TEAC R-777X
AUTO REVERSE STEREO CASSETTE DECK ¥109,000
1984年にティアックが発売したカセットデッキ。同社の歴代オートリバース機の最高峰のR-999Xの弟機で,
3モーターDDメカニズムで録再オートリバース機構,そしてdbxを搭載するなど,ティアックの技術力と意地が
感じられる1台となっていました。

R-777Xは,基本的に2ヘッド構成の録再オートリバースデッキで,録再ヘッドは,従来の同社のセンダスト
ヘッドの4倍の13層ラミネート構造をもつCA(コバルト・アモルファス)ヘッドで,リボン化したアモルファスに
よって渦電流損失をさらに改善し,すぐれた磁気特性によって,MOLの改善とフラットな高域特性を得るとと
もに,磁界剥離がなく耐摩耗性も向上していました。
消去ヘッドは,フォワード側,リバース側にそれぞれ設けられ,ダブルギャップ・フェライト消去ヘッドが搭載さ
れていました。

オートリバース機構は,フォワード側,リバース側とも同一のヘッドを使用するヘッド回転式のメカニズムを採
用していました。本来ミクロンオーダーの精度で固定すべきヘッドを回転させるために,そのメカニズムには
高度な技術が注がれていました。ティアックでは,このオートリバースメカニズムをSuperA.R.H.S(Acculign
Rotating Head System)と称していました。このSuperA.R.H.Sの特徴は,
(1) 回転部のヘッドホルダーと軸受け部に重量が軽くショック吸収性の高い高精度アルミダイカストを,ミクロ
  ンオーダーで加工して使用。
(2) 世界で初めてシールドタイプの精密マイクロベアリングを2個使用し,ミクロン単位の驚異的回転精度を
  実現し,ショックやゴミ,温度変化による初期特性の劣化を抑えている。                
(3) 回転ヘッドのストッパー部には,ビッカース硬度1,800Hv,耐荷重24,000kg/cm2を誇る純度99.5
  %のアルミナセラミックスを使用。極細ピッチのステンレスアジマススクリューとの組み合わせで,両方向独
 立のアジマス微調整を実現。
(4) ティアック独自のヘッド・エレベーション・トリプルギアによってヘッドの高さ調整を可能にし,3次元的にヘ
  ッドポジションを保持している。
などでしたが,以上のようなメカニズムにより,固定ヘッド式ワンウェイ機を凌駕するヘッド精度を実現していま
した。テープ端検出センサーには,赤外線とフォトトランジスターによる,I.R(赤外線)コンビネーション・テープ
センサーを採用して,クイックリバース機能を搭載していました。

走行系は,リバース機構に対応してデュアルキャプスタンで,それぞれのキャプスタンにモーターが直結され
たD.D方式となっていました。キャプスタン駆動用のD.D.モーターは,ブラシレスDCサーボモーターで,10極
もの極数を持ち,重量級フライホイールと,1回転138パルスもの高精度全周平均型FGサーボのはたらき
で低速のD.D.ながら,安定した走行を実現していました。.リールの駆動は,上級機のR-999Xのような2D.D.
リールモーターではありませんでしたが,キャプスタン用とは別にトルクの大きいDCモーターが1基登載され
キャプスタン用と合わせ,3モーター構成のシンメトリカル(左右対称)メカニズムとなっていました。
そして,消去ヘッド,ピンチローラーは両方向独立設置し,高精度,高強度の焼結ステンレスアームのシーソー
運動によって一方の消去ヘッドのみを作動させ,走行系の余分な負荷を低減していました。これらの高精度
なバイディレクショナル・D.D.トランスポートシステムにより,ワウ・フラッター0.03%(WRMS)という高級ワン
ウェイデッキに匹敵する回転精度を実現していました。

NRシステムは,ドルビーB,Cに加え,dbxを搭載し,110dBのダイナミックレンジと92dBのSN比を実現し
ていました。また,dbxには,dbxDISCポジションを装備し,当時発売されていたdbxレコードが聴ける機能
も持っていました。ドルビーB,Cも1チップLSI化し,部品点数をチャンネルあたり20点も低減し,音質劣化
を抑え,動作精度の向上を図っていました。
アンプ系は,ダイレクトカップリング方式のオールDC構成アンプを搭載し,イコライザーアンプをはじめすべ
てのアンプに±2電源方式のDC構成アンプ回路を使用していました。また,REC部,PB部,NR部を各ブ
ロック化し,センターシャーシによりシステムコントロール部と電源部との分離をし,トランスを独立した専用
シャーシに搭載するなど,各部の相互干渉を排除する設計がなされていました。



