YAMAHA GT-CD2
CD PLAYER ¥350,000
1992年に,ヤマハが発売したCDプレーヤー。前年の1991年にヤマハがGT(Gigantic&Tremendous
の名を冠して発売した,超ド級CDプレーヤーGT-CD1の弟機として発売され,性能や構造をほぼ継承しつ
つ,合理化された設計により,コストパフォーマンスが高められていました。

基本構造は,60mm厚の高密度パーティクルボードのウッドベースに,砲金鋳物製のドライブメカハウジング
を構成し,かつ,このウッドベースに2.3mm厚の鉄板を裏打ちし,対辺22mmの六角鉄柱4本で丸鋼削り出
しのピンポイントレッグと着脱式レッグベースで構成されたGPレッグに直結した形になっていました。さらに,
ウッドベースの下部にD/Aコンバーターユニットを8mm厚のアルミブロックによるフレーム構造シャーシに組み
込み,ウッドパネルに直結し,すべてにノンフローティング・リジッド構造を採用した。総重量24kgという筐体と
なっていました。ウッドキャビネットの外装材にはアメリカンウォルナットのオープンポア仕上げとなっており,ア
メリカンウォルナット,ピアノフィニッシュのポリエステル鏡面塗装仕上げのGT-CD1に比べて数万円のコスト
ダウンとなっていたそうです。
常に点で荷重が支持され,重量級設計と相まって,外部からの振動を寄せつけず,また,ディスクメカユニッ
トの内部振動がD/Aコンバーター部へ影響を及ぼすことのない構造となっていました。また,このピンポイント
レッグは,六角柱の支柱にネジ留めされているため,アナログプレーヤーの脚部のインシュレーターと同じよ
うに,高さ調整ができ,プレーヤーの水平を保つことができるようになっていました。さらに,傷を付けたくない
家具などの上にセッティングする場合のために,ゴムのカップリング式のレッグベースが付属していました。
これらのメカユニットを中心にした筐体の材質の組み合わせは,アナログプレーヤーGT-2000Xの開発時
における実験・試聴から導き出されたものでした。ウッドキャビネットの温かな響きに,2.3mm厚の鉄板及び
8mm厚のアルミダイキャストの筐体を持つD/Aコンバーター部などの金属を組み合わせることで,ウッドだけ
では弱い低域の支えを増し,さらに,中域が特に充実するという砲金のハウジングを組み合わせることで,上
級機同様に,GTシリーズのノウハウを生かしたものでした。


GT-CD2の全体の構造は,プレーヤー部とD/Aコンバーター部を完全に分離したセパレート構造となってお
り,D/Aコンバーターを分離するセパレート型CDプレーヤーの音質的メリットを生かしつつ,一体化することで
ジッターの発生等,セパレート化することのデメリットをクリアしようとした「一体型セパレートCDプレーヤー」と
いった構造になっていました。「一体型セパレート構造」では,専用設計とできるため,マスタークロックをD/A
コンバーター部に置き,プレーヤー部のクロックをVCXO(電圧制御水晶発振器)化することでコントロールで
き,ジッターの抑制を実現していました。

ディスクメカユニットも,GT-CD1同様に物量を投入した凝った作りになっていました。砲金鋳物を切削加工し
た3kgのハウジングをベースにディスクプレーヤーを構成したトップエントリー方式を採用し,リッドには,研磨
した8mm厚の強化ガラスを使用していました。コストダウンのためGT-CD1の10mm厚より2mmほど薄いとは
いえ,高品質なものでした。リッドは堅牢なアルミフレームに支えられ,コンピューター制御によりディスクの回
転開始・停止とタイミングを合わせてモーターで開閉するようになっていました。
スピンドルモーターには,シャフト径4mmの高トルク・ブラシレスモーターを採用し,これに取り付けられたディ
スクテーブルは,真鍮を削り出した後ゴムを焼き付け研磨し,高い精度を確保するとともに,回転の加減速時
にスリップなどが起こらないような構造になっていました。
光ピックアップには,3ビーム方式を採用し,このピックアップを2本の精密シャフトでガイドする構造とし,動作
の高速性より再生時の動作の滑らかさを重視して,あえてリニアモーター方式を用いずに,5スロットモーター
及び減速機構によるタイミングベルト駆動方式を採用し,安定性と制振性を高めていました。
ディスクのクランプ方式は,完全な重力方式をとり,丸鋼製のクランパを採用していました。また,GT-CD1と
同じ真鍮製のクランパを別売で入手することも可能となっていました。
スピンドルモーターの直径4mmのシャフトがそのままセンターとなる構造となっており,このシャフトが直接CD
をガイドすることで高い精度が確保されていました。さらに,ディスクプレーヤー部全体をハウジングに対して,
あえて約2度手前に傾けることにより,シャフトの揺動を防ぎ,シャフト受けの油膜の安定化を実現し,静粛で
正確な回転を確保するような構造となっていました。

