1980年に,デンオン(現デノン)が発売したプリメインアンプ。デンオンは,アナログプレーヤーやカートリッジの
イメージの強いブランドですが,プリメインアンプにおいても1972年のPMA-500,1973年のPMA-700以来
高い評価を得ていたブランドで,セパレートアンプにおいても高い技術を見せていました。そうした中,80年代に
入り,セパレートアンプの技術を生かした高級プリメインアンプPMA-970,PMA-950を発売し,すぐれた音質
と性能で高く評価されました。これら900番台の高級プリメインアンプのシリーズの技術を継承し,中級機の価格
帯に展開していったのが500番台のシリーズで,その中の最上級機がPMA-550でした。
全体の回路構成は,MCカートリッジの再生を重視したスーパーイコライザーアンプとハイスピード・パワーアン
プのというシンプルな2アンプ構成で,MCカートリッジ使用時においてもPHONO入力からスピーカー端子まで
信号経路にカップリングコンデンサーの入らない完全コンデンサーレスのDCアンプとなっていました。
こうした完全コンデンサーレス構成は,PMA-970に搭載されたダイレクトDCサーボ方式の採用により実現さ
れていました。適切にサーボをかけることにより,DCドリフトをシャットアウトして超低域の安定性を確保すると
ともに,特性的にもS/N比3dB改善,歪み1/2に低減などの効果が得られていました。
イコライザーアンプ部は,広帯域化を実現した「スーパーイコライザー」を搭載していました。上級機のセパレート
アンプPRA-2000,プリメインアンプPMA-970などに搭載された「リアルタイムイコライザー」の技術を応用し
新たにNF型とCR型のメリットをコンビネーションさせたもので,RIAA偏差20Hz〜100kHz±0.2dBという広
帯域を実現していました。この「スーパーイコライザー」の構成は,新開発ローノイズ・デュアルFETによるNF型
DCアンプとCR型イコライジングフィルターからなり,初段はダイレクトDCサーボ方式のデュアルFETのパラレ
ル差動増幅としてS/N比,歪率を大きく改善しながらDC温度ドリフトも解消していました。そして,高域特性を
改善するために,CDイコライジングフィルターを細分し,帰還型と無帰還型の長所を組み合わせるという手法も
とられていました。また,MC型カートリッジにもヘッドアンプによらずに入力感度125μVという高利得で対応し,
S/N比73dBというすぐれた特性が確保されていました。PHONO入力は2系統装備され,MM-MCの切換え,
カートリッジ2種類の聴き比べなど,前面パネルのプッシュボタンのみで操作できるようになっていました。
パワーアンプ部は,ダイレクトDCサーボ方式高利得ノンスイッチング・パワーアンプが搭載されていました。構成
としては,初段ローノイズFETパラレル差動+IC高速演算増幅器によるローインピーダンス・バッファアンプ,差
動3段カレントミラー出力のドライバー段,高速パワートランジスター2パラレルプッシュプルの出力段という,充実
したものとなっていました。
また,パワーアンプ部は,パワートランジスターがカットオフしないようにデンオン自慢の「ゼロクロス・リニアバイア
ス回路」でバイアス電流をコントロールする可変バイアス方式の疑似A級アンプ・「ダイレクトAアンプ」となっており
,スイッチング歪の発生を抑えていました。そして,可変バイアス方式で重要なバイアスの安定度やバイアスポイ
ントの適切さなどの特性を高めるために,「ハイスピードサーマル・フィードバック回路」が搭載されていました。こ
の回路により,電源投入時からスピーディーなバイアスの安定化がはかられるとともに,温度変化や時間経過な
どの外的要因に対して高安定動作が確保され,スイッチング歪の低減だけでなく,クロスオーバー歪みの低減も
実現されていました。このようなパワーアンプ部は,出力100W+100W(8Ω),高調波歪率0.005%(定格出
力−3dB時)TUNER IN→SP OUTまでのスルーレイト250V/μsという高速・高利得・高安定・低歪率が実現
されていました。
電源部は,漏洩磁束,電圧変動率を重視した,このクラスのプリメインアンプの中でも最大級の大型のトロイダル
トランスが搭載され,44,000μFの大容量ブロックコンデンサーとともに,強力な電源部が構成されていました。
しかも,L・R独立のパワーアンプ部の中心部に配置され,ワイヤリングを最短距離,L・Rchを等距離にする「パワー
カレント・ピュアラジエーション・コンストラクション」方式のレイアウトがとられていました。
