Technics SL-M3
QUARTZ SYNTHESIZER D.D. FULL AUTOMATIC PLYAER SYSTEM
                                          ¥99,800
1984年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプレーヤーシステム。SP-10以来,DDプ
レーヤーの先駆者テクニクスは数多くのすぐれたD.D.プレーヤーを発売してきました。そんなテ
クニクスが,CD元年の2年後に発売したプレーヤーで,同社では異色の木目調の落ち着いた
デザインをもった「SL-Mシリーズ」の最上級機として発売されたのがSL-M3でした。

SL-M3の最大の特徴は,リニアトラッキング方式のアームを搭載していたことでした。カッティ
ングマシンと同じように針先が直線軌跡を描いてレコードをトレースし,トラッキングエラー,イン
サイドフォースがほぼゼロになるという,理論的に最も理想に近いといわれたリニアトラッキング
アームですが,機構的に複雑になり,アームのスムーズな移動を行う機構が必要であるなど,
高度な技術を要する面もあり,発売された機種数やブランド数はどうしても限られるところがあ
りました。そうした中で,テクニクスは,早くから取り組んでいたブランドで,1979年には,「ジャ
ケットサイズプレーヤー」
をリニアトラッキングアームで実現するなど,リニアトラッキングアーム
のプレーヤーの牽引者でもありました。そうしたテクニクスがリニアトラッキング方式の本格的な
高級プレーヤーとして発売したのがSL-M3でした。

SL-M3のリニアトラッキングアームは,同社の高級トーンアームEPA-100にも採用された,軽
量で強度の大きなチタンをさらに窒化処理により硬化したチタニウム・ナイトライド・パイプアーム
を採用し,カートリッジを含めた実効質量13gというローマス設計で,アーム軸受けは,水平・垂
計4カ所のピボット部を,すべて精密研磨ピボットと高精度ボールベアリングで構成した精度の
高い
4点支持のジンバルサポートを採用していました。そして,回転軸の中心に重心位置が一致
する独自のダイナミックバランス方式になっていて,プレーヤーを厳密に水平に置いていない状
態でも,正常な再生ができるほどでした。アームの正確な駆動のために,オプチカルセンサーが
搭載され,アーム偏角を検出して極めて高精度な検出信号を得て,ベルト駆動でアームを高精
度に移動させ,トラッキングエラー角±0.05度以内を実現していました。アームの駆動は,マイ
コンを使った電子制御で,左の操作部でレコードサイズ,回転数をセットすると,キャビネット上右
前部のスイッチ操作でワンタッチでの演奏スタート,ストップ,アームの移動が可能で,リピート演
奏も可能なフルオートプレーヤーとなっていました。そして,同社のリニアトラッキングアームに共
通の,差し込むだけで接続できるT4P規格のMM型カートリッジが付属していました。

ターンテーブルは,「SL-Mシリーズ」共通の直径32.5cm,重量2.5kgのアルミダイカスト製
の重量級のものを搭載し,慣性質量427kg・cm2を確保していました。ターンテーブルを駆動
するモーターには,テクニクスが伝統的に採用してきた,ブラシレスDCモーターを搭載し,1.6
kg・cmの起動トルクで,重量級のターンテーブルを,わずか0.9秒,1/4回転(331/3回転時)
で定速回転させることが可能となり,すぐれた負荷変動特性も実現していました。そしてモーター
のローターマグネットをターンテーブルと一体化したテクニクス独自の一体構造D.D.を採用してい
ました。
回転数制御は,回転数検出に全周検出FGを採用し,基準信号発生用には高精度な水晶発振
器を使用し,高精度なクォーツ制御を可能にし,ワウ・フラッタ0.008%(FG直読法),回転数
偏差±0.002%,SN比82dBを実現していました。さらに,クォーツ制御を維持したまま,定速
回転±6%の範囲でピッチコントロールが行え,リセットボタンを押せば瞬時に定速回転に戻る
Q.L.S.(クォーツ・リニア・シンセサイザ)を搭載していました。

キャビネットは,テクニクスのプレーヤーにはダイカスト製や樹脂製が多く見られましたが,高密
度パーティクルボードによる積層キャビネットで,表面は美しい鏡面仕上げが施されていました。
底板とターンテーブルの軸受支持部には,テクニクス自慢の耐振性,防振性にすぐれた音響素
材T.N.R.C.(Technics Non Resonance Compound)が採用され,大型インシュレーター
とともに,トータルに無振動・無共振の設計がなされていました。

以上のように,SL-M3は,「SL-Mシリーズ」の最上級機として,リニアトラッキング方式のプレー
ヤーとして,高い完成度を実現していました。テクニクスが積み上げてきたDDプレーヤーの技術
をはじめ,高い総合技術が生かされた1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



際立ったスペックと操作性。
重厚なリニアトラッキングフルオート。

◎再生時の歪発生の原因となるトラッキング
 エラーや,チャンネルアンバランスの原因と
 なるインサイドフォースを0に近くできる,独
 自のリニアトラッキングアームを搭載。
◎トーンアームは独自のダイナミックバランス
 方式を採用。
◎アーム軸受は4点支持方式ジンバルサス
 ペンション。
◎直径32.5cm,重量2.5kg,慣性質量
 実に427kg・cm2という大型・重量級アル
 ミダイカストターンテーブル。
◎起動トルク1.6kg・cm,ワウ・フラッタ
 0.008%(FG直読),回転数偏差±
 0.002%以内,SN比82dBを実現。
◎±6%の範囲で連続可変ピッチ調節。
◎電子制御フルオート機構。
◎T4P高性能MM形カートリッジ。
◎TNRC&高密度キャビネット。




●SPECIFICATIONS●


■ターンテーブル部■

駆動方式  ダイレクトドライブ 
制御方式  クォーツ制御 
回転数  331/3,45rpm 
回転数調整範囲  ±6%(連続可変) 
ワウ・フラッタ  0.008%(WRMS FG直読))
0.022%(WRMS JIS C5221) 
SN比  82dB DIN-B
70dB DIN-A



■カートリッジ部■

型式 プラグインコネクタ
MM形ステレオカートリッジ 
交換針品番 EPS-P205ED4
標準価格15,000円 



■総合■

電源 AC100V 50/60Hz 
消費電力  22W 
外形寸法  526W×202H×426Dmm 
重量  13.5kg 
※ 本ページに掲載したSL-M3の写真・仕様表等は1988年4月の
 Technicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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