CL-M2DCの写真
MICRO CL-M2DC
LINE PROCESSOR ¥290,000

1989年に,マイクロが発売したライン専用プリアンプ。音質最優先でフォノ入力も設けられず,入力セレクター+
アッテネーターという徹底的にシンプルな設計が特徴で,マイクロは「ラインプロセッサー」と称していました。

CDが1983年に登場して以来,プリアンプあるいはコントロールアンプ不要論もささやかれ,伝送系のシンプル化
を徹底するために,CDプレーヤーとパワーアンプを,アッテネーターを介して直結するというシステムを使うオーディ
オファンも現れるなど,アナログレコードからCDへとソースの変化は,アンプの考え方への変化も生んでいました。
しかし,プリアンプ,コントロールアンプにはソースごとのインピーダンスを整えるなどバッファの働きもあることが言わ
れています。そうした中,CL-M2DCは,ソースとパワーアンプの間のバッファとしての働きを担いつつシンプルな伝
送経路としての設計が徹底されたものでした。機能を抑え,付属回路を減らし,シンプルな回路を厳選された高品質
なパーツで構成するという設計が徹底されていました。

プリアンプが扱う音楽信号は微小であるため,様々な外乱の影響を受けやすくなります。CL-M2DCでは,これらの
外乱を機械的振動,電磁的振動,リップル(脈流)の3つの振動(=変動?)に分類し,対応していました。
機械的振動に対しては,強靱性や制振性において鋳鉄やアルミニウム合金をはるか超える新合金コスマールに銅
メッキを施した高性能な制振材を採用していました。特に,底面部には5mm厚のコスマール材2枚,1mmフェライト
防振材,1mm鉛板1枚,1.6mm鉄板を使用した5層構造が採用されていました。また,心臓部であるプロセス基板
は基板ベースに固定され,さらにシャーシ底面にマウントされ堅牢な取り付けがなされていました。アンプ全体の重量
も薄型の筐体から想像できない20kgに達するもので,高剛性・無共振を追求して機械的振動を排除していました。

5層構造の底面部脚部インシュレーター

アンプ内部の伝送経路に悪影響を与える不要輻射や電磁誘導などの電磁的振動に対しては,電源部の分離構成と>
独立DCバッテリー電源の採用によって対処していました。
ロジック回路から発生するパルス信号による不要輻射に対しては,信号部(増幅部)の電源と,ロジック/リレー回路
の電源を完全に分離させて対処していました。信号部は,独立DCバッテリー電源,ロジック/リレー回路はACを整
流して得られるDC電源(いわゆる通常の電源部)から供給することで,電源経路も完全に切り離されていました。

専用DCパワー・サプライ・ユニット
DC-M2
POWER SUPPLY UNIT ¥100,000

電磁誘導に対しては,独立したDCバッテリー電源を採用していました。振動や漏洩磁束の原因となる電源トランス
を信号経路から独立させて放すことで電磁誘導の影響を抑えていました。バッテリーには,内部抵抗の非常に小さ
い大容量(CL-M2DCの負荷電流0.2Aに対して8A)の蓄電池を採用していました。バッテリー電源の採用により
AC電流を整流する従来の電源では実現が不可能なリップルや電圧変動のないクリーンな電源供給が可能となって
いました。このDCバッテリー電源は,充電制御モジュールを採用したDC±12Vパワーサプライユニットで,高い信
頼性の高性能シール鉛蓄電池を内蔵し,従来のものと比べて長寿命(8〜10年)の設計となっていました。また,音
楽を再生中は充電が自動的にストップするようになっており,電磁的な悪影響を抑えるようになっていました。

内部の基板アッテネーター

パーツは厳選されたものが使用され,高性能なものが多く使用されていました。特に抵抗素子には,放送局・スタジ
オなどプロフェッショナルな機器に使用されているRM型固定抵抗が使用されていました。また,全ての信号伝送回
路とアンプ基板へのDC配線材には,すぐれた伝送特性を持つPCOCCが採用されていました。アッテネーターには
低雑音・高信頼性の40ステップ・ディテントアッテネーターが採用されていました。このアッテネーターは,音量表示
が絶対値(dB表示)で行われ,目盛りを中央の0dBに合わせると,入力信号と同じ出力電圧が得られるようになって
いました。

CL-M2DCのリアパネル
CL-M2DCの内部ライントランス>

ライン専用プリアンプとして,入力系は6系統,出力系は2系統装備されていました。そのうち入力は2系統,出力は
1系統にバランス型が採用されていました。特にバランス型出力回路には,大型のライントランスを使用したユニーク
なものが搭載されていました。このライントランスは,バイファイラー巻・5重サンドイッチ巻に加え,4重スタティックシ
ールドが施されていました。さらに,1次・2次巻線の他ネガティブフィードバック用の3次巻線を採用し,低域から高域
までフラットな周波数特性が実現されていました。

以上のように,CL-M2DCは,ライン専用プリアンプとして,ピュアな信号伝送系を実現すべく,しっかりと物量が投入
され,堂々たる重量級プリアンプとなっていました。同社のCDプレーヤー・CD-M2にも共通する落ち着いた外観イメー
ジにも通じる,上品で繊細なクリアな音をもっていました。フォノ系等を同社の「Mシリーズフォノイコライザー」や他社の
フォノイコライザーアンプにゆだねることで実現した信号系のシンプル化が徹底された設計は,一つの方向性を示して
いました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



「ラインプロセッサー」
徹底した制振思想とシンプル化への
情熱が生んだオーディオの新しい形。


◎微小な振動もカット。独創の
 制振思想が響きをリファイン。
◎「一本の導線」に限りなく接近。
 シンプル&クリーンな回路設計。
◎厳選されたパーツが拓く
 未踏のサウンドクオリティ。
◎よりピュアに,よりダイナミックに。
 高純度伝送を可能にした入出力系
◎専用DCパワー・サプライ・ユニット




●SPECIFICATIONS●

形式
リニアーアンプ
入力
アンバランス×4 2V
600Ωバランス×2 600Ω,0dB
出力
アンバランス×1 入力+10dBmax
600Ωバランス×1 入力+10dBmax
周波数特性
5〜50,000Hz +0,−0.5dB
全高調波歪率
0.005%以下
SN比
95dB以上
ファンクション
位相選択 0°,180°
モード ST,L+R
ミューティング ON,OFF
電源
±12Vバッテリー
消費電力
10W
外形寸法
450W×100H×330Dmm
重量
20kg


※本ページに掲載したCL-M2DCの写真,仕様表等は1989年のMICROの
 カタログより抜粋したもので,マイクロ精機株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。

  
 
 
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