DENON PMA-500
INTEGRATED AMPLIFIER ¥75,000
1972年に,デンオン(現デノン)が発売したプリメインアンプ。1963年に日本コロムビアが,放送局用送り出し
機器の分野で実績を持っていた日本電気音響株式会社を吸収合併し,放送局用の業務用機器にDENONブ
ランドを称するようになり,さらに,1971年より特にオーディオファン向けの民生用オーディオ機器にもDENON
ブランドがつけられるようになりました。そんな民生用DENONブランド最初期のプリメインアンプの主力モデル
がPMA-500でした。
パワーアンプ部は,当時,海外の著名なアンプに使用され,音質的にも高い評価を受けていたアメリカのモトロー
ラ社のダーリントン・パワートランジスター(電流増幅率を大きくするために,トランジスターの出力を別のトランジス
ターの入力とするダーリントン接続を1つのパッケージ内で行ったトランジスター)をPNP-NPNペアで使用してい
ました。電気的特性で対称性がすぐれたPNP-NPNダーリントン・パワートランジスターと直流アンプ並の全段直
結OCL回路からなるパワー段は,−3dB定格出力時で高調波歪率0.03%以下,混変調歪率0.06%以下と
いうすぐれた特性を実現し,出力インピーダンスも十分に低くすることができ,中低音域のダンピングと出力帯域
幅が大きく改善していました。また,このダーリントン・パワートランジスターは,ジャンクション耐熱温度(Tj)55〜
200℃,コレクター損失(P)150Wという性能を持ち,大きな表面積をもつ大形ラジエーターを採用するとともに
シリコンや絶縁シートの細部に至るまでの放熱効果と,バイアス回路の温度補償の安定性を考慮し,ASO(安全
動作領域)を十分に検討して設計されていました。以上のようなゆとりのあるパワー回路設計により,40W+40W
(8Ω,0.5%)の連続定格出力が確保されていました。
PHONOプリアンプは,RIAA標準カーブとの偏差が±0.5dB以内(30Hz〜10kHz±0.3dB以内)の高精度が
実現され,最大許容入力200mV(1kHz G:34dB)の広いダイナミックレンジなど,公称出力30mVという大出
力カートリッジを使用したとしても出力波形のクリップの危険性がないほど,電気的諸特性もすぐれた性能が確保
されていました。
プリアンプ,コントロール・アンプ部は,高耐圧ローノイズ・トランジスターの直結回路で構成され,歪率,SN比,ダイ
ナミックレンジ等においてすぐれた特性が実現されていました。電源部は,安定化電源が採用され,安定な動作が
確保されるとともに,要所要所にエミッタ・フォロアーのバッファ・アンプが採用され,プロ用アンプ並の構成となってい
ました。
パワーアンプを支える電源部は,無誘導ハイリップル形大容量ケミカルコンデンサーや,内部抵抗を小さくし温度上
昇を抑え,リーケージフラックスの影響をも材質面から考慮した電源トランスが搭載されていました。電源の直流内
部インピーダンスを低く設計し,低域特性及び過渡特性に良好な特性を確保し,特にパワーアンプの出力インピー
ダンス特性は,直流域まで伸び,スピーカーの制動力を高めていました。
PMA-500のパネル面は,上下に半分ずつに分かれてわずかに段差が付けられており,ツマミやスイッチが整然と
機能的に配置された形になっており,当時のプリメインアンプの中ではユニークなデザインでした。この後のデンオン
製のプリメインアンプでも,上下でツートーンカラーになっているもの真ん中に横一線にアクセントライン段差が
設けられているもの
が多いなど,デンオンの伝統的なデザインとなっていきました。プリメインアンプとして,オーソドッ
クスに使いやすくレイアウトされ,業務用機器の流れをくむデンオンらしさが出ていた部分だと思います。淡いゴールド
のフロントパネルに,黒色のスイッチと黒色のゴムリング付きのツマミが配置されたデザインも特徴的でした。
PMA-500は,当時のプリメインアンプとして,しっかりと機能が搭載されていました。トーンコントロールはBASSと
TREBLEが独立したタイプで,トーン回路をパスするディフィートスイッチも装備されていました。バランスコントロール
の横には,カートリッジの出力レベルまで左右のセンターバランスがスイッチ一つでとれるナル(NULL)・バランスス
イッチも特徴的な装備でした。フィルターは,ローカット(40Hz,12dB/oct),ハイ・カット(9kHz,12zdB/oct)が装
備されていました。ミューティングスイッチも,−10dBポジションが新たに加えられた0,−10,−20dBの3段階になっ
ていました。
入力系は,PHONO2系統,TUNERに加え,AUXも2系統装備されていました。テープ入出力も2系統装備され,相
互ダビングもスイッチ一つで切り換えられるようになっていました。さらに,それぞれ専用のマイクアンプとリアパネル
にレベル調節ボリューム付きの本格的な2系統のマイク入力端子も装備され,右,左,中央とも自由にマイクミキシン
グが可能となっていました。また,PHONO入力はMM型に対応したものでしたが,リアパネルに昇圧トランスを接続
する標準的なオクタルソケットが装備され,前面パネルのスイッチでMM-MC切換ができるようになっていました。
以上のように,PMA-500は,当時のデンオンのプリメインアンプの中核的機種として,性能的にも機能的にも当時と
して先進的な高い技術が投入されており,高い完成度をもち,元気な力のある音を持った1台でした。この後,上級機
PMA-700が登場し,PMA-500自身もPMA-500Zへと継承されていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



