1979年に,ローディー(日立)が発売したカセットデッキ。ローディーは,1973年に,世界初のコンビネー
ションヘッドを搭載した3ヘッドデッキD-4500を発売し,1978年には,これまた世界初のコンピュータによ
るオートチューニング機構ATRSを搭載したカセットデッキD-5500を発売するなど,高い技術を誇り,画期
的なモデルを開発・発売していました。そして,D-5500のメタル対応モデルD-5500Mの弟機として発売
されたのがD-3300Mでした。
D-3300Mは,D-5500Mの弟機として,その技術を継承し,大きく価格を下げながら,合理的な設計と,
技術の改良で,より洗練された高級デッキとなっていたことが大きな特徴でした。
D-3300Mには,D-5500で開発・初搭載されたオートチューニングシステム・ATRS(Automatic Tape
Responce Search)が改良,強化して搭載されていました。積極的なIC化,コンピュータ内部の演算処理
を5ビットで行うようにするなどして,10秒でテスト完了する精度の高い新ATRSシステムとなっていました。
録音再生周波数特性偏差が少ない,歪み率の悪化が少ない,MOLを低下させない,ドルビーキャリブレーシ
ョンが最適に行われるなどの効果,特徴はそのままに,5つのテープデータメモリー,テストしたテープデータ
に自由に変更できるノーマル,クロム,フェリクロム,メタルの4段メモリーテープセレクター,LED表示ATRS
インジケーターなど新しい特徴や機能が搭載され,より使いやすくなっていました。
走行系は,D-5500Mと同じく,モーター軸がそのままキャプスタンとなっているダイレクト・ドライブメカニズム
が搭載されていました。キャプスタン駆動用モーターには,新開発の3相交流ユニトルクモーターが採用されて
いました。このモーターは,原理的にコッキング要因のないブラシレス,コアレス,スロットレスの3相モーターで,
8極に着磁された駆動用ドーナツ型マグネットと電気的に120°ずつずらした6枚の8分割3相コイルから発生
するトルクが,相互に補完しあい,絶えず一定のトルク総量を生み出して,滑らかな定速回転を得るというすぐ
れたモーターでした。 構造的に一層回転磁界が滑らかになり,さらにトルク変動の少ない交流(AC)モーター
とすることで,より滑らかな回転が確保され,ワウ・フラッター0.023%という高い精度の回転性能が実現され
ていました。
そして,このユニトルクモーターとDCモーターの2モーターメカニズムが採用され,専用IC採用のロジックコント
ロールシステムにより,軽快なフェザータッチによるメカニズムの動作が可能となっていました。
ヘッドは,コンビネーション3ヘッドを開発したローディーならではの「1.4mmクローズギャップ・メタルR&Pコン
ビネーションヘッド」を搭載していました。このヘッドは,録音,再生それぞれ理論的に解析されたギャップ長を
持つHigh Bsフェライト素材の録音,再生ヘッドを,ギャップ間隔1.4mmという狭間隔でひとつのコンパクトな
ケースに納め,ハイパボリック形状,チタン溶射皮膜による鏡のような滑らかなヘッド面とあいまって,2ヘッド
機と変わらぬ滑らかなテープ走行および安定したヘッドタッチ,タイムラグが極少のアフターモニターを実現した
ものでした。また,ヘッドとアンプ初段のFETとのダイレクトカップリングによりSN比が向上していました。
さらに,D-5500Mとは異なり,テープの巻き取り側と繰り出し側それぞれにキャプスタンとピンチローラーを配
したデュアルキャプスタン方式が採用され,テープテンションの安定化が図られ,レベル変動の少ない安定した
テープ走行とヘッドタッチが実現されていました。
機能的には,オーソドックスで,ノイズリダクションとしてはドルビーNR(Bタイプ)が搭載され,同時モニターにも
対応したダブルドルビーとなっていました。その他,REC MUTE,オートリワインド・プレイ/ストップ機構,メモ
リーリワインド機構などが搭載されていました。
入力は,LINEに加えて,MIC入力も装備され,独立したレベルボリュームも搭載されていました。レベルメーター
は,−40dB〜+10dBとD-5500よりもさらにワイドレンジ化されたピークメーターが装備されていました。
以上のように,D-3300Mは,上級機のD-5500Mの技術を継承しつつ,より改良し,筐体も小型化されなが
ら,機能的にも,技術的にもより洗練された部分も多く見られるコストパフォーマンスの高いカセットデッキとな
っていました。低域から高域までバランスのよい,レンジの広い音は,ローディーのすぐれたデッキ技術を示し
たものでした。
メタルテープも含め,各種テープの
イコライザー,バイアス,感度を
約10秒で自動検出する
新ATRSシステム搭載。
テープ走行系には
新開発3相ユニトルクDDメカを採用して
ワウフラ0.023%を実現した
3ヘッドDDメタルカセットデッキ。
●D-3300M Specifications●
トラック型式 | 4トラック2チャンネル |
録音・再生ヘッド | 1.4mmクローズギャップメタルR&Pコンビネーションヘッド×1 |
消去ヘッド | ダブルギャップメタル消去ヘッド×1 |
モーター | ユニトルクDDモーター×1
DCモータ×1 |
ワウ・フラッター | 0.023%(WRMS) |
周波数特性 | (マニュアル,ATRS)
20〜22,000Hz(メタル) 20〜22,000Hz(クロム) 20〜20,000Hz(フェリクロム) 20〜20,000Hz(ノーマル) (ATRS)
|
S/N
メタルテープ 3%歪みレベル基準 JIS Aカーブ聴感補正 |
69dB(DOLBY・NR ON)
60dB(DOLBY・NR OFF) |
(ATRS仕様)
使用マイクロコンピューター | 4ビット1チップマイクロコンピューター |
バイアス可変ステップ | 32 |
感度・イコライザー調整ステップ | 32 |
使用電池 | 酸化銀電池(G-13×2,メモリー保護用) |
(その他)
電源電圧 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 37W |
外形寸法 | 435W×165H×256Dmm |
重量 | 8.4kg |
※本ページに掲載したD-3300Mの写真,仕様表等は1980年8月
のLo-Dのカタログより抜粋したもので,日立家電販売株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引
用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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