M-08の写真
LUXMAN  M-08
POWER AMPLIFIER ¥580,000

1994年に,ラックスが発売したパワーアンプ。C-08とのペアを想定したパワーアンプで,前面には 電源スイッ
チのみというシンプルながら堂々たる筐体を持った重量級のパワーアンプでした。それまでのラックスのアンプと
は設計や音の方向性にも変化が見られていました。

M-08の1つめの特徴は,,「CSSC(コンプリメンタリー・シングル・スタガー・サーキット)回路」の搭載でした。広
帯域でハイ・スルーレイトな増幅を実現するためのもので,回路の基本特性を練り上げ,過剰な制御を抑えていま
した。CSSC回路は,全段直結ピュア・コンプリメンタリーの一段増幅回路で,電圧増幅段の音質へのフィルター
効果を防ぐために多段電圧増幅としないというもので,ラックス伝統の「一段増幅アンプ」の技術を継承し,適度な
NFBと必要充分なゲインを組み合わせるというものでした。M-08では,初段は入力インピーダンスを高くとり,動
作基準点を明確にしたFET差動とカスコード接続トランジスターのコンプリメンタリー回路で,2段目は電流伝送手
段としてベース接地回路となっていました。ドライバー段は電流増幅率の高い3段ダーリントン接続のコンプリメン
タリー回路で,終段は抵抗値が小さくロスの少ないマルチ・エミッタートランジスターによる3パラレル・プッシュプル
回路となっており,強いスピーカードライブ能力を確保していました。

2つ目の特徴は,「ODβ(オプティマイズド・デュアル・NFB)サーキット」の搭載でした。NFBをかけるまえのオープ
ンループでアンプの性能を高め,そこに適量のNFBをかけ,帯域外から音像をひき締めるDCサーボを組み合わせ
るという「デュオ・ベータ・サーキット」を継承,発展させたもので,回路の裸特性を上げ,100%の DC帰還を可能と
して,DCサーボアンプのない回路構成とし,中高域の交流帰還は,回路ごとのフィードバック量を細かに最適化して
全域のエネルギーバランスが整えられていました。

3つ目の特徴は,「ハイ・イナーシャ電源」と称された強力な電源部にありました。電源部の容量や瞬時供給能力と
いった基本性能を高めたうえで,電源部へのNFB量を極小化し,制御を軽くしてより緩やかな変動にしたもので,
電源電圧の変動幅の少ない自然な電源供給を行うものでした。
M-08の電源部は,800VA相当の大型の電源トランスを核としたもので,配線材に高品位ワイヤーを使用し,基板
上での給電バスバーを用いるなどして,電源部全体の低インピーダンス化が図られていました。電源トランスの2次
巻き線側は,回路ごとに独立した3巻線を採用し,さらに整流後にはL・R個別のレギュレーター回路を配備し,電源
を介しての相互干渉を防いでいました。終段用の巻き線は整流器を含めL・Rを分離し,4個のブロック型コンデンサー
を備えて,強力な瞬時電流供給能力を確保していました。

M-08の電源部パーツM-08のパワーブロック

このような強力な電源回路をベースにして,大型のバイポーラトランジスターによる3パラレルプッシュプル・ステージに
よる出力段は,8Ω負荷時200W/chの余裕ある出力規模を実現していました。さらに,4Ω負荷時400W,2Ω負荷
時800Wと,理論値通りのリニアリティが確保され,低インピーダンス・低能率のスピーカーに対しても安定したドライブ
能力が実現されていました。

M-08の内部

筐体内部のコンストラクションは,高剛性とノイズ対策を徹底したものとなっていました。高剛性で重量級の5点接地FRP
ボトムシャーシが採用され,その上に電源トランス,大型ブロックコンデンサーなどの整流ユニットを前後バランスよく配置
し,大型ヒートシンクを左右に分離した,シンメトリカル構造の筐体コンストラクションがとられ,重量バランス,内部の温度
的均衡まで厳しく管理して設計されていました。さらに,ノイズ対策を徹底するため,各回路の相互干渉を排除するシール
ド板を使ったボックス遮断構造が採用され,各ステージを細分化して,高周波ノイズや漏洩フラックスを防いでいました。
パーツの面でも,非磁性体抵抗,銅スチロールコンデンサー,銅製バスバー,高純度6N無酸素銅ケーブルなど,厳選さ
れていました。特に,特徴的なパーツとして,特殊な低温溶接が施された端子を持つ直流抵抗の小さな高純度アルミ低箔
倍率電解コンデンサーが採用され,音の立ち上がりの良さが確保されていました。

機能的にはシンプルですが,リアパネルには,様々な出力インピーダンス,ゲインを持つコントロールアンプ,プリアンプに
対してマッチングがはかれるように,アンバランスRCA入力とバランス入力が備えられ,それぞれに対応した高精度な固
定抵抗切換方式のミュート・レベル・スイッチが装備されていました。また,電源回路の極性を管理するためのラックス伝
統のレインフェーズセンサー,極太ケーブルも装着できる万力型の大型のスピーカー端子も装備されていました。

以上のように,M-08しっかりと物量が投入され,AB級動作のパワーアンプとして,これまでのラックス独特の美音傾向
からやや方向を変え,ラックス伝統の音の魅力も備えながら,力強いスピーカー駆動力,シャープな音への対応などが図
られ,新しい方向性を持ったラックス製パワーアンプとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



限りなく自然であること。
その一点にラックスはすべてを尽くした。


力と質のかつてない領域へ。

◎自然な高域と音の立ち上がりに,
  CSSC回路の成果。
◎ 全帯域にわたる音色の統一を
  果たしたODβサーキット。
◎ 個性はスピーカーも鳴らし切る
  余裕のドライバビリティ。
◎ クリーンなエネルギーを供給する
  強大で緻密な電源部。
◎ 音楽の生命そのものと呼応する
  独奏のハイ・イナーシャ電源。
◎ 高剛性とノイズ対策を徹底した
  筐体コンストラクション。
◎ カスタムパーツを全面投入。
  随所に音質へのこだわり。




●M-08 SPECIFICATIONS●

連続実効出力 200W(8Ω,20Hz〜20kHz)
全高調波歪率 0.004%以下(8Ω,両ch同時動作,定格出力)1kHz
混変調歪率 0.008%以下(8Ω,両ch同時動作,定格出力)1kHz
周波数特性 20Hz〜20kHz+0,−0.1dB
5Hz〜100kHz+0,−0.7dB
入力感度 1V/200W(8Ω)
入力インピーダンス 50kΩ(COAXIAL),65kΩ(BALANCE)
SN比 120dB(IHF-A)
付属装置 COAXIAL-BALANCE
入力アッテネーター
ライン・フェイズ・センサー
電源電圧 AC100V(50/60Hz)
消費電力 816W(電気用品取締法の規定による)
寸法 465W×220H×475Dmm
重量 42kg(NET)

※本ページに掲載したM-08の写真,仕様表等は1994年12月のLUXMAN
 のカタログより抜粋したもので,ラックス株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられてい
 ますのでご注意ください。

  
 
 
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