Victor JL-B37R
PLAYER SYSTEM ¥46,000
1976年に,ビクターが発売したプレーヤーシステム。当時のビクターのプレーヤーシステムのエ
ントリーモデル的存在ですが,各部に上級機の技術を投入して完成された本格的なプレーヤーシ
ステムで,コストパフォーマンスにすぐれた1台でした。

JL-B37RはDD方式で,フォノモーターには単体ターンテーブルTT-81TT-71と同じ12極24
スロットFGサーボ方式のDCモーターが搭載されていました。このモーターに,余裕のある駆動回
路と電源回路を付加し,起動特性1/2回転(331/3rpm時)という敏速な立ち上がり特性と1kg-
cm以上の大きなトルクを実現していました。FG速度検出部はモーターに一体化されており,180
個の検出溝をもつ磁性円盤と,180個に相当するプリント・コイルが対向しておかれた構造になっ
ていました。これにより,1回転で180個のパルスが1つのコイルに発生し,トータルな検出出力は
180個に相当するコイル全体の出力を積分した形であらわれ,きわめて高い検出精度が得られ
るようになっていました。



高トルク,高精度のフォノモーターを生かすべく,ターンテーブルは,直径32.8cm,重量2.15kg
慣性質量350kg・cm2というアルミダイカスト製の重量級ターンテーブルが採用されていました。
ターンテーブル外周のスカート部には,33・1/3rpm専用のストロボパターンが刻まれ,見やすいシ
ンプルなパターンとしていました。45rpm時も同時に合うように調整されていましたが,センタープ
レートタイプのストロボも添付され,直接確認もできるようになっていました。回転数微調整は±2.5%
の範囲で可能となっていました。
JL-B37Rは,クォーツロック方式ではありませんでしたが,高性能のフォノモーターと重量級のター
ンテーブルともあいまって,ワウフラッター0.03%,SN比72dB(DIN-B)という静かで高精度な回
転性能を実現していました。



トーンアームは,スタティックバランス型で,有効長245mmのJ字型アームで,ビクター独自のTH
(トレーシング・ホールド)方式を採用していました。TH方式は,メインウェイトの位置を下げ,アー
ム可動部の重心を低くし,まるでヤジロベエのように,アームは常に正しい位置を保とうとする働き
をもたせたもので,アームのトレーシング能力を高めていました。アームの軸受部には,「ニュー・ジ
ンバルサポート方式」が採用されていました。仮想一点支持構造で,4個のベアリングが仮想中心
点から等距離に配置され,どの回転方向に対しても各ベアリングにかかる力と回転角が等しく,一
点支持と同様な性能が得られるというもので,これ以降の同社のアームにも搭載された高精度なも
のでした。アームパイプの内部全体には,防振材を充填し空洞共振を低減していました。ヘッドシェ
ルは,純アルミニウムによる溶融鍛造ヘッドシェルで,内部の空洞をなくし,密度を高めることによっ
て共振を抑えていました。ヘッドシェルの取り付けには,テーパー状のシリンダーをプラグインナット
で締め付け,ガタをなくした,チャッキングロック式ヘッドコネクターが採用されていました。
このトーンアームには,単売されているZ-1(¥15,000)の技術を受けついだMM型カートリッジ
Z-1Sが標準装備されていました。



キャビネットは,積層型ではなくボックス型でしたが,内部空間を少なく抑えた二重構造キャビネットで
大きなハウリングマージンを確保していました。また,キャビネットの仕上げは高級感のあるなローズ
ウッド調としていました。

以上のように,JL-B37Rは,同社のエントリーモデルながら,上級機の技術を導入し,しっかりとした
内容を持つ音質重視の本格的なプレーヤーシステムとしてバランスのとれた設計がなされていました。
現在ではこの2倍以上の価格でも,とうていこの内容のプレーヤーはできないのは間違いありません
が,当時においてもコストパフォーマンスの高い1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ハイ・トルク・モーターと
重量級ターンテーブルで
D・Dの音質改善。

◎ハイトルク精密FGサーボ・モーター。
◎2.15kg重量級ターンテーブル。
◎高性能ニュー・ジンバル・サポート・アームと
 Z-1S型カートリッジ。
◎高密度2重構造キャビネット。




●JL-B37R型規格●

●ターンテーブル部●


モーター
FG検出・DCサーボ
駆動方式
ダイレクト・ドライブ
回転数
331/3rpm,45rpm
回転数調整範囲
±2.5%
起動特性
1/2回転(33・1/3rpm)
ワウ・フラッター
0.03%(WRMS)
S/N
62dB(IEC-B),72dB(DIN-B)
ターンテーブル
32.8cmアルミ・ダイキャスト




●トーンアーム部●


型式
ニュー・ジンバル・サポート・TH方式
スタティック・バランス
全長
330mm
有効長
245mm
トラッキングエラー
+1°48′-1°31'
オーバーハング
15mm
針圧可変範囲
0g~3g(0.25gステップ)
取付カートリッジ自重
(ヘッドシェル含む)
15g~23g
重量級カートリッジ用サブウェイトSW-37型別売




●カートリッジ部●


型式
MM型
周波数特性
10~25,000Hz
出力電圧
3.0mV(1kHz,50mm/sec)
セパレーション 25dB(1kHz) 
インピーダンス  3.1kΩ(1kHz) 
ダイナミックコンプライアンス 10×10-6cm/dyne(100Hz) 
スタティックコンプライアンス  30×10-6cm/dyne 
針先  0.5mil丸針ダイヤ 
適正針圧  1.5~2.0g 
自重  5.5g 
交換針型番  DT-Z1S 




●キャビネット部●


仕上げ
ローズウッド色
ダストカバー
フリーヒンジ付き
フット
アイソレーター





●その他●


消費電力
5.5W
電源周波数
50/60Hz(100V)
寸法
176H×490W×411Dmm
重量
11.0kg
※ 本ページに掲載したJL-B37Rの写真・仕様表等は1976年8月の
  Victorのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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