GX-Z9100の写真
A&D GX-Z9100
3HEAD CASSETTE DECK ¥108,000

A&Dが1988年に発売したカセットデッキ。A&Dは,1987年に赤井電機と三菱電機が提携して発足させた
新ブランドでした。A&DになってGX-Z9000,7000,というワンウェイ3ヘッドのカセットデッキを発売しました
が,これはAKAIブランドで発売されていたGX-93,73とほぼ同一で,細かなブラッシュアップを行い型番を変
えたものでした。そして翌年1988年
の10月にA&Dブランドとして,AKAI時代のGX-9,GX−93以来の設計
を受け継ぎつつ本格的に新開発され
たのがGX-Z9100,GX-Z7100のシリーズでした。そしてシリーズの最
上級機がこのGX-Z9100でした。

GX-Z9100の最大の特徴は,「セパレートブロック・コンストラクション」と称するデッキ全体のコンストラクション
にありました。メカニズムや電機系が複雑に絡み合うデッキのコンストラクションをいったん解体し,各パートのク
オリティを高めた上で,デッキの各ブロックを分離独立させたものでした。メカニズム,電源,マイコンを搭載した
コントロール基板,バイアス基板,ディスプレイ基板の振動・ノイズ発生源をきめ細かくインナーシャーシで分離す
るとともに,微少信号を扱うアンプ部をこれらから完全にセパレートさせ,ヘッドからの信号伝送への干渉を防ぎ
微少レベルの情報や音場の再現性を高めたものでした。さらに,インナーシールドシャーシ,サイドシャーシ,底
板には銅メッキ鋼板を使用し,磁気歪み防止効果を高め,デッキ部とアンプ部を独立させたセパレートデッキに
匹敵する効果を得ていたというものでした。

セパレートブロック・コンストラクション
GX-Z9100の底板

GX-Z9100では,さらに電源部を徹底して独立化させることで電源廻りでの相互干渉を防ぎ音質の向上を図っ
ていました。電源トランスの巻線をアンプ,システム・コントロール,表示系の各ブロックごとに独立させ,安定化
電源も,イコライザー回路,Lチャンネル・ドルビー回路,Rチャンネル・ドルビー回路,ヘッドホンアンプの各ブロッ
クごとに独立の無帰還型電源を搭載していました。さらに,イコライザー回路の録音側と再生側独立も図り,合計
5つの安定化電源を搭載するという徹底した独立電源になっていました。電源トランスは,磁束漏れが少なく,レ
ギュレーションに優れたサーキュラートンラスを搭載し,+側と−側も独立巻線として,電源まわりでの相互干渉
を徹底して抑えていました。電源コードは極性表示付のOFC電源コードが使用されていました。

テープ走行系は,歴代のAKAIのデッキに搭載されてきたクローズドループ・ダブルキャプスタン・DD方式を採用
し,安定したテープ走行を実現していました。GX-Z9100では,さらにキャプスタンのDDモーターをクォーツロッ
ク制御し,走行性能をより高めていました。さらに,安定したテープ走行を長期にわたって維持できるように,表面
平滑性,硬度,制振性に優れたセラミック・コンポジット材のテープガイドを採用していました。

GX-Z9100のトランスポートメカニズムカセットスタビライザー

GX-Z9100では,上記のセパレート構造に加え,筐体のトータルな制振化・高剛性化を行っていました。高剛性
なサイドウッドパネルの装着,制振性に優れたセラミックコンポジット材を採用した大型のインシュレーターが新た
に採用されていました。さらに,音質を劣化させるというカセットハーフの振動を抑えるため,2.5mm厚のアルミ
板と2.0mm厚の鋼板,そして高い振動吸収特性を持つ新素材「ソルボセイン」を組み合わせたカセット・スタビラ
イザーを装着し,カセットハーフを広い面積で抑え,有害振動を吸収して,音のクリアネスを高めていました。

