KP-880Dの写真
TRIO  KP-880D
QUARTZ PLL DIRECT DRIVE PLAYER ¥89,800

1983年に,トリオ(現ケンウッド)が発売したアナログプレーヤー。トリオは,1976年発売の
KP-7300以来,重量級ターンテーブルによる 「大慣性質量ターンテーブル」など,正攻法の
しっかりした作りのアナログプレーヤーを作っていました。そうした中,モーターとトーンアーム
というキーとなる部分に新しい技術を投入して完成された1台が,KP-880Dでした。

モーターには,1982年のKP-800で開発され,初搭載されたDL(ダイナミック・セン ターロッ
ク)モーターを搭載していました。DLモーターシステムは,スピンドルの外径面に切った特殊な
オイルスリットとオイルホールにより,スピンドルの回転に伴いオイルが循環し,スピンドル全
体を超高圧薄膜でカバーしてスラスト受け部と剛体化すると同時に,ヘリングボーンと呼ばれ
逆くの字形に加工されたオイルスリットが,流体の圧力を利用した強力な圧力でスピンドルを
回転軸上に固定し,非常に安定した回転を実現するというものでした。
このDLモーターシステムには,(1)ワウフラッター0.006%の安定した回転を実現,(2)軸
受部からの振動及びノイズの発生を追放,(3)外部振動が伝わりにくい,(4)摩耗する部分
をもたないため長期使用しても性能の劣化がないなどのメリットがあるということでした。

DLモーターシステム

KP-880Dには,伝統的な大慣性質量ターンテーブルが搭載され,450kg・cm2の 慣性質
量により,トリオ称する「慣性ロック」をし,動的な回転ムラを抑えていました。さらに,クォー
ツ発振子の基準信号,速度検出信号を比較して位相差を制御するクォーツPLL方式により
静的な定常回転の回転ムラをクォーツロックで追放していました。回転数の検出にはマグネ
ットとモーターのローターの磁束密度変化によって発電するFGコイルが用いられ,速度制御
系にはIC内部にデジタルメモリーをもつ新開発ICが使用されていました。コイルや抵抗を全く
用いない方式であるため,温度特性や安定性にすぐれた性能が確保されていました。

DSトーンアーム

トーンアームは,1ナイフ・2ピボット方式のDS(ダイナミック・スタビリティ)トーンアームをこの
KP-880Dで新開発し,初搭載していました。このDSトーンアームは大信号時の音溝の力に
よりアームが前方に引っ張られアームの支点が前に引っ張られて生じる支点のずれを防ぐた
め,前方へのアームの動きを防ぐ独自のナイフエッジを設置してトーンアームの支点をがっち
り固定したものでした。軸受け部のガタがなくなり,高剛性なアーム支持を実現していました。
こうした設計により,シャープな音像定位,SN感にすぐれた低音域,透明な高音域などクリア
な音質が実現されていました。

高剛性リブ付きアームパイプ

さらに,アームパイプには,アルミをベース材としたストレートパイプが搭載されていました。トー
ンアームは高剛性で適正なマス(針先から見た質量が軽く応答性にすぐれている)をもつことが
理想とされますが,アルミパイプは軽量という点ではすぐれているが,剛性がとりにくいという点
で敬遠されていました。高剛性と適正なマスという二律背反ともいえる条件を考えて開発された
のが高剛性リブ付きパイプで,アームパイプ内部に5本のリブを設けて形状的に剛性を高め,
さらに硬質アルミナを積層した構造をとることで,共振時の最低共振周波数を低く抑え,演奏中
に発生するネジレや曲がりにも強い高い剛性をもち,軽量なトーンアームが実現されていました。

KP-880Dでは,モーター支点(ターンテーブルの回転支点)とアーム支点を明確にするために
メカニカルショート構造が採用されていました。アーム支点とモーター軸をARCB材という強靱な
樹脂系素材で固定し,同時に,DLモーターシステムもダイレクトに固定されていました。この構
造は,後のKP-1100で は,アーム系,モーター系,トランスを除く回路系の三大要素をすべて
強固なフレームに取り付け一体化した高剛性「ユニファイド・ダイキャストフレーム」へと発展して
いくことになりました。

