ＤＥＮＯＮ 　ＰＲＡ-６０００
ＳＴＥＲＥＯ　ＰＲＥ　ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ　￥４５０，０００

１９８２年にデンオン（現デノン）が発売したプリアンプ。前年に発売されたモノラル型の高級パワー
アンプＰＯＡ-８０００とのペアを想定して開発されたもので，当時のデンオンのプリアンプの最高級
機として登場しました。
デンオンは，カートリッジやアナログプレーヤーの一大ブランドであっただけに，１９７９年に名機
ＰＲＡ-２０００を発売するなど，ＰＨＯＮＯ系に強いプリアンプの開発に定評がありましたが， この
ＰＲＡ-６０００は，デンオンのアナログ関連の技術が生かされた高性能なプリアンプとして完成さ
れていました。

ＰＲＡ-６０００の回路構成は，ＭＣヘッドアンプ，イコライザーアンプ，バッファー兼フィルターアンプ
フラットアンプの４段構成で，最大の特徴は，デンオン自慢の純粋無帰還回路「リアル・バランス・
サーキット」の搭載でした。これは，一般的なＮチャンネルＦＥＴとＮＰＮトランジスターを２段構成とし
たカスコード回路をＤＣ構成化する目的で次段のＮＰＮをＰＮＰトランジスターに変更し，この回路の
もつノンリニアな歪みを打ち消すために，全段をプッシュプル構成にして第２次高調波歪みを理論
的にゼロにしようというもので，ＮＦＢ技術を使わずにすぐれた高域特性と低歪率特性を実現してい
ました。この回路方式は，ＭＣヘッドアンプ，イコライザーアンプ，フラットアンプに採用されていまし
た。また，各段には不要な直流成分を除去するＤＣサーボアンプが搭載され，ＭＣ入力からプリ出
力の全信号経路にコンデンサーがない直結回路となっていました。

イコライザーアンプは，ＰＲＡ-２０００以来のＣ・Ｒ素子と純粋無帰還回路を組み合わせた超広帯域
型でした。イコライザーアンプ部には，動的歪みの少ない純粋無帰還回路が２組搭載され，高Ｓ/Ｎ
低歪率，広ダイナミックレンジが確保されていました。さらに，高精密Ｃ・Ｒ素子との組み合わせによ
り，ＲＩＡＡ偏差１０Ｈｚ〜１００ｋＨｚ±０．２dBという超広帯域・高精度を実現していました。
回路構成素子は，片チャンネル当り極低雑音Ｈｉ-ｇｍＦＥＴ１６石，トランジスター３０石が使用され，
当時最新の能動素子が投入された余裕ある設計となっていました。

バッファー兼フィルターアンプにはカスコードプッシュプル回路が，フラットアンプにはカスコードプッ
シュプル回路とリアル・バランス・サーキットが組み合わされ，全段ＮＦＢを使わない無帰還アンプ
となっていました。この純粋無帰還回路（兼純粋無帰還トーンコントロール）で構成されたフラットア
ンプ部は，低歪率０．００２％，スルーレイト５００Ｖ/μｓという伝送特性を実現していました。また，
フラットアンプ部には，プリアンプとして初めてデジタルオーディオに対応し，ＤＡＤと表示された入
力端子が設けられていました。

ＭＣヘッドアンプは，厳選された極低雑音Ｈｉ-ｇｍＦＥＴ１６石，トランジスター１８石（片チャンネル当
り）を使用したもので，単体のＭＣヘッドアンプを凌ぐほどの内容をもっていました。さらに，新開発
の高安定化電源及び電源リップルの影響を受けない電源フローティング方式の採用により，さらな
る低雑音化が図られていました。
ＭＣカートリッジ入力端子は，３系統のＰＨＯＮＯ端子のうち，ＰＨＯＮＯ-３（ＭＣ専用）とＰＨＯＮＯ-１
（ＭＭ，ＭＣ切換）の２系統備えられていました。



トーンコントロールは，音質劣化や特性劣化などを抑えるため，従来のＮＦ型やＣＲ型の本質的な
問題点を解決した新開発の無帰還形トーンコントロール方式が採用されていました。ターンオーバー
周波数は，低音１２５Ｈｚ，５００Ｈｚ，高音２ｋＨｚ，８ｋＨｚの４ポイントで，調節レベルは±０．５dB，
±１dB，±２dB，±４dB，±８dBの１０段階で，高精度な増減コントロールが可能となっていました。
ディフィート位置ではトーンコントロール素子が外れ，伝送特性がフラットになるようになっていました。
ボリュームは，ＰＲＡ-６０００のハイスルーレイト，超広帯域特性などのすぐれた特性を生かすために
１０ｋΩの低インピーダンスボリュームを搭載し，ボリュームの位置による伝送周波数特性の変化や
歪み，Ｓ/Ｎの悪化を抑えていました。



内部コンストラクションは，信号経路及び各ユニットアンプが左右チャンネル対称に配置され，チャン
ネル間の干渉をシャットアウトする構造となっていました。さらに，耐湿性にすぐれたガラスエポキシ基
板，無酸素銅アースライン，高品質フィルムコンデンサーなどにより，電源の低インピーダンス化が図
られていました。また，電源トランス，ＭＣヘッドアンプ，イコライザーアンプなどの主要シャーシには非
磁性材のアルミ材を使用して，磁気歪みを防止していました。

