TEAC C-3X
STEREO CASSTTE DECK ¥119,000
1980年に,ティアックが発売したカセットデッキ。ティアックは,オープンリールデッキの時代よりテープ
デッキにすぐれた技術をもつブランドでした。そんなティアックは,1970年代に入り,カセットデッキにお
いても数多くのすぐれた製品を発売し,1978年にはC-1,1979年にはC-1mk2,C-2C-3といっ
た高性能な3ヘッドデッキの「Cシリーズ」を発売し,高い評価を得ていました。そして,この中のC-3の
発展型として発売されたのがC-3Xでした。

走行系は,オーソドックスなシングルキャプスタンで,一定したヘッドタッチを確保するためのテンション
サーボ機構が搭載されていました。駆動系は,1モーター構成だったC-3に対して2モーター構成となっ
ていました。FF・REW・PLAY時のリール駆動用にDCモーター,キャプスタン駆動用に電子制御2速度
DCモーターがそれぞれ専用に搭載された2モーター方式で,キャプスタンモーターの負担が抑えられ,
安定したテープ走行が実現されていました。

C-3Xの最大の特徴は,テープスピードを2倍にして録音・再生ができる倍速機能の搭載でした。通常の
4.8cm/secから9.5cm/secにすることで,記録面積が2倍になり,再生時には,高域補償量を少な
くすることができる分だけ,ノイズが減少することになります。さらに,倍速により,フライホイールの回転
エネルギーを増し,ワウ・フラッターも向上するという付加価値が生じていました。こうしたことで,ノーマ
ルテープの周波数特性とノイズレベルはメタルテープにおける4.8cm/secの特性とほぼ同じになり,
メタルテープ使用時には,カセットデッキの枠を大きく超える特性を実現していました。



ヘッド構成は,録音ヘッドと再生ヘッドが独立した3ヘッド構成で,Cシリーズ共通のものとなっていました。
録音ヘッドは4ミクロンのギャップ,再生ヘッドは1ミクロンのギャップと最適なギャップ幅が設定されたHD
(ハイデンシティ)フェライトヘッドによるコンビネーションヘッドで,1個のシールドケース内に精密に組み込
まれ,アジマスエラーを抑えつつ,録音・再生性能とヘッドタッチや走行性の両立を図っていました。消去
ヘッドはメタルテープに対応した消去効率の高いフェライトヘッドを搭載していました。
アンプ回路は,カップリングに使用するコンデンサーを厳選し,洩れ電流が非常に少なく高音質を実現して
いました。また,ライン入力以外に本格的なマイク入力も備え,マイクアンプには,ローノイズトランジスタ
(2SC1844(F))を採用し,ノイズレベルを従来比6dB低減していました。



テープポジションは,バイアス,イコライザー独立で,NORMAL,Co(CrO), METALの3ポジションが備
えられていました。さらに,入出力ボリュームの下に,BIAS/REC CALIBRATIONが設けられていました。
別売のバッテリー式発振器TO-8(¥5,500)をTEST IN端子に接続し,ADJUSTボタンを押すと,現在選
択しているテープポジションのみで録音バイアスと録音感度の微調整ができるようになっており,ADJUST
ボタンをPRESETポジションに戻すとデッキの固定ポジションに復帰するようになっていました。
ノイズリダクションとして,ドルビー(Bタイプ)が搭載されていました。さらに,新たにドルビーHX(High Exte-
nsion)システムが搭載されていました。バイアス・イコライザーを録音ソースの周波数成分に応じて自動的に
コントロールし,高域特性をよりよく引き出そうとするもので,4.8cm/secのテープスピードで,ノーマルテー
プ,クロームテープを使用したとき,動作するように設定されていました。
オプションのdbxユニットのRX-8B(¥98,000)使用すると,デッキ本体のスイッチでdbxが使用でき,80dB
以上のダイナミックレンジを実現することができました。