ヘッドはAKAI以来伝統のスーパーGXヘッドを搭載していました。さらに,GX-Z9100では,ヘッドの巻線に伝送
歪みの少ないLC-OFCを採用していました。

スーパーGXヘッド

GX-Z9100では,録音/再生アンプに単体プリアンプ並のクオリティを誇る完全ディスクリート構成完全直結アンプ
を搭載していました。特にデッキの音質を決定づけるといわれるイコライザー回路には,AKAI以来のA&D独自の
無帰還型オープンループサーキットを採用し,カセットデッキで初めてオーバーオールのNFBを取り去っていました。
バイアス回路は,バイアス発振周波数を210kHzと従来の2倍以上に引き上げたハイフレケンシー・バイアス回路を
搭載し,バイアス信号と音楽信号の干渉によるビート発生を抑えていました。

機能的には,内蔵CALを利用して調整ができるバイアス及び録音レベルのマニュアルキャリブレーション機構が搭
載されていました。ノイズリダクションとしてドルビーB/Cが搭載され,高域特性を改善するドルビーHXプロシステ
ムも採用されていました。メカニズムは,AKAI・GX-F91以来の設計が受け継がれ,サイレントメカニズム,カセット
ドアがモーターで開くダイレクトリードイン&パワーイジェクト,モニター切換が自動化されたオートモニター,オートテ
ープセレクターなど使いやすく洗練された操作系になっていました。カウンターはリアルタイムカウンターで,レベル
メーターを含むディスプレイは音質への影響を考え,ディスプレイオフスイッチが設けられていました。
そのほか,A・Bリピート機能,IPSS(最大16曲飛び越し選曲機能)などの機能も搭載されていました。また,ワイ
ヤレスリモコンも付属していました。

以上のように,GX-Z9100は,AKAI以来の伝統のデッキ技術を受け継ぎ,中身の濃い高性能デッキでした。その
クリアな音は特徴的でした。そして,GX-Z9100はGX-Z9100EX,GX-Z9100EVとモデルチェンジを受けながら
ロングセラーとなりました。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

”デジタル時代の究極のカセットデッキをつくりたい−”
エンジニアの夢を結晶させた,
リファレンスデッキの誕生です。

◎アンプ部のセパレート化により,
 カセットの限界を超える音質を実現。
◎現在最高のレベルを行くデッキ技術を
 さらにブラッシュアップして搭載。
カセットデッキをどこまで進化させられるか−。
このテーマのもと,
A&Dのテクノロジーと叡智を総結集しました。
◎微少レベルの表現力を高める
 セパレートブロック・コンストラクション。
◎電源を徹底して独立し,
 電源廻りでの相互干渉を根絶。
◎デッキ・メカニズムの到達点,
 高精度D.D.トランスポートメカニズム。
◎ディスクリート構成オープンループDCアンプ。
◎バイブレーション・アブソービング・カセット・スタビライザー。
◎A&Dクオリティの象徴,
 LC-OFCスーパーGX・3ヘッドシステム。
 
●主な仕様●

 
ヘッド LC-OFCスーパーGX録再コンビネーションヘッド×1
ダブルギャップセンダスト消去ヘッド×1
モーター クォーツPLL・D.D.モーター×1
DCモーター×2
ワウ・フラッター 0.025%WRMS,±0.04%W・Peak(EIAJ)
周波数特性 20〜22,000Hz±3dB(メタルテープ)
歪率 0.5%(1kHz)
SN比 59dB(メタルテープ・ドルビーNR OFF)
ドルビーCタイプNRシステム使用時500Hzで15dB,10kHz以上で20dB向上
消費電力 24W
寸法・重量 460W×154H×350Dmm・10.2kg


GX-Z9100EXの写真
A&D GX-Z9100EX
3HEAD CASSETTE DECK ¥110,000

1989年,GX-Z9100は,GX-Z9100EXへとモデルチェンジが行われました。基本設計は踏襲されていまし
たが,EXバージョンとして,各部のブラッシュアップ・強化が行われていました。

