Technics SU-V90D
DIGITAL INTEGRATED AMPLIFIER ¥89,800
1987年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプリメインアンプ。1986年にALPINE/LUVMANの
LV-109が発売されたのを皮切りに,各社からD/Aコンバーター内蔵のプリメインアンプが発売されてい
きました。そんな中,テクニクス初のD/Aコンバーター内蔵型のアンプSU-V100Dの弟機として発売され
たのがSU-V90Dでした。
D/Aコンバーター部は,上級機と同じく「4DAC・18bit変換システム」と称されるものでした。アンプ同様
にD/Aコンバーターでも信号の+,-が切り替わるときに問題となるゼロクロス歪みを解消するために,
入力データの+成分と-成分とを独立処理する2つのD/AコンバーターをL/Rの各チャンネルに搭載し,
計4個のD/Aコンバーターを使用したシステムが4DACシステムでした。入力されたデジタル信号は,新開
発の4DACプロセッサLSIで,+,-信号を判別し,2つのD/Aコンバーターを切り換えて高速処理するこ
とで,原理的にゼロクロス歪みの発生を抑えていました。4DACプロセッサLSI等の使用により,-12dB
以下の平均音楽レベルにおいてD/Aコンバーターの18bit動作を実現し,225次+41次の4倍オーバー
サンプリング18bit方式のデジタルフィルターの採用とあわせ,信号波形の再生能力,特に微細レベルに
おける表現能力を高めていました。この「4DAC・18bit変換システム」は,同軸1系統,光1系統の入力端
子を装備していました。また,サンプリング周波数32kHz,44.1kHz,48kHzに対応し,自動切換となっ
ていました。
パワーアンプ部は,SE-A100で開発された「classAA回路」が採用されていました。「classAA回路」は,
通常一つのアンプ内で行われる電圧コントロールと電流ドライブの2つの動作をそれぞれ独立させ,別個の
アンプに受け持たせたもので,左右合わせて2つの電流ドライブアンプと電圧コントロールアンプで計4個の
アンプで構成され,「VC-4(Voltage Current 4)アンプ構成」と称していました。
「VC-4」アンプ構成は,出力インピーダンスが無限大の電流ドライブアンプと出力インピーダン スが0の電圧
コントロールアンプをパラレルにつなぎ,電流供給から開放された電圧コントロールアンプが入力信号に忠実
に電圧コントロールし,駆動に必要な電流は電流ドライブアンプから存分に供給されるというある種理想的な
動作方式となっていました。その結果,負荷インピーダンス変動にも電流/電圧の位相ズレのない安定した
伝送・増幅特性を得るというものでした。こうして充分な電流供給能力を得たclassAA搭載のパワーアンプ部
は,120W+120W/0.002%という,低歪率とハイパワーを実現していました。
電源部には,OFC線完全整列巻線法による高密度効率化技術で,すぐれたレギュレーションを実現した,大
容量電源トランスを搭載し,さらに,電源用電解コンデンサーには,新開発ハイスピードEX電解コンデンサー
を搭載していました。このEX電解コンデンサーは,バイオテクノロジーの応用により,電解液の純度を2桁以
上も向上させ,電極に付着した不純物によるわずかな歪みも解消したものでした。さらに,出力段と電源部を
一体化し,電磁誘導を防ぐ,テクニクス伝統のコンセントレーテッドパワーブロックを採用し,より高品位な再
生を実現していました。
入力系は,PHONO,TUNER,CD,AUX,パワーアンプダイレクト,TAPE1,2とアナログ7系統とデジタル
2系統が装備されていました。PHONOはイコライザーアンプによりMM/MC双方に対応していました。D/A
コンバーター内蔵プリメインアンプという形式を生かすために,内蔵のD/Aコンバーターの出力信号及び,パ
ワーアンプダイレクト入力信号は,classAAバッファアンプ及び,パワーアンプ入力ボリュームだけを介して,
直接パワーアンプに入力するシンプルな信号経路となっていました。また,パワーアンプ入力ボリュームには
表面を鏡面上に平滑化した新抵抗体と,金メッキを施した多接点ブラシを採用したP.C.L.低ンピーダンスボ
リュームが採用され,約10dBのSN比改善を実現していました。
コンストラクションにおいては,デジタル回路,フォノイコライザー回路,パワーアンプ回路などが互いに干渉し
ないように,それぞれのブロックが厳重にシールドされ,電源を通じての干渉を排除するため,温度安定性
にすぐれた電源専用の定電圧ICと高周波特性に優れた広帯域ICを組み合わせて帰還回路を形成し,高い
電圧安定性と,低域から高域まで広い周波数にわたるローノイズを実現したアクティブサーボ電源も採用さ
れ,ソース間の干渉による音質劣化をしっかりと抑えていました。
パーツの面でも,オーディオ専用パーツを厳選して使用し,内部配線をはじめ,各パーツのリード線にいたる
まで高純度OCC,OFC材を厳選使用していました。
アンプの振動による音質劣化を抑えるために,大型金属脚を採用をはじめ,防振対策もしっかり施されてい
ました。
以上のように,SU-V90Dは,SU-V100Dの弟機として,技術的内容をほぼ継承し,合理化された作りで
大きくコストパフォーマンスを上げた1台でした。すっきりと透明感のあるしなやかさと,スピーカーをしっかり
駆動する力強さをもったテクニクスらしい音のアンプでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
120W+120W。
新開発4DAC・18bit変換システム搭載。
デジタルソースの魅力を
存分に楽しめるアンプです。
①デジタル信号を高純度処理する,
4DAC・18bit変換システム。
②デジタル信号のハイクオリティ伝送を
可能にする,光入力端子。
③classAA搭載。120W+120W/0.002%
のハイスペックを実現。
◎微小信号を表情豊かに。
4DAC・18bit変換システム
◎高品位なデジタル信号伝送を
実現するデジタル光リンク
◎120W+120W/0.002%のハイスペック
独自のclassAA搭載パワーアンプ。
◎ピュアな信号伝送をさらに徹底した,
新パワーアンプダイレクト機能。
実効出力 |
12 120W+120W(20Hz~20kHz,6Ω,0.005%) |
全高調波歪率 |
0.002%(定格出力-3dB) |
周波数特性 |
20Hz~20kHz(+0dB,-0.2dB) 0.8Hz~150kHz(+0dB,-3dB) |
SN比 |
115dB(IHF’66,Power Amp Direct時) |
ダンピングファクタ |
80(8Ω) |
負荷インピーダンス |
main or remote:6Ω~16Ω |
入力感度/入力インピーダンス |
MM:2.5mV/47kΩ MC:170μV/220Ω tuner,CD,aux,tape:150mV/22kΩ |
Phono SN比 |
MM:2.5mV入力:88dB MC:250μV入力:72dB |
Phono周波数特性 |
20Hz~20kHz,RIAA±0.2dB |
トーンコントロール |
bass:50Hz(+10dB~-10dB) treble:20kHz(+10dB~-10dB) |
電源 |
AC100V,50/60Hz |
消費電力 |
220W |
外形寸法 | 478W×158.4H×397Dmm |
重量 |
14.7kg |
↓※本ページに掲載したSU-V90Dの写真,仕様表等は,
1988年4月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,
パナソニック株式会社に著作権があります。したがって
これらの写真等を無断で転載,引用等することは法律で
禁じられていますのでご注意ください。
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