連続演奏時の動特性の解析に
新しい価値観を求めたPMA-500

技術理論と音楽再生とに一致を求めつづけ,再生技術の壁をのりこえた最新プリメインアンプ

ダーリントン・パワートランジスタ採用,
超低ひずみ率0.03%(−3dB定格出力時),
息切れを知らないパワー段

◎ダーリントン・パワートランジスタを採用,
 超低ひずみ率0.03%の"タフ"な全段直結差動
 増幅SEPP OCL回路
◎高性能温度補償回路と大形ラジエータ採用,
 耐久力抜群の両チャンネル連続定格出力
 40W+40W(8Ω,0.5%)
◎低域の連続ソースにも”くずれ”をみせない
 強力2電源回路
◎プロエンジニアリングを生かした高級回路構成
◎PHONOプリアンプは,正確なイコライズ特性
 と,最大許容入力200mVrmsの広いダイナ
 ミック・レンジ,高SN比を実現
◎ソフトタッチのボリューム・ノブ,確実な機能を
 果すレバー・ノブ,使い勝手と操作性を重視し
 たユニークなレイアウト・デザイン
◎あらゆるプログラム・ソースを十二分にこなす
 豊富な2系統入力端子
◎A,B,2組のスピーカ・システムをA,およびB
 A+Bとスイッチひとつで自由に切換え可能
◎あらゆるプログラム・ソースをもとに,音質を
 そこなうことのない,効果的なカットオフ特性
 のオクターブ12dBロー・ハイフィルタ
◎ワンタッチで正確に周波数特性を平坦にで
 きるトーン・ディフィート・スイッチ
◎世界中の電源電圧に対応するAC電圧セレ
 クタ,電電部は世界の規格に通用する高信頼
 性・安全なパーツを採用
◎本格的バランス形2チャンネル・マイクミキシ
 ング回路
◎マニアのシビアな要求に応えた3段切替オー
 ディオ・ミューティングとナル・バランススイッチ
 の採用
◎本格派のためのMCマッチングトランス用オク
 タルソケット,切換スイッチを装備
◎2台のテープデッキをフルに活用できる2組の
 テープモニタ回路。同時録音,どちらの鉄器へ
 のダビングも自由自在

