Accuphase P-500
STEREO POWER AMPLIFIER ¥550,000

1985年に,アキュフェーズが発売したパワーアンプ。アキュフェーズは1972年の発足で,第1号パワーアンプ
P-300が,すでに150W+150Wと当時の国産アンプとしては驚異的な大出力をもっていたように,伝統的に
ハイパワーアンプを作り続けていきました。そうした中,ステレオ構成のハイパワーアンプとして,P-400(1979
年,200W+200W・8Ω),P-600(1983年,300W+300W・8Ω)を発売し,P-500の発売に至りました。

P-500の出力段は,コレクター損失(Pc)150Wのトランジスターを12個/ch・6パラレルプッシュプルで構成さ
れ,出力段のパワー効率を70%として,理論限界出力は4,200Wにもなるもので,定格出力250W/ch(8Ω)
500W/ch(2Ω)に対して十分な余裕を持ち,安全度の高い出力段の構成となっていました。
250W/ch(8Ω),500W/ch(2Ω)という大出力を支える電源部は,最大電力容量が1,200VAという大容量の
大型のトロイダル電源トランスを核に,47,000μFという大容量フィルターコンデンサーを2基搭載していました。
さらに,この余裕ある出力段と電源部により,前面下部のシーリングパネル内のスイッチを切り換え,L・Rチャンネ
ルをブリッジ接続(BTL接続)で動作させると,840W(8Ω),1000W(4Ω)のモノフォニックパワーアンプとして
使うことができるようにもなっていました。


また,出力段のPNP,NPNそれぞれの素子が入力信号によってカットオフにならないように動作点を厳密に設定
することにより,小出力時のスイッチング歪みを抑えていました。そして終段をドライブする前段は,ノンスイッチング
A級ドライブと等価なMOS FETを採用し,カスコード・プッシュプルで構成していました。さらにこのMOS FETに信
号を送り込む前段もA級カスコードプッシュプルとし,低歪みで安定した出力段の構成としていました。

入力回路は,高利得で高周波特性にすぐれ,入力インピーダンスの変動に対しても歪率の悪化がないという理想
的な特性をもつカスコード・ブートストラップ回路で構成し,さらにプッシュプルで構成することで,前述の広帯域ドラ
イブ段とあいまってNFループ内の特性を飛躍的に改善していました。

P-500は,INPUTにダイレクトに入力される直結方式(DC)アンプで,DCドリフトはスピーカーの破損につながる
ため,アキュフェーズオリジナルのDCサーボ方式によって直流成分をカットし,温度変化によるアンプ自体のDCドリ
フトも抑えていました。

入力は,通常のピン端子の不平衡入力の他に,キャノンタイプの平衡入力も装備され,前面のシーリングパネル内
のスイッチで切り換えられるようになっており,広い範囲のインピーダンスの平衡出力とバランス接続ができるよう
になっていました。また,超低域ノイズをカットするために,10Hz,−18dB/octのサブソニック・フィルター・スイッチ
も装備されていました。スピーカー出力は2系統あり,どちらか1系統に切り換えて使用するようになっていました。
L・R独立,1dBステップの2連アッテネーターも装備され,レベル・コントロールの位置で周波数特性が変化しないよ
うに,入力回路も配慮されていました。
フロントパネルには,dB表示と8Ω時の出力直読のワット表示(−60dB・0.00025W〜+3dB・500W)の大型の
アナログメーターが装備され,電源スイッチ以外の各種機能がシーリングパネル内に収められていました。この左右
対称のシンプルな和を感じさせるデザインは,このP-500に初採用され,その後のアキュフェーズのパワーアンプの
多くに継承されていきました。

以上のように,P-500は,アキュフェーズのP-600に次ぐハイパワーアンプとして,中核をなす1台として設計され,
各部に高い完成度を実現していました。音質的にも,伝統的なアキュフェーズらしさをもちつつ,上級機のP-600よ
りもしなやかさをもったバランスのとれた音は,中庸をいく使いやすいものとなっていました。当時,雑誌記事や販売
店の試聴など,スピーカーの試聴もよく登場していたことを思い出します。そして,内部構造においても,デザインに
おいても,この後の同社のパワーアンプに継承されていき,ひとつの流れを作ることとなりました。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



