YAMAHA NS-100M
SPEAKER SYSTEM ¥43,000
1979年に,ヤマハが発売したスピーカーシステム。1974年にNS-1000/NS-1000Mを発売し,スピーカー分野
で高い評価を得るようになったヤマハは,1975年には,画期的なシートコーンを採用したNS-451を発売し,さらに
1977年には,このシートコーンとソフトドームユニットによる2ウェイシステムNS-10Mを発売しました。NS-10Mは
小型モニターとして人気を獲得し,NS-1000Mとともにロングセラーモデルとなりました。そして,このNS-10Mの上
級機として発売された3ウェイスピーカーシステムがNS-100Mでした。

ブックシェルフ型スピーカーは,そのまま床に設置するフロア型スピーカーに対して,何らかのスタンド,置き台が必要
なスピーカーシステムということになって,ウーファーをはじめとするユニットの大型化により,フロア型よりも大きなもの
まで登場していきました。しかし,ブックシェルフ型という名称は,本来,本棚にも納まるほどのサイズであることに由来
するものでした。
そして,NS-100Mは,「ブックシェルフの原典」というコンセプトを打ち出していました。このジャンルのスピーカーに不
可欠なスペース・ユーティリティをテーマに,本棚に納めうるほどの手頃なサイズ=ちょっと大きめのボストンバッグぐら
いの小ささの中で,本格的な3ウェイシステムとして技術を投入し,音質を追求して完成させたスピーカーシステムで,
ヤマハは,「凝集の3ウェイ」とも称していました。

トゥイーターは,口径3.0cmのソフトドーム型で,ボイスコイルは軽量で導電率の良い銅クラッドアルミリボン線をエッ
ジワイズ巻きにし,ソフトドーム振動板に直結し,軽量化のためボイスコイルボビンレス構造とすることで,振動系の軽
量化を実現して,総磁束20,000マクスウェルという強力な磁気回路とあわせ,ハイトランジェントを実現していました。
振動板の前面には,指向特性を改善するアコースティックディフューザーが装着されていました。



スコーカーは,口径5.5cmのソフトドーム型で,タンジェンシャルエッジ部とドーム部の面積比率及びドーム形状を周
波数特性と指向特性の面から最適値に設定していました。さらに,振動板背面には,グラスウールの量を最適値0.3
±0.05gという厳密な設計としていました。ボイスコイルは,ガラス繊維を素材にしたヤマハ独自のFRPシートに,占
積率の良い銅平角線を強固に巻線し,高耐入力を実現し,強力なフェライトマグネットによる磁気回路とあわせて高能
率を実現していました。ユニット内部に充填されたグラスウールとバックキャビティの設置による空気制動が相乗して
foも400Hzときわめて低く仕上げられ,ウーファーとのつながりもよくなっていました。



トゥイーターとスコーカーのソフトドーム振動板は,専用に開発した縦糸と横糸の密度を同じにして,方向性やバラツキ
を抑えたオリジナル織布を成形したものでしうた。7種類の粘弾性薬品を6時間もかけてブレンドしたマルチコーディン
グ剤を開発し,トゥイーターとスコーカー両方に最適なこのコーティング剤を塗布することで,音のつながりやキャラク
ターの統一を実現していました。そして,タンジェンシャルエッジごとの一体成型で,エッジが後から取り付けられること
もなく,またコーティング剤が成型後に塗布されることもなく,すぐれたバランスと高い精度が確保されていました。



ウーファーは,20cm口径のコーン型で,コニカルタイプのストレートコーンでした。この白いコーンは,ヤマハ独自のシ
ート製法によるコーン紙で,外国産の針葉樹系の原材料を,旧来の和紙系統の技術を加味して特殊処理して製作した
ものでした。通常,コーン紙は初めからコーン型に抄き上げる抄き上げコーンが大半を占めていますが,ここで採用さ
れたシート製法は,1枚のシート状につくられたコーン紙を後からコーン型(円錐形)に成型する方法で,見た目は,コー
ンの中に継ぎ目があることでした。こうして作られたシートコーンは,高圧のプレスで作られる高密度のシートを素材に
していることで,密度や厚みのムラが少なく,軽量でバインダーの量が少ない強度の高いコーンを比較的ローコストで
作れるという利点がありました。



白いコーンを駆動するボイスコイルは,20cmのコーンに対して5.2cmという大口径のもので,占積率の良い銅平角
線を,クラフトペーパーのボビンに耐熱接着材で強固に巻線した構造になっていました。また,ダンパー径も大振幅に
耐えられるように従来より20%大きくし,材質においては含浸剤も新たに吟味され,リニアリティが高められていました。
マグネットも,総磁束78,000マクスウェルという強力なものが搭載され,すぐれた立ち上がりを確保していました。



ネットワークは,回路を構成するコイルに大型のフェライトコアによるボビンに直流抵抗の少ない純度99.98%の
銅線を使用し,コンデンサーには,音質で吟味されたMPチューブラコンデンサーを採用していました。また,コイル
同士の影響を少なくするために,お互いを直角に取り付け,INPUT端子からOUTPUT端子まで中継を行わない
無障害設計などの配慮が行われていました。
トゥイーターとスコーカーには,許容入力が大きく音質劣化が抑えられた精密なアッテネーターを使用した,連続可
変タイプのレベルコントローラーが搭載され,中高域のレベルを自在に調整できるようになっていました。

エンクロージャーは,密閉型の強固なものとなっていました。全面同一のパーティクルボードで,各部を強力な接着
剤で接合した強固な六面一体構造となっていました。特に厚さの違うバッフル板(20mm)と側板(15mm)の接合に
は,三方流れ留め組を採用し,剛性のアップを図っていました。充填材には,特に低域の量感を出すために密度の
違う2種類のグラスウールを場所によって使い分けるなど吟味されていました。外装仕上げは,NS-1000Mと同じ
7工程塗装のブラック仕上げの精悍なものとなっていました。

以上のように,NS-100Mは,3ウェイスピーカーとして,比較的小型ながらしっかりと物量と技術が投入された本格
的なスピーカーシステムとして完成されていました。全体にバランスのとれた音は,上級機のNS-1000M,弟機の
NS-10Mと比べ,家庭では鳴らしやすいものとなっていました。しかし,NS-1000MとNS-10Mという同社の人気
モデルに挟まれた形になっていたためか,大きく人気を得るまでには至らなかった残念な1台だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ブックシェルフの原典
凝集の3way

   100MUSIC
NS-100M

「生の演奏」への馴染み,あるいは,造詣が深いほど
このシステムへの傾斜も深くなる
extra Sexy
tweeter
squawker


extra Bass
woofer




●NS-100Mの規格●

型式  3ウェイ密閉ブックシェルフ 
ウーファ  20cmコーン型 
スコーカ  5.5cmソフトドーム型
ツィータ  3.0cmソフトドーム型 
最大入力  60W 
定格入力  30W 
出力音圧レベル  90dB/w・m 
周波数特性  50Hz~20kHz 
インピーダンス  6Ω 
クロスオーバー特性  低音-中音:1kHz(12dB/oct)
中音-高音:6kHz(12dB/oct) 
レベルコントロール  中音・高音連続可変型 
外装仕上  リアルウッド・黒色塗装 
外形寸法  496H×276W×251Dmm 
重量  12kg 
※ 本ページに掲載したNS-100Mの写真・仕様表等は,1979年9月
 のYAMAHAカタログより抜粋したもので,ヤマハ株式会社に著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をする
 ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。

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