PMA-960の写真
DENON  PMA-960
STEREO PRE-MAIN AMPLIFIER ¥118,000

1984年に,デンオン(現デノン)が発売したプリメインアンプ。当時のデンオンのプリメインアンプは,700番台
の型番から900番台の型番に変わり,その中の最上級機がPMA-960でした。少しクラシカルな落ち着いたデ
ザインも,新しい900番シリーズの特徴でした。

PMA-960の最大の特徴は,「デュアルスーパー無帰還回路」を採用していたことでした。この頃,NFBによら
ない歪低減技術が各社から出てきていました。デンオンも,パワーアンプの最上級機POA-8000では,「純粋
無帰還方式」を開発し,プリメインアンプPMA-790では,「無帰 還0dB方式」を開発し,パワー段に搭載してい
ました。これらの技術をベースに,さらに改良を加えて開発されたのが「デュアルスーパー無帰還回路」でした。

デュアル・スーパー無帰還方式

「デュアルスーパー無帰還回路」は,パワー段のNチャンネルとPチャンネルの各トランジスターで相互に歪を
除去しあうディストーション・サーボ回路(アンプA2,A3)とスピーカー出力段に出てくるトータルな歪を除去す
るディストーション・サーボ回路(アンプA1)の3つのサーボアンプによって構成されていました。
サーボ・アンプA2,A3は,出力パワーステージを構成する各トランジスターから発生する歪成分を分離して
検出し,入力信号と比較し,歪成分のみを位相反転し,Nチャンネル・トランジスターの歪成分はPチャンネル
に加え,逆にPチャンネル・トランジスターの歪成分はNチャンネルに加え,各チャンネルの出力端で相互に
加算・除去するようになっていました。また,サーボアンプA1は,最終出力段において入力信号と出力信号を
比較してオーバーオールに歪成分を除去するようになっていました。このようにして,高調波歪率0.003%
混変調歪率0.002%という低歪でありながら,負帰還ループを持たず,主信号がフィードバックされることな
く,スルーレイト±350V,TIM歪み測定限界以下のデータが示すように,スピーカー端子へハイスピードで信
号が伝送される無帰還回路が実現されていました。

パワー段の最終出力段には,Pc130Wの大容量高速パワートランジスターをパラレルプッシュプル接続で構
成し,デンオン独自のバイアス回路により,安定したノンスイッチング方式として,スイッチング歪,クロスオー
バー歪を抑えながら,140W+140W(8Ω),170W+170W(6Ω)の大出力を実現していました。また,全
信号経路は,完全コンデンサーレスの完全DC構成となっていました。

イコライザーアンプは,初段にローノイズFETによる差動増幅をパラレル接続した広帯域イコライザーが装備さ
れ,RIAA周波数特性は,20Hz〜100kHz±0.2dBというワイドレンジが実現され,ハイインピーダンス(MM
型)カートリッジにおいても高域歪みを抑えていました。また,新開発の高耐圧ICの採用により,供給電圧を従来
比約20%アップした新設計オペアンプの搭載により,許容入力を大きくアップしていました。

PMA-960の内部

電源部は,390VAの大形のトロイダルトランスを中心に,新開発のオーディオ用φ50×100mm大形ブロッ
クコンデンサー4本(12,000μF×4),高速整流のファストリカバリーダイオードなどで構成された大容量
高速なものが搭載されていました。ブロックコンデンサーは,L・Rチャンネル別々に出力段近くに配置され,
相互干渉を防いでいました。電源コードには,直径0.26mm×37本の極性表示付き極太コードを採用して
いました。

機能的には,オーソドックスで,PHONO入力は2系統,ハイレベルの入力も,TUNER,AUXに加え,DAD
端子が装備され,TAPE端子も2系統装備されていました。トーンコントロールは,デンオン独自の「リアルタ
イム・トーンコントロール」を搭載していました。これは,トーンコントロールを必要な受動素子だけから構成し
パワーアンプに組み込むことで,信号経路からコンデンサーを排除したものでした。その他,ラウドネス,サ
ブソニックフィルター,−20dBのミューティングなども装備されていました。

以上のように,PMA-960は,同社のセパレートアンプ等で培われてきた技術を継承し,正攻法で作り上げ
られたプリメインアンプでした。フォノ入力がしっかりしていたのもデンオンらしいところでした。中低域の豊か
な音も,デンオンらしさを感じさせるものでした。また,PMA-960には,精悍なイメージのブラックモデルも
ありました。