KP-880Dの写真

以上のように,KP-880Dは,中級機ながら,基本に忠実に,しっかりとした作りがなされたアナ
ログプレーヤーで,後の名機KP-1100やKP-9010などに搭載された基本的な技術はすべて
ここで確立されていました。


以下に,当時のカタログの一部を御所介します。



DL&DS,
世界初の2つのテクノロジーで
理想再生に迫ります。KP-880D


◎新開発のICを採用したクォーツPLL
◎450kg・cmの大慣性ターンテーブルで
 慣性ロック,PLLサーボ回路をクォーツロック
◎モーター固定はメカニカルショート構造



●KP-880D定格●



●モーター部●

駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター クォーツPLLコアレス&スロットレス
3相スイッチング,プレーンドライブ,DCサーボ
起動トルク 1.2kg・cm
ターンテーブル 33cm,1.9kg,アルミ合金ダイキャスト
慣性モーメント 450kg・cm2(ゴムシート含む)
回転数 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.006%(FG直読法)
SN比 82dB(DIN-B)



●トーンアーム部●

型式 スタティックバランスストレートアーム
アーム実効長 245mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー +1.8°〜−1.0°
針圧可変範囲 0〜3g(0.1gステップ)
適用カートリッジ重量 2〜12g(付属シェル使用時)



●電源部その他●

電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 14W(電気用品取締法に基づく表示)
寸法 490(幅)×182(高さ)×410(奥行)mm
重量 13kg
付属機構 無接点オプティカル検出オートアップ機構
専用シェル2個 (HS51 ¥2,000)
トーンアーム高さ調整機構(可変範囲7mm)



KP-880DUの写真
KENWOOD  KP-880DU
QUARTZ PLL DIRECT DRIVE PLAYER ¥89,800

1984年に,トリオは,国内ブランド名の統一を行いました。海外で主に使用し,国内では実験
的高級品のみに使用していた「KENWOOD(ケンウッド)」が全ての製品に付けられるようにな
りました。そして,TRIO・KP-880DはKENWOOD・KP-880DUへとモデルチェンジされまし
た。とはいえ,価格も内容も基本的に同一のものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



DL&DS,
世界初の2つのテクノロジーで
理想再生に迫ります。KP-880DU


◎新開発のICを採用したクォーツPLL
◎450kg・cm2の大慣性ターンテーブルで
 慣性ロック,PLLサーボ回路をクォーツロック
◎モーター固定はメカニカルショート構造



●KP-880DU定格●



●モーター部●

駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター クォーツPLLコアレス&スロットレス
3相スイッチング,プレーンドライブ,DCサーボ
起動トルク 1.2kg・cm
ターンテーブル 33cm,1.9kg,アルミ合金ダイキャスト
慣性モーメント 450kg・cm2(ゴムシート含む)
回転数 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.006%(FG直読法)
SN比 82dB(DIN-B)



●トーンアーム部●

型式 スタティックバランスストレートアーム
アーム実効長 245mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー +1.8°〜−1.0°
針圧可変範囲 0〜3g(0.1gステップ)
適用カートリッジ重量 2〜12g(付属シェル使用時)



●電源部その他●

電源 AC100V,50/60Hz
消費電力 14W(電気用品取締法に基づく表示)
寸法 490(幅)×182(高さ)×410(奥行)mm
重量 13kg
付属機構 無接点オプティカル検出オートリフトアップ機構
アンチスケーティング機構
専用シェル2個 (HS51 ¥2,000)
トーンアーム高さ調整機構(可変範囲7mm)

※ 本ページに掲載したKP-880D,KP-880DUの写真・仕様表等
は1983年11月,1985年11月のTRIOのカタログより抜粋したもの
で,ケンウッド株式会社に著作権があります。したがって,これらの写
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