全段プッシュプル構成。DCサーボで全信号系を直結。
ステレオ=250W/ch(8Ω),モノフォニックで840W(8Ω)
を保証する6-パラレル・プッシュプル・パワーステージ。
低負荷インピーダンス対応設計により,
2Ω(ステレオ=500W/ch)の超低インピーダンス負荷も完全駆動。

◎充実のクオリティパワー,8Ω=250W/ch
 2Ω=500W/ch
◎ブリッジ接続により8Ω=840W,4Ω=1,000W
 の純粋モノフォニック・アンプ化
◎小出力時のひずみ率と高域の安定性を改善した
 「カスコードPP+MOS FETカスコードPP」ドライブ段
◎NFループ内の素特性を飛躍的に改善した
 「カスコード・ブートストラップ差動プッシュプル」
◎DCサーボ方式直結アンプを構成
◎外来誘導雑音の影響を受けない
 キャノン・タイプ平衡入力
◎10Hz,−18dB/octサブソニック・フィルター
◎−60dB〜+3dB間のパワーを直読する
 アナログ式大型メーター
◎フロントサブパネルにファンクションを収納した
 重厚でシンプルなレイアウト




●P-500 保証特性●

連続平均出力
(20〜20,000Hz ひずみ率0.02%)
ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
  500W/ch  2Ω負荷
  420W/ch  4Ω負荷 
  250W/ch  8Ω負荷 
  125W/ch 16Ω負荷
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
  1,000W   4Ω負荷
    840W   8Ω負荷
    500W  16Ω負荷
全高調波ひずみ率 ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
 0.02% 2Ω負荷
 0.01% 4〜16Ω負荷 
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 0.02% 4Ω負荷
 0.01% 8〜16Ω負荷 
IMひずみ率(SMPTE-IM) 0.003%
周波数特性 20〜20,000Hz +0,−0.2dB
(連続平均出力時,レベルコントロールMAX) 
0.5〜300,000Hz +0,−3.0dB 
(1W出力時,レベルコントロールMAX) 
0.5〜100,000Hz +0,−3.0dB 
(1W出力時,レベル・コントロール−6dB)
ゲイン(利得) 28.0dB ステレオ・モノフォニック仕様時共
負荷インピーダンス 2〜16Ω ステレオ仕様時
4〜16Ω モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
ダンピング・ファクター(IHF 50Hz) 500 ステレオ仕様時
250 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
入力感度(8Ω負荷) ステレオ仕様時
 1.78V 連続平均出力時
 0.12V 1W出力時
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 3.26V 連続平均出力時
 0.12V 1W出力時 
入力インピーダンス 20kΩ不平衡/40kΩ平衡
S/N(A補正) 120dB  入力ショート 連続平均出力時 
100dB  入力1kΩ   1W出力時 
(ステレオ・モノフォニック仕様時共)
サブソニック・フィルター 10Hz −18dB/oct
出力メーター 対数圧縮型 −60dB〜+3dB及び出力直読目盛
使用半導体 82Tr,10FET,8IC,79Di
電源・消費電力 100V,117V,220V,240V 50/60Hz 
消費電力  115W 無入力時
         840W 電気用品取締法
         850W 8Ω負荷定格出力時
寸法・重量 幅480mm×高さ218mm(脚含む)×奥行445mm 
33.5kg


Accuphase P-500L
STEREO POWER AMPLIFIER ¥530,000

1989年に,P-500はモデルチェンジされ,P-500Lが登場しました。外観上は違いが分からないほどでした
が,内部の強化が図られつつ,価格的には値下げされ,コストパフォーマンスが高められていました。

最大の改良点は,出力段の大幅な強化でした。コレクター損失(Pc)150Wの広帯域トランジスターをチャンネ
ルあたり20個使用した10-パラレル・プッシュプルで構成された出力段へと強化され,270W/ch(8Ω),420W
/ch(4Ω),550W/ch(2Ω)と出力もアップし,低インピーダンス駆動能力も高められていました。
スピーカー出力は,P-500と同様に2系統でしたが,バイワイヤリング接続に対応して,新たに2系統を同時に
並列で使用できるように改良されていました。