スイッチ類は誤操作防止のために再生系と録音系を分離し,REC,REC MUTE,PAUSEの各スイッチお
よび,RECレベル,NRセレクター,OUT PUT LEVEL,BIAS FINE等をモーター駆動式のオート・グライド
パネル内に収納していました。

メカニズム・コントロール系は,専用にプログラムされたLSIを2個搭載したマルチCPUコントロールで,リバー
スデッキならではの機能性を発揮していました。A・B面を通して両方向に最大15曲も頭出しができるCPS
(Computomatic Program Search),A面,B面の頭から何曲目という頭出しを行うCDS(Computom
-atic Direct Selection),再生中に10秒以上の無信号部分があると自動的に早送りして次の曲から再
スタートするブランクスキャン,任意の2点間を繰り返し演奏する(AB両面にわたる2点間も可能)ブロックリ
ピート,曲の頭だけを10秒ずつ再生していくイントロチェックなど多彩な機能を持っていました。
こうした多機能を実現するメカニズムには,さらに,メモリーポイントへのスキャン精度を向上させ,メカニズム
の耐久性も向上させるために,高速サーチ時,目標値に20カウントまで近づくとリールモーターの印加電圧
を自動的にコントロールして,早送り/巻き戻しのスピードをダウンし正確に設定位置でSTOPまたはPLAYを
行うようになっていました。

テープカウンターは,4桁のLED表示で,モードスイッチで,テープ走行を分・秒で表示することもできるように
なっていました。また,CPS,CDS操作時には,曲のカウントナンバーを表示するようになっていました。
レベルメーターは,LEDによる16DOTの-∞~+10dBのワイドレンジ・ピークレベルメーターが搭載されて
いました。

以上のように,R-777Xは,ティアックブランドのオートリバースデッキのプレステージモデルR-999Xに次ぐ
弟機として,シングルウェイデッキに負けない性能と,オートリバースデッキならではの多機能を両立させて
いました。そのデザインには,ティアックのこのデッキにかける意欲がみなぎっているようにも感じられました。
オートリバースデッキながら安定した録再性能をもつ1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



これほどまでに,テクノロジーと贅の
限りを尽くしたリバースデッキが,  
かつて存在しただろうか。

◎CA(コバルト・アモルファス)2ヘッドリバース。
◎リバースメカニズムの極致,SuperA.R.H.S
  (Acculigh Rotating Head System)
◎シンメトリカル・メカニズム
 2D.D.キャプスタンモーター+1リールモーター
トータルなクオリティをアップする,
  オールDC構成アンプ。
◎BIAS FINEを装備。
リバースデッキの機能性を生かす,
  マルチCPUコントロール。
カウンター・スキャンの精度を上げる,
  アキュレイト・デュアル・スピード。
操作性とスタイリングを両立させた,
  オート・グライド・パネル。
使い易さを秘めた,
  4桁LEDマルチカウンター。




●MODEL R-777X SPECIFICATIONS●

トラック形式 4トラック・2チャンネル・ステレオ
ヘッド構成 録音/再生(コバルト・アモルファス)×1
消去(ダブルギャップフェライト)×2
使用テープ C-60,C-90タイプ
テープ速度 4.8cm/S
モーター構成 キャプスタン用:ブラシレスDCサーボDD×2 
リール用    :DC×1 
メカニズム駆動用:DC×1
グライドパネル作動用:DC×1
ワウ・フラッター 0.03%以下(WRMS),±0.06%W.Peak(EIAJ)
早巻時間 約80秒(C-60テープ)
総合周波数特性 20Hz~21,000Hz(30Hz~20,000Hz ±3dB EIAJ):メタル 
25Hz~20,000Hz(30Hz~19,000Hz ±3dB EIAJ):クローム 
25Hz~19,000Hz(30Hz~18,000Hz ±3dB EIAJ):ノーマル
総合SN比
(メタルテープ)
60dB(NR OUT,WTD3%THDレベル) 
69dB(ドルビーB-NR IN 5kHz以上) 
79dB(ドルビーC-NR IN 1kHz以上) 
91dB(dbx IN 1kHz)
ダイナミックレンジ
(メタルテープ)
110dB(dbx IN 1kHz,ピークレベル)
入力 ライン:60mV(入力インピーダンス50kΩ)
出力 ライン:0.5V(負荷インピーダンス50kΩ以上) 
ヘッドホン:40mW最大(8Ω)
電源 100V AC,50/60Hz,32W
外形寸法 432W×119H×359Dmm
重量 8kg
※本ページに掲載したR-777Xの写真,仕様表等は1984年8月のTEACのカタログより
 抜粋したもので,ティアック株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。         
 

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