DRAGONの写真
Nakamichi DRAGON
Autoreverse cassete deck ¥260,000
ナカミチが198年に発売した再生オートリバースデッキです。ナカミチはそれまで,オートリバース
デッキは作っていませんでした。それは,ナカミチがヘッドとテープの関係,特にアジマスに対して
徹底したこだわりを見せていたためです。確かに,オートリバースデッキは,リバースさせると,A面
とB面で明らかに音が変わってしまうときがあります。これは,リバースさせたときに,アジマスが狂
ったりして,ヘッドとテープの関係が変わってしまうためです。ナカミチは,このデッキでNAAC(ナー
ク)という再生時のアジマス自動調整機構を搭載し,このアジマスの問題を解決しました。その意味
で,非常に画期的な1台でした。                                        

NAACはNakamichi Auto Azimath Correctionの頭文字を取った名前で,他のデッキで録音し
たテープであっても,再生時に自動的にアジマスを合わせてくれるというものでした。DRAGONの場
合,再生オートリバースになっているので,A面用とB面用のL,Rそれぞれ2チャンネルの4チャンネル
のヘッドになっていて,そのうちチャンネルのヘッドをさらにの2チャンネルに分けている
う複雑な再生ヘッドになっていました。そして,チャンネル分のaの音(同チャンネルなので,全く
同じ音になっているはず)の位相を比較し,そのずれを検出して再生アジマスを正確に合わせるという
高度な巧妙な仕組みになっていました。実際私も現役で使用中ですが,どんなデッキで録ったテープ
でも,すぐにアジマスが合い,すっきりと高域の伸びた音になる様は,まるで魔法のようで,特に,再
マシンとして重宝しています。しかし,このNAACは,それ以降,他のデッキには採用されていまん。
(同社の高級カーステレオTD−1200シリーズに採用されていたのが最後でした。)     
他社でも,マランツがSD−930という高級デッキに同じような機構(MAACと呼んでいた)を搭載して
いたのが唯一でした。                                               
恐らく,相当に高度な技術とコストがかかるのでしょう。おいそれと,他のデッキには使えなかったのか
もしれません。非常にデッキの再生能力をアップするのに有効な機構だけに残念なことです。      


 
SD−930の写真MARANTZ SD−930
                                       ¥180,000
このDRAGONの大きな特徴は前述のNAACにありますが,それだけでなく,メカニズム系も非常に
高度なものでした。同社独自のスパーリニアトルクモーターというフラッター(モーターの微振動)の出
ないモーターを2つ使ってダブルダイレクトドライブ,ダブルキャプスタンというこれ以上ないという高精
度な回転系を実現し,ワウ・フラッターは0.019%と,最小に抑えられ,上級の1000ZXLを大幅に
しのぐほどでした。

スーパーリニアトルクモーター   DRAGONのメカニズム部

録音バイアス,録音再生レベルはテープ1本ごとにマニュアルで調整できるようになっており,テープ
の特性を十分に引き出すことができるようになっていました。全面に並ぶツマミはそのためで,まるで
メカの固まりといったマニア好みのデザインも演出していました。

録音再生アンプ系なども非常に高度なもので,優れたヘッド,メカニズムとあわせ,非常に洗練された
上品な音を実現していました。録音機ですからソースにきわめて忠実に録音し再生できるのですが,
そこに,アナログならではのなめらかさを感じさせる上品な音を聴かせてくれました。そして,同社の
1000ZXLで録音したテープ(並のデッキでは手に負えないほどの情報量が詰め込まれている)を
悠々と再生できるゆいいつのカセットデッキでもありました。まさにカセットデッキ界では異彩を放つ
名機と言えましょう。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




デッキはこれ以上    
進化できるのだろうか?
DRAGON誕生     
◎再生ヘッド自動アジマス調整機構=NAAC(Nakamichi Auto Azimuth Correction
◎スーパーリニアトルクモーターによる,ダブルキャプスタン&ダブルダイレクトドライブ方式
◎完全独立3ヘッド方式による世界初のオートリバース再生機構
◎マニュアルキャリブレーション機構=バイアスL,R,録音再生レベルL,Rをテープポジシ
  ョン別に調整可能
◎3つのマイクロプロセッサーによるリアルタイム処理モータードライブテープトランスポート
◎フラッター成分を吸収するアルミとプラスチックによる複合型柔構造シャーシ
◎ワンチップICによる広ダイナミックレンジのドルビーBおよびドルビーCタイプNR
◎オートレックポーズ機構
◎キューボタンによるダブルスピードイージーキューイング
◎ダブルスピードオートフェーダー
◎4トラック独立再生イコライザーアンプ
◎MPXフィルター,サブソニックフィルター
◎−40dB〜+10dB,ワイドレンジLEDピークレベルメーター
◎後追い録音
                                     
                                                  
 

●主な規格●



 
 
 
 
 
 
 

トラック形式 4トラック2チャンネルステレオ方式(再生オートリバース)
ヘッド 3(消去×1,録音×1,4トラック4チャンネル再生×1)
モーター テープ駆動用 
  クォーツPLL DC,ブラシレス/スロットレス/コアレススーパーリニアトルク 
  D・Dモーター(キャプスタン用)×2 
  DCモーター(リール用)×1 
アシスト用 
  アートアジマス用×1 
  メカニズムコントロール用×1
電源 100V AC50Hz/60Hz
消費電力 最大40W
テープ速度 4.8cm/秒
ワウ・フラッター 0.019%以下 WTD RMS,0.04%以下 WTD Peak 
周波数特性 20Hz〜22,000Hz±3dB(録音レベル−20dB ZXテープ) 
20Hz〜21,000Hz±3dB(録音レベル−20dB SX,EXUテープ)
総合SN比 ドルビーCタイプNR ON 72dB以上(70μs,ZXテープ) 
  (400Hz,3%THD,IHF A−WTD RMS) 
ドルビーBタイプNR ON 66dB以上(70μs,ZXテープ) 
  (400Hz,3%THD,IHF A−WTD RMS)
総合歪率 0.8%以下(400Hz,0dB,ZXテープ) 
1.0%以下(400Hz,0dB,SX,EXUテープ)
消去率 60dB以上(100Hz,+10dB)
チャンネルセパレーション 37dB以上(1kHz,0dB)
クロストーク 60dB以上(1kHz,0dB)
バイアス周波数 105kHz
入力 (ライン) 50mV 50kΩ
出力 (ライン) 1V(400Hz,0dB,アウトプットボリューム最大)2.2kΩ 
(ヘッドホン) 45mW(400Hz,0dB,アウトプットレベル最大)8Ω
ブラックボックスシリーズ専用DC出力 ±10V 125mA最大
大きさ 450(巾)×135(高さ)×300(奥行)mm
重さ 約9.5kg
  ※本ページに掲載したDRAGONの写真,仕様表等は1989年4月のNakamichiのカタ
  ログより抜粋したもので,ナカミチ株式会社に著作権があります。したがって,これらの写
  真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。  
    
 
★メニューにもどる        
 
 

★テープデッキのページにもどる
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system