汎用・操作性に新機軸を示す,
ユニークなパネルレイアウト




●PMA-500主要定格●

形式 オール・シリコントランジスタ・ステレオ・プリメインアンプ
使用半導体 39Tr(含ダーリントンパワーTr4ヶ),2FET,10Di,2バリスター
パワーアンプ部
ミュージック出力 100W
定格出力 片チャンネル駆動時:42W×2(負荷8Ω・T.H.D.0.1%)
両チャンネル駆動時:40W+40W(負荷8Ω・T.H.D.0.5%)
両チャンネル駆動時:37W+37W(負荷8Ω・T.H.D.0.1%)
調波歪率 T.H.D.0.03%以下(−3dB定格出力時)
混変調歪率(60Hz/7kHz・4/1) 0.06%以下(−3dB定格出力時)
出力帯域幅 (T.H.D.0.1%)5Hz〜35kHz(+0,−1dB)
(T.H.D.0.5%)5Hz以下〜75kHz(+0,−3dB)
周波数特性(出力Po=10Wconst.) 10Hz〜100kHz(+0,−1dB)
入力インピーダンス 80kΩ±20%(5Hz以下〜20kHz以上)
入力感度 1Vrms/100kΩ
残留雑音 0.01μW以下(入力端子短絡)
S/N比 95dB以上
ダンピングファクター 50以上(5Hz以下〜10kHz)
出力インピーダンス 0.16Ω以下 1kHz以下にて純抵抗
プリアンプ部
定格出力 1.0Vrms
最大出力 5.0Vrms
調波歪率 最大出力時:T.H.D.0.1%以下(100Hz,1kHz,10kHz)
定格出力時:T.H.D.0.05%以下(100Hz,1kHz,10kHz)
混変調歪率 0.1%以下(定格出力時)
周波数特性(TONE DEFEAT) 10Hz〜40kHz(+0,−1dB)
入力感度/入力インピーダンス PHONO-1・2:2mVrms/60kΩ±20%
MIC       :1mVrms/100kΩ±20%
TUNER     :100mVrms/60kΩ±20%
AUX 1・2   :100mVrms/60kΩ±20%
TAPE PB   :500mVrms/100kΩ±20%
最大許容入力(T.H.D.1%以下) PHONO-1・2:200mVrms(1kHz)
MIC L・R   :80mVrms
イコライザ特性 RIAA偏差 ±0.5dB(30Hz〜15kHz)
S/N比 PHONO-1・2:65dB以上(入力端子短絡)
MIC       :55dB以上(入力端子短絡)
TUNER     :75dB以上(入力端子短絡)
AUX 1・2   :75dB以上(入力端子短絡)
TAPE PB   :75dB以上(入力端子短絡)
オーディオミューティング 0,−10dB,−20dB
トーンコントロール BASS  :+10dB〜−10.5dB(80Hz)
TREBLE:+10dB〜−9dB(12kHz)
HIGH FILTER カットオフ周波数9kHz 12dB/oct
LOW FILTER カットオフ周波数40Hz 12dB/oct
出力/インピーダンス TAPE REC(DIN):100mVrms/1kΩ以下(40mVrms/80kΩ)
端子類
入出力端子 PHONO-1・2,AUX-1・2,TUNER,TAPE-1(REC/PB)
TAPE-2(REC/PB),DIN端子(TAPE-1,TAPE-2)
SPEAKER端子(A/B),GND
ジャック MICジャックL・R,ヘッドホーンジャック
AC SOCKET SWITCHED 2ヶ250Wmax
UN SWITCHED 1ヶ150Wmax
電源 AC100V,50Hz/60Hz
消費電力 56W(電気用品取締法)
寸法 430W×140H×350Dmm
重量 12.5kg
※ 本ページに掲載したPMA-500の写真,仕様表等は1973年10月のDENON
のカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があ ります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら れていますので
ご注意ください。


★メニューにもどる           

 
 

★プリメインアンプPART7のページにもどる



現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp

inserted by FC2 system