トーンコントロール回路は,BASS TREBLE独立で,デンオン独自の「リアルタイム・トーンコントロール」を採用
していました。これは,信号経路からコンデンサーをすべて取り除き,トーンコントロールに必要な受動素子をパワー
アンプの一部に付加する方式をとることで,トーンコントロール使用時,またはトーンコントロール回路を使用しない
DIRECT COUPLEスイッチON時にもゲインの変化,回路構成の変化がなく,常にMC入力からSP出力まで完全
コンデンサーレスで動作するというものでした。
その他,相互ダビングや音質への影響を防ぐREC OUT OFFも可能な2系統のテープデッキ入出力,ラウドネスス
イッチ,18Hz,6dB/octのサブソニックフィルターなど,プリメインアンプとしてオーソドックスながら過不足なく機能が
搭載されていました。
以上のように,PMA-550は,上級機PMA-970,PMA-950の技術を巧みに継承し,バランス良くまとめられた中
級機でした。フロントパネルのデザインも上級機と共通点の多いオーソドックスながら使いやすいもので,内部もしっか
りと物量が投入されたコストパフォーマンスの高いプリメインアンプとなっていました。音の方も,デンオンらしく力のある
しっかりしたものとなっていました。また,弟機としてPMA-510(¥49,800),PMA-530(¥59,800),PMA-540
(¥65,000)も発売され,プリメインアンプのシリーズを成していました。(当時は各社とも各価格帯にシリーズを展開し
ていたものでした。)
快聴,DENON
ダイレクト-Aアンプ。
MC入力からSP出力まで飛躍的に音質を改善したコンデンサー・レスの威力
”スーパー
イコライザー搭載”(特許出願中)
力感の100W+100W
(4Ω時140W+140W)
●PMA-550の主な仕様●
■パワーアンプ部(TUNER IN→SPEAKER OUT)■
回路方式 | 全段ダイレクトDCサーボ回路 |
定格出力
(両ch駆動,正弦波連続出力,20Hz〜20kHz) |
負荷4Ω時:140W+140W 負荷8Ω時:100W+100W |
入力感度/入力インピーダンス | 150mV/40kΩ |
全高調波ひずみ率 (20Hz〜20kHz,定格出力の−3dB時,負荷8Ω) |
0.005%以下 |
混変調ひずみ率 (60Hz/7kHz:4/1,定格出力相当振幅出力時) |
0.008%以下 |
出力帯域幅(IHF両ch駆動) | 5Hz〜400kHz(THD.0.035%) |
周波数特性(1W出力時) | 1Hz〜400kHz+0,−3dB |
出力インピーダンス(1kHz) | 0.1Ω |
出力端子 | スピーカー:
AorB 4〜16Ω A+B 8〜16Ω ヘッドホン: ステレオヘッドホン |
■プリアンプ部(→REC OUT)■
入力感度/入力インピーダンス | PHONO-1,2MC:0.125mV/100Ω,MM:2.5mV/50kΩ TUNER,AUX,TAPE(PB):150mV/40kΩ |
最大出力/定格出力 | 10/150mV |
RIAA偏差 | MC:20Hz〜100kHz±0.2dB MM:20Hz〜100kHz±0.2dB |
全高調波歪率(PHONO) | 0.001%以下(1kHz出力9V時) |
■総合特性■
SN比
(IHF-A,入力短絡) |
MC:73dB(0.25mV入力時) MM:90dB(2.5mV入力時) TUNER,AUX,TAPE(PB):108dB |
トーンコントロール | BASS :100Hz±8dB
TREBLE:10kHz±8dB |
サブソニックフィルター | 18Hz・6dB/oct |
ラウドネスコントロール特性 | 低域:100Hz+7dB
高域:10kHz+6dB |
■その他■
電源 | 100V 50/60Hz,255W(電気用品取締法による) |
占有寸法
(ツマミ,ゴム足,端子含む) |
W434×H132×D407Dmm |
重量 | 13.5kg |
※ 本ページに掲載したPMA-550の写真,仕様表等は1980年7月のDENON
のカタログより抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があ ります。したがって,
これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じら れていますので
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