テープ走行の操作系は,フルロジック・オペレーションで,軽く触れるだけで敏感に反応し,ボタンの配置は
Cシリーズ共通の合理的なものとなっていました。そして,Cシリーズに共通のパネルデザインは,測定機器
を連想させる精密なもので,入力ボリュームは,左右独立した形ながら,一方の回転に合わせて他方が精
密に連動する差動型左右連動タイプで,精密な操作感覚を実感させる演出にもなっていました。

以上のように,C-3Xは,CシリーズのC-3をベースにより高性能をめざして各部を強化したモデルで,特に
倍速というユニークな機能は,ティアックならではのものでした。ハードで精密な操作感とデザインは,独自の
魅力を放ち,レンジの広いクリアで力強い音も,すぐれた性能を示すものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



倍速をご存知ですか。
ドルビーHXシステムをご存知ですか。
dbxシステムをご存知ですか。
          ・・・・・・・・・・・。
C-3Xをご存知ですか。

◎走れるか,こんなに速く。
 テープスピードを倍にした,9.5cm/sec。
◎高域のダイナミックレンジのために
 技術はここまで来た。ドルビーHXシステム。
◎テープをどれだけ安定走行させられるか。
 精密駆動メカニズムと,テンションサーボ機構。
◎もうひとつの安定走行のための工夫。
 倍速メカを支える,2モーターシステム。
◎ダイナミックレンジのために
 C-1,C-2,C-3の血統を守れ!C-3Xフィーチャー。

●高級カセットデッキの条件・3ヘッド。
●恐るべき威力,dbxシステム(別売ユニット使用)。
●メタルテープポジション装備のテープセレクター。

◎音に触れる感触。
 ソフトタッチなフルロジック・オペレーション。
◎アンプに不安なし!
 厳選したコンデンサーを使用した高品質アンプ。
◎万全を期していい音を語る。
 テープ調整用のTESTポジション。
◎カセットデッキは操作を楽しむメカ。
 使いやすさを高める数々の装備群。

●留守番,目覚し再生に便利なタイマー機構。
●録音チェックや繰り返し再生に便利なタイマー機構。
●コマーシャルカットに威力 REC MUTE。
●ピークを確実にキャッチ。ピークレベルメーター。
●精密度をデザインした差動型左右連動入力ボリューム。




●仕様●

トラック形式 4トラック2チャンネル・ステレオホニック方式
ヘッド 3:消去(フェライト)
  録音・再生コンビネーション(HDフェライト)
使用テープ C-60,C-90カセットテープ
テープ速度
4.8センチ,9.5センチ
モーター 電子制御DCモーター(キャプスタン用)×1
DCモーター(リール用)×1
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS,4.8センチ)
0.03%(WRMS,9.5センチ)
早巻時間 C-60テープで80秒以内
周波数特性(総合) 20~20,000Hz(4.8センチ)
20~25,000Hz(9.5センチ)/メタルテープ
20~18,000Hz(4.8センチ)
20~24,000Hz(9.5センチ)/クロームテープ
20~16,000Hz(4.8センチ)
20~21,000Hz(9.5センチ)/ノーマルテープ
SN比(総合) 60dB(4.8センチ),62dB(9.5センチ)/ (3%ひずみレベル,聴感補正)
ドルビーNRシステムにより録音・再生において
1kHzで5dB,5kHz以上で10dBの雑音低減が可能
入力 マイク:0.25mV/-72dB 
    (適合インピーダンス200Ω以上) 
ライン:60mV 
    (入力インピーダンス50kΩ)
出力 ライン:0.3V 
    (負荷インピーダンス50kΩ以上) 
ヘッドホン:8Ω
電源
100V AC,50/60Hz,25W
外形寸法 482W×147H×345Dmm
重量 9kg
※本ページに掲載したC-3Xの写真,仕様表等は1980年6月の
 TEACのカタログより抜粋したもので,ティアック株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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