D/Aコンバーターは,GT-CD1と同じ構成で,I-PDM(Independent Pulse Density Modulation)方式
DACを搭載していました。これは,1bitタイプですが,パルス列の幅で変換を行う一般的なPWM方式に対し
て,パルスの形が理想的な形でなくても原理的に歪みが発生しないように,個々のパルスを独立化し,比率関
係を正確に保つことができるという方式でした。
1bitタイプに付きもののノイズシェイピングは,あえて2次タイプを採用していました。高次のノイズシェイピング
の方がオーディオ帯域内の量子化ノイズは少ないものの,100kHz~500kHzというHi-bit帯域のノイズ量が
増大するため,帯域外ノイズを除くローパスフィルターの負担が大きくなるという考えのもと,帯域内のS/Nを
120dB以上と十分とれる2次ノイズシェイピングを採用し,なだらかなカーブで帯域外ノイズを排除できるなど
ローパスフィルターを含め,音質的にトータルに有利な方式をとっていました。
DACは,1チップで2チャンネルステレオの処理能力を持つDACを,L・R独立で使用することにより,相互干
渉を防いでいました。また,このことは,片チャンネルで見ると,新合成分に対して正相,ディザ成分に対して
は逆相となる2系統の信号を出力させることができることになり,これらの出力を合成させることで,ディザ成
分の完全な打ち消しと,ランダムノイズの3dB低減を実現していました。
DACに接続されるデジタルフィルタには,帯域内のリップル特性などを向上させた,新開発の8倍オーバーサ
ンプリング・22bit出力のLSIを搭載していました。

オーディオアンプ部は,すべてをディスクリート構成とし,差動入力コンプリメンタリー出力・全段Aクラス動作と
し,GT-CD1で採用された音質対策パーツのみを採用していました。また,2次ノイズシェイピングやDACのツ
イン動作により可聴帯域外のノイズを大幅に低減したことにより,ローパスフィルターには高域の位相特性等
音質的に有利な3次のアクティブ型を搭載していました。
また,出力は,同軸デジタル出力,アンバランスオーディオ出力のみで,GT-CD1に搭載されていたバランス
出力は省かれていました。
電源部は,サーボ・DAC部系とオーディオアンプ系をトランスから分離し,さらにサーボ系とDAC系で巻線を
分けた2トランス3巻線とし,干渉を徹底的に排除していました。また,フィルターコンデンサーは,オーディオ
部が27,000μF以上,DAC部も10,000μF以上という強力な電源部を搭載していました。

以上のように,GT-CD2は,プレステージモデルGT-CD1の設計,作り等をほぼ継承しつつ,ウッドベース部
の外装仕上げ,ガラス製のリッド,ディスククランパ,アナログ出力部,電源部,脚部など,いくつかの点でコス
トダウンを図り,結果として特性,機能など性能をほぼ落とすことなく,価格を大きく下げ,コストパフォーマン
スが大きく高められていました。音質的には,繊細さ,暖かさをもつGT-CD1の音を継承しつつ,低域の骨格
感が改善されている面もあるなど,1年分の新しさも生かされ,魅力ある1台となっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



GT CONCEPT
CDプレーヤーの歴史に
新たな1ページを開く,
音楽のための思想。

◎オーディオの原点に立ち帰り
 振動を排除する
 高剛性・無共振のための重量化。
◎フローティング機構を排除した
 完全重力方式リジッド構造。
◎すべては音楽とともに過ごす
 限りなく純粋な時間のために。

繊細で豊かな音の世界。
再び,GT神話がはじまる。

◎GT思想を具現化した完全リジッド構造。
 重量化が実現した,高剛性・無共振CDプレーヤー。
◎セパレートCDプレーヤの弱点を克服した
 一体型セパレート構造。
◎信号の精度を落とすことのない
 安定で正確なドライブメカユニット。
◎ヤマハ独自のI-PDM方式1bit DAC採用。
◎精緻な信号をしっかりと受け止めるオーディオ部。
◎操作するというよりも,演奏そのものに近い。
 音楽的・オーディオ的喜びを感じる機能と操作性。




●GT-CD2の主な規格●


周波数特性 2~20,000Hz±0.5dB
高調波歪率 0.0016%以下(1kHz)
ダイナミックレンジ 100dB以上
S/N比 118dB以上(EIAJ)
チャンネルセパレーション 100dB以上
ワウ&フラッター 測定限界以下
定格消費電力 19W
外形寸法 435W×157H×405Dmm
重量 24kg
出力 同軸デジタルアウト×1
アナログアンバランスアウト(RCAピン)×1
外装 ウォルナット・オープンポア仕上げ塗装 
※本ページに掲載したCD-GT2の写真・仕様表等は1992年10月の
 YAMAHAのカタログより抜粋したもので,日本楽器製造株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等
 をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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