PMA-960のブラックモデル



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



驚異の動特性。
PURE DYNAMICな音楽クオリティ。


■デュアル・スーパー無帰還回路搭載の「ピュア
 ・ダイナミック」140W+140W(8Ω) 
 170W+170W(6Ω)ハイパワーアンプ
■ノンスイッチングA級電力増幅段
■全段完全DC構成
■瞬間給電能力にすぐれた高速・大容量電源部
■RIAA周波数特性20Hz〜100kHz±0.2dB
 広帯域イコライザー
■2本のカートリッジのデュアル・リスニング機構
◎ストレート増幅の完成度を高めた 新開発
 無帰還回路採用「ピュアダイナミック」
 ハイパワーアンプ。
◎デジタルソースに圧倒的な追従性を示す,
 強力大形電源に支えられたハイパワー
 170W+170W(6Ω)。
◎超ワイドレンジ,広ダイナミックレンジの
 イコライザーアンプがひろげる,スーパー
 アナログ。

●DAD専用入力端子を装備
●広帯域リアルタイム・トーンコントロール。
 ターンオーバー切り換え付
●高速プロテクション回路
●良質電源コード:φ0.26mm×37本の極太コードを
 採用し,極性を表示




●PMA-960の主な仕様●

■パワーアンプ部(チュー ナー端子→スピーカー端子)■

定格出力
(両ch駆動,正弦波連続出力)
20Hz〜20kHz負荷6Ω:170W+170W
20Hz〜20kHz負荷8Ω:140W+140W
ダイナミックパワー
440W/2Ω
入力感度/入力インピーダンス 150mV/47kΩ
全高調波ひずみ率 0.003%以下(20Hz〜20kHz定格出力−3dB)
混変調ひずみ率 0.002%以下
(60Hz/7kHz:4/1,定格出力相当振幅出力時)
TIMひずみ率 測定限界以下
スルーレイト ±350V/μs以上
出力帯域幅
(IHF両ch駆動)
5Hz〜80kHz(THD.0.02%)
周波数特性 1Hz〜250kHz+0,−3dB(1W出力時)
出力インピーダンス 0.1Ω(1kHz)
出力端子 スピーカー:
 AorB 6〜16Ω
 A+B 12〜16Ω
ヘッドホン:550mW at8Ω




■プリ(主にEQ)アンプ部■

回路方式 広帯域イコライザー方式
入力感度/入力インピーダンス PHONO MM:2.5mV/47kΩ
PHONO MC:(HIGH)0.25mV/100Ω(LOW)0.125mV/100Ω
TUNER,DAD,AUX,TAPE:150mV/47kΩ
最大出力/定格出力 14.5V/150mV
RIAA偏差 MM,MC=20Hz〜100kHz±0.2dB
全高調波歪率 0.001%以下(1kHz 8V出力時)




■総合特性■

SN比
(ウェイトA,入力短絡)
PHONO MM:90dB(2.5mV入力時)
PHONO MC:75dB(0.25mV入力時)
TUNER,DAD,AUX,TAPE:110dB
トーンコントロール BASS  :50Hz/100Hz±8dB
TREBLE:10kHz/20kHz±8dB
サブソニックフィルター/ミューティング 18Hz・6dB/oct/−20dB
ラウドネスコントロール特性 低域:100Hz+7dB
高域:10kHz+6dB





■その他■

電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・245W(電気用品取締法による)
外形寸法
(ツマミ,足,端子を含む)
W470×H168×D440mm
重量 15kg



PMA-980の写真
DENON  PMA-980
PRE-MAIN AMPLIFIER ¥138,000

1986年に,PMA-960はモデルチェンジされ,PMA-980となりました。PMA-960BKをベースにい
くつかの点で改良を加えたもので,デザイン,内部等もほぼ同一というほど似ていました。
主な改良点としては,入力系の見直しが行われ,ハイレベルの入力が,TUNER,AUX,DADという3
系統であったのが,TUNER,CD-1,CD-2となり,これらに加えて,新たにCDダイレクト入力端子(金
メッキ仕上げ)が装備されていました。PMA-960では,ミューティングスイッチがあった場所にCDダイ
レクトのスイッチが設けられ,CDダイレクトONにすると,CDダイレクト端子に入力されたソースは,イン
プットセレクターやREC OUTスイッチ等を通らずに,パワー段直前のメインボリュームに直結され,少
ない伝送ロスでパワー段に入力されるようになっていました。
電源部は,電源トランス,コンデンサー等は同じものでしたが,電源のアース問題を改善した,新開発の
「バランス形給電方式フローティング電源」が採用され,左右独立電源並みの安定化が図られていまし
た。外観上では,PMA-960BKでは,ホワイトであった文字類が,ゴールド文字になり,イメージが少し
変わっていました。

