Victor QL-5R
QUARTZ LOCK SERVO DD PLAYER SYSTEM ¥58,500
1977年に,ビクターが発売したプレーヤーシステム。前年に同社が発売した中級機の実力機QL-7Rの弟機
として発売されたプレーヤーで,バランスのとれた美しいデザインの中に各部に精度の高い技術を投入しなが
らエントリーモデルとして高いコストパフォーマンスを実現した1台でした。
ターンテーブルは,鳴きを抑え,慣性質量を増すためのゴムカバーリングを含む重量が2.0kg,慣性質量が
280kg-cm2という重量級のアルミダイカスト製で,鳴きが少なく,大きな慣性質量が短周期の回転ムラや負
荷変動の瞬間的な変化を吸収し,インパルスレスポンスを改善した滑らかな回転を実現するようになっていま
した。周囲には回転数を確認するストロボの溝が直接造形された形状となっていました。ストロボの電源にも水
晶の安定した発振周波数を利用し,ひとつのストロボパターンで33・1/3回転と45回転の両方を見ることがで
きるクォーツ・スルー・ストロボが搭載されていました。
ターンテーブルを駆動するD・Dモーターは,QL-7Rのものを構造的にシンプル化,合理化したものでしたが,
性能的にはほぼ同一ともいえる新開発のものでした。基本的にはFG検出方式のクォーツロックDCサーボモー
ターで,FGサーボシステムには,全周積分検出方式が採用されていました。ローター・マグネットとFG用マグ
ネットは一体化された構造となっており,ステーターコイルの捲線工程も自動化されていました。また,ローター
マグネットの下部に速度検出用パルスをダイレクトに着磁した構造で,シンプルな一体構造のFGサーボモー
ターとして構成され,高精度をコストパフォーマンスを高めて確保していました。
さらに,クォーツロックサーボ回路は全面的にIC化されていました。水晶発振回路と分周回路,サンプルホー
ルド型位相比較回路を単一パッケージに封入した高集積度C・MOS・ICとして搭載していました。クォーツロッ
ク・サーボ系を構成する全回路がコンパクトにIC化されたことで,数百個のトランジスターが節減され,シンプ
ル化,高信頼性が実現されていました。
ターンテーブルを速やかに停止させるために,電磁ソレノイドを利用したクィック・ストップ機構も搭載され,回
転数切換時にも働き,スムーズな切換が可能となっていました。
キャビネットは,QL-7Rのような積層キャビネットではありませんでしたが,ソリッドボードを強固に組み合わ
せた高密度のボックス構造のキャビネットで,アームの基部など重要部分にしっかりとウェイトがかかるよう
に作られ,ハウリングにも強い構造となっていました。フットは,新構造の高さ調整付きドームアイソレーター
が搭載されていました。
トーンアームは,一点支持方式の感度とジンバルサポート方式をしのぐ安定性を追求したという「ニュー・ジンバ
ルサポート方式」のトーンアームが搭載されていました。この「ニュー・ジンバルサポート方式」は,仮想一点支
持構造で,4個のベアリングが仮想中心点から等距離に配置され,どの回転方向に対しても各ベアリングにか
かる力と回転角が等しく,一点支持と同様な性能が得られるというものでした。また,防振材 入りのアームパ
イプ,チャッキング・ロック式ヘッド・コネクター,溶融鍛造ヘッド・シェルなどの音質重視設計が施されていまし
た。
QL-5Rには,MM型カートリッジが標準装備されていました。楕円針付きのZ-1EB型で,当時単売されてい
たZ-1E(¥10,000)と同等の性能を持つカートリッジでした。
以上のように,QL-5Rは,エントリーモデルながら,上級機QL-7Rのエッセンスを継承したコストパフォーマ
ンスにすぐれたプレーヤーでした。デザインの上でも音質的にも,QL-7Rにほぼ近いものを持ち,ビクターの
プレーヤー作りの巧みさを感じさせる1台だったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
純粋に力量を問う5万円台のクォーツロック,
あらゆる細部に集積技術を傾注。
◎全周積分検出方式FGサーボの
新形モーターと高集積度C・MOS・IC。
◎総重量2.0kg,慣性質量280kg-cm2
のヘビィ・ウェイト・ターンテーブル。
◎快適な操作性のクィック・ストップ機構。
◎有効長245mm,ニュー・ジンバル
サポート方式ロング・アーム。
◎トレーシング歪の少ない楕円針
付きZ-1EB型カートリッジ。
●QL-5R型規格●
駆動方式 | FG検出クォーツロックDCサーボ・ダイレクト・ドライブ |
回転数 | 331/3,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.025%(WRMS) |
SN比 | 63dB(IEC-B),73dB(DIN-B) |
起動特性 | 1.8sec |
負荷特性 | 針圧100gまで0% |
ドリフト | 0.0001%/h,0.00005%/℃ |
トーンアーム型式 | ニュー・ジンバルサポート・TH方式スタティック・バランス(有効長245mm) |
針圧可変範囲 | 0~3g(0.25gステップ)直読式 |
アーム高さ可変範囲 | 39~51mm |
カートリッジ型式 | 楕円針付きMM型(Z-1EB) |
周波数特性 | 10~25,000Hz |
出力電圧 | 3mv(50mm/sec) |
キャビネット仕上げ | ローズウッド調 |
寸法 | 481W×165H×403Dmm |
重量 | 10.5kg |
※ 本ページに掲載したQL-5Rの写真・仕様表等は1978年3月の
Victorのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
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