録再用のLC-OFCスーパーGXヘッドは,音質的に有害な水素ガス成分を徹底的に排除した新素材LC-OFC
クラス1材(カンタム)を巻線に新採用していました。
また,カセットハーフの振動を抑えるカセットスタビライザーは,様々な形状のカセットハーフに万全に対応するた
め,表面を凸状に加工したI・V・O(ウンプルーブド・バイブレーション・オフ)型に改良し,密着性を向上させ,新た
に採用したアルミ製カセットリッドとともに,一層効果的な振動吸収を図っていました。

LC-OFCスーパーGXヘッドI・V・Oカセットスタビライザー
 
●主な仕様●

 
ヘッド LC-OFCクラス1材採用スーパーGX録再コンビネーションヘッド×1
ダブルギャップセンダスト消去ヘッド×1
モーター クォーツPLL・D.D.モーター×1
DCモーター×2
ワウ・フラッター 0.025%WRMS,±0.04%W・Peak(EIAJ)
周波数特性 ノーマルテープ 15Hz〜19kHz±3dB
クロムテープ   15Hz〜20kHz±3dB
メタルテープ   15Hz〜22kHz±3dB
SN比
(メタル・EIAJ)
59dB(ドルビーNR OFF)
ドルビーBオン時 1kHz以上で5dB向上,5kHz以上で10dB向上
ドルビーCオン時 1kHz以上で15dB向上,5kHz以上で20dB向上
歪率 0.5%(メタル,315Hz,3次高調波歪,EIAJ)
消費電力 24W
外形寸法・重量 460W×155H×350Dmm・約10.4kg


GX-Z9100EVの写真
A&D GX-Z9100EV
3HEAD CASSETTE DECK ¥99,800

1991年,GX-Z9100シリーズは再びモデルチェンジを行い,GX-Z9100EVとなりました。各部がさらにブラッシュ
アップされ,強化されていました。そして,このモデルを最後にGX-Z9100シリーズは終わりを告げ,赤井電機及び
A&Dブランドも民生用オーディオブランドから撤退してしまいました。

GX-Z9100EVでは,LC-OFCスーパーGX録再ヘッドがさらに改良されていました録音ヘッドと再生ヘッドを別々に
独立分離マウントし個別のアジマス調整を可能にしたGXISM(ジーエックスイズム)方式を採用し,アジマス調整の
精度を上げて,より優れた高域特性と音像定位を実現していました。
また,テープの走行をより滑らかにするために,テープの巻き取りリールの駆動方式に「デュアル・コンストラクション・
リール方式」を採用していました。これは,巻き取りリールの駆動をリールモーターからアイドラーを介して行うことに
より,リールモーターのトルクムラを吸収し,ワウ・フラッターの改善を図ったものでした。
また,サイドパネルがウッドパネルからセラミックコンポジット材(高密度樹脂)へと変更されていました。

GX-Z9100EV・GXISMGX-Z9100EV・D・C・R
 

●主な仕様●


ヘッド LC-OFCクラス1材採用スーパーGX録音ヘッド×1
LC-OFCクラス1材採用スーパーGX再生ヘッド×1
(独立分離マウント方式=GXISM)
ダブルギャップセンダスト消去ヘッド×1
モーター クォーツPLL・D.D.モーター×1
DCモーター×2
ワウ・フラッター 0.025%WRMS,±0.04%W・Peak(EIAJ)
周波数特性  15Hz〜23kHz±3dB(メタルテープ)
SN比
(メタル・EIAJ)
59dB(ドルビーNR OFF)
79dB(ドルビーNR-C,10kHz以上)
歪率 0.5%(メタル,315Hz,3次高調波歪,EIAJ)
消費電力 24W
外形寸法・重量 451W×154H×350Dmm・約10.4kg


※本ページに掲載したGX-Z9100,GX-Z9100EX,GX-Z9100EVの写真,
 仕様表等は1988年9月,1989年8月,1992年10月のA&Dのカタログ
 より抜粋したもので,三菱電機株式会社及び赤井電機株式会社に著作権があ
 ります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁
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