電圧
変動の影響や演算回路のノイズの影響を受けないことになり,音質向上特に低音域の表現力の向上が
図られました。さらに,オーディオ信号に変換する際に,「カレント・パルスD/Aコンバーター」の出力を差
動合成することで歪みを減らす「コンプリメンタリーPLM(Pulse Length Modulation)方式」がとられ
歪みが極めて少ない出力波形が実現されていました。
また,デジタルフィルターが送り出す高精度のデータを近接配置したマスタークロックのタイミングでカレン
ト・パルスD/Aコンバーターが処理し,周辺のデジタル演算部にもピュアなクロックを供給する「ダイレクト
デジタルシンク方式」がとられ,D/A変換部トータルとしての能力が高められていました。

RコアトランスCDP-XA7ESのツイン・Rコアトランス

D/Aコンバーター部からの出力を受けるオーディオ系のラインアンプには,信号経路からカップリングコン
デンサーを排除した,FETドライブの高性能DCサーボアンプが採用されていました。
電源部には,トランスの鉄芯を切れ目が無くしかも断面が円形のドーナツ型にすることで,磁束漏れと振動
を大幅に減少させた「Rコアトランス」が搭載されていました。CDP-XA7ESでは,デジタルおよびサー ボ系
と,オーディオ系それぞれに専用のRコアトランスを搭載したツインRコアトランス構成とし,さらにシールド
ケースに樹脂で充填封入し,磁束漏れと振動を徹底的に抑え込んでいました。

CDP-XA7ESの内部偏心インシュレーター

内部レイアウトは,容積的に大きな割合を占め,CDプレーヤーないで唯一の機械的動作セクションである
メカデッキを中央に配置して,振動に対する安定度を高める構成となっていました。フレームとビームで強
固に固めた「FBシャーシ」にそれぞれ異なる形状と大きさの部材を組み合わせることで固有振動を打ち消
し,シャーシ全体として振動が大きく低減されていました。さらに,銅メッキ処理を施し,電磁ノイズの発生を
抑えるとともに,天板には隙間をなくした防振用の肉厚の非磁性体・アルミ製のトッププレートを装備して音
圧の侵入を防ぐ構造となっていました。
シャーシ全体を支えるインシュレーターには,取付穴の位置をセンターからずらした偏心インシュレーターが
使用されていました。モードの異なる振動が相互に打ち消しあい,シャーシに振動が伝わりにくくなっていま
した。また,CDP-XA7ESでは,耐振性によりすぐれた鋳鉄製となっていました。

以上のように,CDP-XA7ESは,ソニーの「ESシリーズ」の最上級機として,メカニズム,回路など先 進的
な内容を持ち,しっかりと物量も投入された正攻法の力作でした。音の方も,CDの音を正確に伝えようと
するかのようなクリアでしっかりとした音が特徴的でした。そして,ソニーのCD専用機としては「ESシリー ズ」
の最後の高級機となりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



新開発の光学系固定方式メカニズム
&カレント・パルスD/Aコンバート
システム搭載。
ESの新しい歴史を開く
プレステージモデル。


◎光学系固定方式メカニズム搭載。
◎フル・フィードフォワード方式デジタルフィルター搭載
◎カレント・パルスD/Aコンバーター搭載
◎カレント・パルスD/Aコンバートシステム
◎FETドライブ・DCサーボラインアンプ搭載
◎ファインドライブ&デジタルミニマム基板採用
◎スタティック点灯FL管採用
◎クリーンな電源を供給,ツインRコアトランス
◎銅メッキFBシャーシ&アルミ製防振トッププレート
◎センターメカマウント・システム
◎鋳鉄製偏心インシュレーター採用
◎光出力に加え同軸デジタル出力も装備

 ●ハイプレシジョン・デジタルサーボ
 ●カスタム・エディット(ピークサーチ,プログラム・ エディット
  マニュアル・フェーダー,可変フェード)
 ●カスタム・ファイル(カスタム・インデックス,デ リート・バンク
  最大対応枚数:224)
 ●デリートプレイ
 ●シャッフルプレイ/デリートシャッフル
 ●ミュージックスキャン
 ●オートスペース
 ●タイマープレイ(オートスタート)
 ●8モードリピート
 ●インデックスサーチ




●CDP-XA7ESの仕様●

メカデッキ
光学系固定方式
モーター
サファイア軸受け・BSLモーター
D/Aコンバーター
カレント・パルスD/Aコンバーター
デジタルフィルター
フルフィード方式
電源トランス
ツインRコアトランス
ラインアンプ
FETドライブDCサーボラインアンプ
シャーシ構造
銅メッキFBシャーシ
トッププレート
アルミ製防振トッププレート
インシュレーター
鋳鉄製偏心インシュレーター
周波数特性
2〜20,000Hz±0.3dB
全高調波ひずみ率(EIAJ)
0.0015%
ダイナミックレンジ(EIAJ)
100dB
ワウ・フラッター(EIAJ)
測定限界(±0.001% W・Peak)以下
デジタル出力
光/同軸(ON/OFFスイッチ付)
アナログ出力
固定/可変(金メッキ・ピンジャック)
バランス(XLR)
出力レベル
アナログ:2Vrms(固定),2Vrms〜0V(可変)
      5Vrms(バランス,固定)
デジタル(光):−18dBm(発光波長660nm)
デジタル(同軸):0.5Vp-p(75Ω)
ヘッドホン:100mW(32Ω抵抗)
電源電圧
AC100V 50/60Hz
消費電力
28W
外形寸法
430W×125H×375Dmm
質量
約15.0kg


※ 本ページに掲載したCDP-XA7ESの写真・仕様表等は
 1996年10月のSONYのカタログよ り抜粋したもので,
 ソニー株式会社に著作権があります。したがってこれらの
 写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますので,ご注意くださ い。

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