以上のように,PMA-980は,よりCD等のデジタルソースへの対応を強めた内容を持っていました。
CD登場から3年を経過したこのころには,CDがオーディオソースの主流を占めるようになり,各オー
ディオブランドも,D/Aコンバーターを内蔵したアンプを発売するなど,CD等のデジタルソースへより
積極的に対応したモデルが増えてきた時代の流れを感じさせるものがありました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介しま す。



CD時代の本格クオリティと,
高品位で豊かな音楽情報量を実現。


■CDダイレクトをはじめ,CD入力端子3系統
■デュアル・スーパー無帰還ハイパワーアンプ
 140W+140W(8Ω) 170W+170W (6Ω)
■ダイナミックパワー440W/2Ω
■ハイスルーレイト±350V/μsec
■全段完全DC構成
■バランス形給電方式の高速・大容量電源部
■高いS/N・広帯域フォノ・イコライザーアンプ
■2本のカートリッジのデュアル・リスニング機構

◎音楽の生命を響かせる真のプリメインアンプ
◎音楽情報量において,まさに膨大。透明でハイ
 エネルギーな170W+170W(6Ω)
 無帰還ハイパワーアンプ
◎新開発バランス形給電方式の高品質・巨大電源
 に支えられ,ダイナミックパワー440W/2Ωを
 クリアー
◎CDストレート再生用,CDダイレクト回路装備
◎新設計,極低ひずみ,広帯域のイコライザーアンプ

●極太ケーブルを使用できるスーパースピーカー端子
●気品あるゴールド文字
●広帯域リアルタイム・トーンコントロール(ターンオーバー切り換え付き)
●良質電源コード:極性表示φ0.26mm×37本の極太コード




●PMA-980の仕様●


■パワーアンプ部(LINE端子 →SP端子)■

定格出力
(20Hz〜20kHz)
140W+140W(8Ω)
170W+170W(6Ω)
ダイナミックパワー
440W/2Ω,310W/4Ω,220W/6Ω,190W/8Ω
入力感度/入力インピーダンス TUNER入力:150mV/47kΩ
全高調波ひずみ率 0.003%以下(20Hz〜20kHz,70W,8Ω)
混変調ひずみ率 0.002%以下 (140W相当8Ω)
動特性
TIMひずみ率:測定限界以下
スルーレイト:±350V/μs以上
出力帯域幅
5Hz〜80kHz(出力70W,0.02%,8Ω)
周波数特性 1Hz〜250kHz+0,−3dB(出力1W,8Ω)
出力インピーダンス 0.1Ω以下
出力端子 スピーカー:
 AorB 6〜16Ω
 A+B 12〜16Ω
ヘッドホン最大出力:550mW(8Ω)8〜400Ωに適合



■プリ(主にEQ)アンプ部■

入力感度/入力インピーダンス PHONO-1&2 MM:2.5mV/47kΩ
           MC:(HIGH)0.25mV/100Ω(LOW)0.125mV/100Ω
CD-1&2,CD DIRECT,TUNER,TAPE-1&2PB:150mV/47kΩ
最大出力/定格出力 14.5V/150mV(REC OUT)
RIAA偏差 20Hz〜100kHz±0.2dB(MC&MM.IN〜REC OUT)
全高調波歪率 0.001%以下(REC OUT,1kHz 8V)



■総合特性■

SN比
(聴感補正A,入力短絡)
MM(2.5mV入力時) :90dB
MC(0.25mV入力時):75dB
LINE(150mV入力時):110dB
トーンコントロール特性 BASS  :50Hz/100Hz±8dB
TREBLE:10kHz/20kHz±8dB
サブソニックフィルター 18Hz・6dB/oct
ラウドネスコントロール特性 低域:100Hz+7dB
高域:10kHz+6dB



■その他■

電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・245W(電気用品取締法による)
外形寸法
(ツマミ,足,端子を含む)
W470×H167×D446mm
重量 16.3kg

※本ページに掲載したPMA- 960,PMA-980の写真,仕様表等は,
 1984年3月,1987年4月のDENONのカタログより抜粋したもので,
 デノン株式会社に著作権が あります。したがってこれらの 写真等を無断
 で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 

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