以上のように,P-500Lは,P-500とデザイン的にはほとんど違いが分かりませんが,内容さらに強化し,完成
度をさらに高めたパワーアンプでした。通常,モデルチェンジでは引き上げられる価格も逆に引き下げられている
など,アキュフェーズの良心を感じさせられたものでした。音質的にも,低域の厚みや音場感などが強化されてい
ました。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



全段プッシュプル構成。DCサーボで全信号系を直結。
ステレオ=270W/ch(8Ω),モノフォニックで840W(8Ω)
を保証する10-パラレル・プッシュプル・パワーステージ。
低負荷インピーダンス対応設計により,
2Ω(ステレオ=550W/ch)の超低インピーダンス負荷も完全駆動。

◎2Ω=500W/ch,4Ω=420W/ch,
 8Ω=250W/chを保証する10-パラレル・
 プッシュプルの強力出力段 
◎ブリッジ接続により4Ω=1,100W,8Ω=
 840Wの純粋モノフォニック・アンプ化
◎小出力時のひずみ率と高域の安定性を改善した
 「カスコードPP+MOS FETカスコードPP」ドライブ段
◎性能を極限まで追い上げたカスコード・プッシュプル
 差動入力段
◎差動入力およびドライブ段は左右独立電源を構成。
 正確な音場を再現
◎DCサーボ方式直結アンプを構成
◎外来誘導雑音の影響を受けない
 バランス入力
◎10Hz,−18dB/octサブソニック・フィルター
◎−60dB〜+3dB間のパワーを直読する
 アナログ式大型メーター
◎2系統のスピーカーまたはバイ・ワイヤリング
 スピーカーを接続できる出力端子
◎天然パーシモンのサイドボード


 

●P-500L 保証特性●
【保証特性はEIA測定法RS-490に準ずる】

連続平均出力
(20〜20,000Hz間)
ステレオ仕様時(両チャンネル同時動作)
  550W/ch  2Ω負荷
  420W/ch  4Ω負荷 
  270W/ch  8Ω負荷 
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
  1,100W   4Ω負荷
    840W   8Ω負荷
全高調波ひずみ率 ステレオ及びモノフォニック仕様時
 0.01% 4〜16Ω負荷 
 0.02% 2Ω負荷
IMひずみ率 0.003%
周波数特性 20〜20,000Hz +0,−0.2dB
(連続平均出力時,レベルコントロールMAX) 
0.5〜180,000Hz +0,−3.0dB 
(1W出力時,レベルコントロールMAX) 
0.5〜150,000Hz +0,−3.0dB 
(1W出力時,レベル・コントロール−6dB)
ゲイン(利得) 28.0dB (ステレオ/モノフォニック仕様時共)
負荷インピーダンス 2〜16Ω ステレオ仕様時
4〜16Ω モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
ダンピング・ファクター(IHF 50Hz) 500 ステレオ仕様時
250 モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
入力感度(8Ω負荷) ステレオ仕様時
 1.85V 連続平均出力時
 0.12V 1W出力時
モノフォニック仕様時(ブリッジ接続)
 3.26V 連続平均出力時
 0.12V 1W出力時 
入力インピーダンス アンバランス20kΩ,バランス40kΩ
S/N(A補正) 120dB  入力ショート 連続平均出力時 
 95dB  入力1kΩ   1W出力時 
(ステレオ/モノフォニック仕様時共)
出力メーター 対数圧縮型 −60dB〜+3dB及び出力直読目盛
使用半導体 88Tr,16FET,8IC,60Di
電源・消費電力 100V,117V,220V,240V 50/60Hz 
消費電力  185W 無入力時
         980W 電気用品取締法
         920W 8Ω負荷定格出力時
寸法・重量 幅481mm×高さ210mm(脚含む)×奥行445mm 
35.0kg

※本ページに掲載したP-500,P-500Lの写真,仕様表等は1985年,
 1989年のAccuphaseのカタログより抜粋したもので,アキュフェーズ
 株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
 転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

  
 
 
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