PIONEER CS-616
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥49,800
1976年に,パイオニアが発売したスピーカーシステム。パイオニアは,スピーカーのメーカーとして
発足したブランドで,戦後も日本を代表するスピーカーユニットのブランドの一つとして知られていま
した。スピーカーシステムにおいても,ブックシェルフ型のエアーサスペンション方式のARをはじめ
海外のブランドに負けじと1967年にはCS-10を発売するなど,すぐれた技術を見せていました。
そうした中,パイオニアが元JBLの技術担当副社長・バート・ローカンシー氏を技術顧問に迎え,海
外でも評価されるスピーカーを開発しようとするプロジェクトの中,HPM-100を発売し,高い評価を
受けました。そして,その弟機的スピーカーとして発売されたのがCS-616でした。

CS-616は,3ウェイ・バスレフ方式のブックシェルフ型で,元JBLのローカーンシー氏の支援を受
けて開発されたHPM-100の流れを汲むスピーカーだけあって,音の面では,それまでの国産の
スピーカーにはないJBLにも通じる音を実現しようとしていました。そして,ハードロックやディスコ
ミュージックなどの当時の新しい音,ダイナミックレンジの広い電気楽器をリアルに再生しようとした
設計となっていました。



ウーファーは,30cm口径のコーン型で,コーン形状は浅型で,コーン紙にはカーボンファイバー混
入コーンを使用し,さらに表面には特殊な音響制動剤が塗布され,剛性を高めるとともに,共振を
抑える設計になっていました。
磁気回路は,直径156mmのフェライトマグネットを使用し,ポールには純銅キャップを装着して電
流歪を低減していました。また,ボイスコイルには,耐入力特性やリニアリティにすぐれたロングタイ
プを採用していました。
フレームは,剛性の高いアルミダイキャスト製で,共振を抑え,振動板の動きをしっかり受け止め,
IM(混変調)歪の発生も抑えていました。



ミッドレンジは,10cm口径のコーン型で,コーン紙には軽量で剛性に富む新開発の素材を使用し,
エッジ周辺に特殊な制動剤を塗布してスムーズな特性を確保していました。
磁気回路は,直径90mmのマグネットとエッジワイズ巻きのボイスコイルを使用した,ギャップ精度
を高めた大型の磁気回路で,音響変換能率を大幅に高め,高い音圧レベルと耐入力特性を確保
していました。
フレームは,ウーファー同様に剛性の高いアルミダイキャスト・フレームを採用し,共振を抑え,IM
歪を低減していました。



トゥイーターは,4.5cm口径のコーン型で,軽量化を図ったストレート形状のコーン紙を使用し,過
渡特性と周波数特性を向上させていました。また,コーンのネック部には特殊接着剤を塗布し,高域
の伸びを改善していました。そして,エッジには,リニアリティの良いロールエッジを採用し,エッジ内
周部が一部直線になるように改良し,高域特性を改善していました。
磁気回路は,直径70mmの大型のマグネットを使用し,強力な磁気回路と軽量な振動板の組み合
わせにより,高能率とすぐれた過渡特性を実現していました。
フレームは,ウーファー,ミッドレンジと同様に剛性の高いアルミダイキャスト・フレームを採用し,共
振を抑えていました。
こうしたユニットによる3ウェイ構成で,最大許容入力は100Wを実現し,実質的には200Wの大
入力にも耐えるシステムとなっていました。



エンクロージャーは,精密調整したバスレフ構造で,ダクトは開口部からの不要な中音の輻射を避
けるために,内部で折り曲げた折り曲げダクトとしていました。L・R専用の設計の左右対称型となっ
ており,音場・定位の改善も図られていました。バッフル板に24mm厚の合板,その他に20mm厚
の高密度パーティクルボードを使用した堅牢な構造で,内部には吸音材を配し,内容積を生かしな
がら定在波の防止と低域制動を行っていました。
ネットワークは,損失に少ない太い銅線のチョークコイルや,メタライズド・フィルム・コンデンサーを
使用した音質重視の設計となっていました。
高能率のユニットと,こうしたバスレフ方式のエンクロージャー,ネットワークの組み合わせにより,
93dBの高能率を確保し,広いダイナミックレンジを実現していました。

以上のように,CS-616は,ロックなどの当時の新しい音楽に焦点を合わせた計が特徴で,アメリ
カのJBLの影響も感じさせるドライで明るい音は,和製4312と称されるものでした。パイオニアの
当時のスピーカーにかける熱意が感じられるコストパフォーマンスにすぐれた1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



堅実に基本性能を高めた高性能ユニット。
折り曲げダクトつきバスレフ構造。
そしてL・R専用エンクロージャーなど
オン・ステージの迫力を再現する充実設計。

◎低音の量感と迫力をリアルに再現する,
 30cm大口径の強力ウーファー。
◎明るく抜けの良い音質をもつ,
 10cm口径のコーン型ミッドレンジ。
◎シャープな音の立ち上りと伸びのある高域を
 再現する4.5cm口径トゥイーター。
◎充実したユニット構成で大入力に強く,
 最大許容入力100Wの実力です。
◎そして折り曲げダクトつきの精密バスレフ型
 エンクロージャーを組み合せ,93dBの高能率を確保。
◎再生のリアリティを重視したL・R専用エンクロージャー。
 折り曲げダクトつきの精密バスレフ構造です。




●仕様●

形式 位相反転式ブックシェルフ型
使用スピーカー
低音:30cmコーン型
中音:10cmコーン型
高音:4.5cmドーム型
インピーダンス 6.3Ω
再生周波数帯域 30Hz~20,000Hz
出力音圧レベル 93dB/W(1m)
最大入力 100W
クロスオーバー周波数 950Hz,8,000Hz
クロスオーバー周波数 低~中音:1,500Hz
中~高音:4,000Hz
外形寸法 375(W)×665(H)×318(D)mm
重量 25kg

※本ページに掲載したCS-616の写真,仕様表等は,1978年
 11月のPIOEERのカタログより抜粋したもの,パイオニア株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
 で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注
 意ください。

                        
 

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