電源部は，漏洩磁束（リーケージフラックス）が少なく電源変動率にすぐれた大容量１００ＶＡのトロイダ
ル型トランスが搭載され，整流器には１．２Ａ/２００Ｖのファーストリカバリーダイオードを採用して，強
力で高速な電源部が構成されていました。イコライザーアンプ部，フラットアンプ部に給電する±６０Ｖ
は，大容量２，２００μＦ/１００Ｖの電解コンデンサー，雑音が少なく応答性にすぐれた安定化電源回路
高品質フィルムコンデンサー，ガラスエポキシ基板などの使用によって高いクオリティが確保されていま
した。ＭＣヘッドアンプの駆動電源±３０Ｖには，基準電圧に高性能トラッキングレギュレーター用ＩＣを
使用した新開発の高安定化電源と電源フローティング方式が採用され，雑音の発生が抑えられていま
した。



フロントパネルには，アルミパネルではなく，あのマッキントッシュのようにガラスパネルを用いていました。
これは美しく磨きあげられた１５mm厚板ガラスを特殊なダイヤモンド加工技術によって高精度に加工した
もので，パネル上に文字がくっきりと浮かび上がる美しいものでした。さらに，上面には印刷を施した６mm
厚のスモークドガラスが使用され，シャンペンゴールド・アルマイト加工が施されたサイドパネルとともに，パ
ワーアンプＰＯＡ-８０００にも通じるガラスパネルとアルミパネルの融合した高級感のある個性的な外観を
形成していました。

以上のように，ＰＲＡ-６０００は，デンオンの最上級プリアンプとしてしっかりとした作り込みがされた１台でし
た。パーツと回路の両面からすぐれた物理特性を確保し，温かみを失わずしかも癖のない音を実現してい
ました。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

◎高精密Ｃ・Ｒ素子を用いた超広帯域＆高精度な
　純粋無帰還リアルタイム・イコライザーアンプ
◎ハイスピード＆高品質な純粋無帰還
　ＭＣヘッドアンプ
◎デジタル・クオリティに対応するハイスルーレイト
　５００Ｖ/μｓの純粋無帰還ハイレベルアンプ
◎ターンオーバー切換え付，新開発・無帰還形
　トーンコントロール
◎広帯域性能を維持し，Ｓ/Ｎの劣化を防止する
　低インピーダンス・ボリュームの採用
◎純粋無帰還アンプの素質の高さに対応する
　高品質内部コンストラクション
◎全信号経路からカップリング・コンデンサーを
　除去したＤＣサーボアンプ搭載
◎徹底的に低雑音化をはかった，高品質・高安定を
　誇る強力電源部
◎機能美を求めた秀麗なデザイン
●２系統のサブソニックフィルター装備
●入力ファンクション・プリセット機能を装備
●録音セレクタースイッチ装備
●ミューティングを表示する点滅インジケーター
●ＤＡＤ表示入力端子装備
●５個のＡＣアウトレット装備
●入出力端子オール金メッキ処理

●ＰＲＡ-６０００の主な仕様●

■ＭＣヘッドアンプ部（ＰＨＯＮＯ-１，３ＭＣ　ＩＮ〜ＲＥＣ 　ＯＵＴ）■

■イコライザーアンプ部（ＰＨＯＮＯ１，２ＭＭ　ＩＮ〜ＲＥＣ 　ＯＵＴ）■

■ハイレベルアンプ部（ＡＵＸ　ＩＮ〜ＰＲＥ　ＯＵＴ）■

入力感度/入力インピーダンス	ＴＵＮＥＲ，ＡＵＸ，ＤＡＤ，ＴＡＰＥ（ＰＢ-１，２） 　１５０ｍＶ/５０ｋΩ
定格出力	１．５Ｖ
全高調波歪率	０．００２％以下（２０Ｈｚ〜２０ｋＨｚ，５Ｖ出力時）
周波数特性	２Ｈｚ〜３００ｋＨｚ＋０，−３dB １０Ｈz〜１００ｋＨｚ＋０，−０．３dB
ＳＮ比	１００dB（ＩＨＦ-Ａウェイト）
セパレーション	ＶＯＬ・最大時　　：２０Ｈｚ〜１ｋＨｚ　１００dB 　　　　　　　　　　　２０ｋＨｚ　　　　　   ７５dB ＶＯＬ・−２０dB時：２０Ｈｚ〜１ｋＨｚ　１００dB 　　　　　　　　　　　２０ｋＨｚ　　　　　   ７５dB
トーンコントロール	ターンオーバー 　１２５Ｈz/２ｋＨｚ，１２５Ｈｚ/８ｋＨｚ 　５００Ｈｚ/２ｋＨｚ，５００Ｈｚ/８ｋＨｚ 増・減ポイント 　±０．５dB，±１．０dB，±２．０dB，±４．０dB， 　±８．０dB（周波数２０Ｈzと２０ｋＨｚで）
ミューティング	−∞（ＭＵＴＩＮＧ表示が点滅）
サブソニック・フィルター	１６Ｈｚ，１２dB/ｏｃｔ ２０Ｈｚ，６dB/ｏｃｔ

■その他■

主な使用部品	ＦＥＴ８０個，トランジスター１７１個，ダイオード１２３個 ＩＣ１１個，整流スタック１個，リードリレー８個，リレー２個
ＡＣアウトレット	電源スイッチ連動３個（Ｔｏｔａｌ　２１０Ｗ） 　　　　　　 非連動２個（Ｔｏｔａｌ　７００Ｗ）
電源／消費電力	ＡＣ１００Ｖ　５０/６０Ｈｚ／９０Ｗ
外形寸法 （つまみ類，ゴム足を含む）／重量	４５５Ｗ×１３４Ｈ×３９２Ｄmm／１４．３ｋｇ

※ 本ページに掲載したＰＲＡ-６０００の写真，仕様表等は１９８２年６月の
　ＤＥＮＯＮのカタログより抜粋したものでデノン株式会社に著作権があり
　ます。したがって，これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律
　で禁じられていますのでご注意ください。　　　　　　　　
　　
　
　
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