MICRO CD-M2000X
COMPACT DISC PLAYER ¥380,000
1992年に,マイクロが発売したCDプレーヤー。マイクロはマイクロ精機の社名の通り,すぐ
れた精密金属加工技術を生かしてアナログプレーヤーの分野ですぐれた製品を多く発売し,
高い評価を得ていました。CD時代に入り,重量級アナログプレーヤーに力を注いでいました
が,そんな中,1987年に,CDプレーヤーCD-M2を発売し独特の存在感を放っていました。
その翌年,CD-M100を発売し,大きくデザインイメージを変えで発売されたCD-M2000X
が同社最後のCDプレーヤーとなりました。

CD-M2000Xは,CDのオリジネーターであったフィリップスのメカニズム,D/Aコンバーター
等を搭載したCDプレーヤーでした。当時,CDプレーヤーを完全に自社生産することは,マイ
クロのような規模のオーディオメーカーでは生産量やコスト面などからも難しいため,信頼でき
る大手メーカーから主要部分の供給を受け,これに自社の技術を盛り込んで自社製品に仕上
げるという手法が採られており,海外製品では,フィリップス以外はすべてこうした製品でした。
CD-M2000Xでも,マイクロ自慢の機械的構造,筐体構造等の大幅な強化が図られていま
した。

基盤となるシャーシは,剛性の高いアルミダイキャスト製で,その外側を囲む筐体は,フロント
パネルが15mm厚サイドパネルは10mm厚の「アルハイス」というアルミムク材を,ローディン
グ部等,必要最小限くり抜いて取り付けることで高い剛性を確保していました。「アルハイス」と
いうのは,神戸製鋼が開発した精密機械加工用高精度アルミ合金厚板で,半導体製造機器,
医療機器など,高精度が要求される工業製品用に,残留応力の低減,表面品質の向上,すぐ
れた板厚精度・表面平坦度を追求した高品質なアルミ厚板のことで,金属の精密加工を得意
とするマイクロがこれを使用し,精度と剛性の高い筐体ができていました。
また,底板部分は,シャーシとの間に鉛シートをはさみ込んで制振処理をし,さらに,トップカ
バーやトレイ部分などは,フェライトの制振シートによるダンピングを施すなど,徹底した防振対
策が施されていました。
筐体全体を支える脚部は,前2点,後ろ1点のがたつきの生じにくい3点支持となっており,材
料にはクロームメッキ処理の真鍮削り出しの脚を使用していました。また,置き場所の条件に
よって,リジッドタイプとフェルトタイプを使い分けられる2ウェイ脚部となっていました。

CDドライブメカニズムには,CDM-1を搭載していました。これは基本構造が1983年に完成
されたフィリップス自
慢のメカニズムで,LHH-2000,LHH-1000等の高級機にも搭載されてきたものでした。1
ビーム方式のスイングアームピックアップを持ち,精密で堅牢なダイキャスト製で,レンズには
収差が少なく温度特性にすぐれたローデンシュトック社製のガラスレンズを採用し,高いピック
アップ能力を実現していました。CD-M2000Xが発売された1992年の時点で,フィリップス/
マランツグループにもすでに在庫が無い状態で,幻のピックアップシステムとなっていました。
つまり,CDM-1を新規に搭載した貴重な最後(?)の機種となってしまいました。



D/Aコンバーターは,定評のフィリップス製LSI(TDA1541A-S1)が搭載されていました。この
TDA1541A-S1は,当時のフィリップスのマルチビット系の最新ディバイス”Aバージョン”の中
からさらに厳選されたセレクテッドタイプで,型番とともにクラウンマークが刻印されていました。
D/Aコンバーターとして,全温度幅で,微少信号時には,0.5LSB,通常のレベルで1LSBとい
う高いリニアリティが確保されていました。
デジタルフィルターにはSAA7220P/Aが採用されていました。当時定評のあった16ビット4倍
オーバー・サンプリング方式のデジタルフィルターで,サンプリング周波数を44.1kHzの4倍に
あたる,可聴周波数帯域をはるかに超える176.4kHzとすることで,高次の量子化ノイズを可
聴帯域外に追放し,これによりD/A変換後のアナログ・ローパス・フィルターに減衰特性の緩や
かな3次ベッセル・フィルターの使用が可能となり,高域位相特性や中・高域における定位感の
向上が実現されていました。

オーディオ出力部は,すべてICを使ったシンプルなバランス出力回路が採用され,使用パーツ
は,ヨーロッパのテレフンケン,EROなどの音質に定評のあるコンデンサーやPCOCCの極太
線材を採用するしていました。また,アナログ出力は,シンプルさを求めたためか,上述のバラ
ンス出力のみに絞られており,ピンプラグに対応するためには,付属しているノイトリック社製の
キャノン/ピン変換コネクターを使用するようになっていました。
デジタル出力は,同軸,光を各1系統装備し,音質劣化の要因となり得るヘッドホン出力は省か
れていました。

電源部は,2次巻線のアナログ回路用,デジタル回路,ディスプレイ回路用の3回路が独立した
大型のトランスが搭載されていました。そして,電気的なベースとなる電源部は,電源トランスの
振動や磁気的な問題が音質への影響を与える部分でもあるため,トランスの構造,取付け方法
等に,同社の高級アナログプレーヤーでの技術やノウハウが投入され,ショートリング,ハムプ
ルーフベルト,銅メッキシールドケースによる厳重な構造になっており,トランス自身から出る電
磁振動を極小に抑え,漏洩磁束も完全に抑えていました。

以上のように,CD-M2000Xは,マイクロが,フィリップス/マランツ系のディヴァイスをコアに据
え,持ち前の高精度な金属加工技術,振動系のノウハウなどをしっかりと投入した力作でした。
それまでの同社のCDプレーヤーとは大きくイメージを変えたデザインも,同じようにフィリップス
のディヴァイスを用いた作り方をするヨーロッパ系のメーカーを思わせるものとなり,独自の雰囲
気を持つものとなっていました。同社のCDプレーヤー伝統の適度に抑制の効いた渋い重厚な
音質を継承しつつ,明るさやしなやかさも加えたものとなっていました。結果として同社最後の
CDプレーヤーとなってしまった1台でもありました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



質の高い音楽の再生を
CDで行うことの
基本的な条件は
アナログディスクプレーヤの
条件と全く同じです。

◎高剛性・制振構造
◎完全シールド大型電源トランス
◎ブロック別完全シールド
◎デジタル出力回路
◎格調あふれる洗練されたデザイン




●規格●

形式 コンパクトディスク・デジタル・オーディオシステム
方式 16ビット4倍オーバサンプリング,ツインDAC,
3次ベッセル・フィルター
チャンネル数 2チャンネル
周波数特性 2Hz~20kHz±0.1dB
S/N比 104dB以上(1kHz)
クロストーク -100dB以下(1kHz)
ダイナミックレンジ 96dB以上
出力レベル 1mW/600Ω バランスタイプアナログ出力)
0.5p-p/75Ω デジタル同軸出力
デジタル・オプチカル出力
電源 AC100V 50/60Hz
外形寸法 450W×113H×368Dmm
重量 23kg
※本ページに掲載したCD-M2000Xの写真・仕様表等は1992年
 の
MICROのカタログより抜粋したもので,マイクロ精機株式会社
 に
著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,
 引
用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

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