ＡＫＡＩ　ＧＸ−Ｆ９１
 ドルビーＣ搭載，スーパーＧＸ・３ヘッドデッキ　￥１４５，０００

アカイが，１９８２年に発売した同社の最高級カセットデッキでした。当時，「ＴＯＴＡＬ　ＡＤＶＡＮＣＥ　ＤＥＣＫ」と称された
その自動化技術の便利さを実感したものでした。ここで使われていた自動化技術はその後のデッキに影響を与えてい
ると思います。もちろんデッキとしての基本性能は，オープンリールデッキ時代から定評のあるアカイらしくすばらしいも
のでした。

ヘッドは，アカイ自慢のフェライトヘッド「スーパーＧＸヘッド」による３ヘッドでした。このスーパーＧＸヘッドは，すぐれた耐
摩耗性を誇り，ヘッド寿命１５万時間を誇るもので，ヘッドとしての特性も優れたものでした。テープ駆動系は，クォーツ
ロックＰＬＬサーボＤＤモーターによるクルーズドループ・ダブルキャプスタンを採用し，低変調ノイズ，低ワウ・フラッター
（０．０２５％）を誇りました。

録音・再生アンプ系も強化されており，ＤＣサーボ回路搭載のＤＣアンプとし，差動２段ＡクラスＳＥＰＰ構成の高性能アン
プをヘッドに直結して搭載していました。ドルビーブロックからも完全に独立とし電源系も回路ごとに独立させ，干渉を防
ぐ構成でした。ドルビーはＢタイプに加えＣタイプも搭載していました。

コンピュータによるオートチューニングを搭載し，テープごとに最適な録音バイアス，イコライザー，録音・再生レベルを約
１６秒でチューニングし，データを１２種類までメモリーできるようになっていました。このオートチューニングと併用できる
バイアス微調整機能「オートチューニングバイアス」を搭載し，微妙なＭＯＬ特性の調整により，ソースに合わせたチュー
ニングが可能になっていました。　　

このデッキは，「ＴＯＴＡＬ　ＡＤＶＡＮＣＥ　ＤＥＣＫ」の名の通り，上記のオートチューニングを筆頭に様々な自動化機構を
持っていました。最近のデッキにはよく見られる，モーターによるカセット扉の開閉「ダイレクトリードイン，パワーイジェク
ト」を採用したたぶん最初のデッキではなかったかと思います。自動テープセレクター，録音時ソースからテープへのモ
ニターの自動切替機構，録音やり直し時に，自動的に４秒の無録音部分を作ってレックポーズ状態に入るレックキャン
セル機構，自動頭出し機構「ＩＰＬＳ」，曲の頭を１０秒ずつ再生していくイントロスキャン機構，録音の最後に自動的に４
秒間の無録音部分を作ってレックポーズ状態になるオートミュートなど使い勝手がよく洗練された自動化機構が数多く
採用されていました。ここで採用された機構は，現在のデッキにも広く採用されているようです。　
　　　　　　　　　
多機能でありながら，前面のフタをしめると最低限の機能だけが表に出るパワーシーリングドアによるシンプルなデザ
インとスリムなボディは当時，未来的に感じたものです。今見ても古くないデザインだと思いますが・・・。音と機能のバ
ランスがとれた使いやすいデッキでした。アカイは，現在コンシューマー用のオーディオ機器はあまり作っていないよう
ですが，このようにテープデッキに優れた技術をもち，数多くの名機を出してきただけに残念なことです。
 
 

 
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

ＴＯＴＡＬ　ＡＤＶＡＮＣＥ　ＤＥＣＫＦ９１
音質・メカニズム・操作性，すべてに一歩前進。
アカイが贈るトータルアドバンスデッキの全貌。

※本ページに掲載したＧＸ−Ｆ９１の写真，仕様表等は１９８２年３月のＡＫＡＩのカタ
　ログより抜粋したもので，赤井電機株式会社に著作権があります。したがって，こ
　れらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注
　意ください。
　　　
　
　
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