DIATONE DP-EC3
FULL AUTO PLAYER SYSTEM ¥76,800
1978年に,ダイヤトーン(三菱電機)が発売したプレーヤーシステム。ダイヤトーンはスピーカーのブランド
としてのイメージが強く,テープデッキやアナログプレーヤーなどの回転系機器のブランドとしてはイメージが
弱いですが,1976年に,電子制御をとりいれたフルオートプレーヤーDP-EC1を発売するなど,持ち前の
エレクトロニクス技術を生かしたすぐれたプレーヤーを発売し,さらにリニアトラッキングプレーヤー,そして
縦型プレーヤーなどのユニークな製品も発売するなど,実は隠れた実力派のブランドでした。そんなダイヤ
トーンがDP-EC1(MKⅡ)の弟機として発売したのがDP-EC3でした。

ターンテーブルは,アルミダイカスト製で,直径333mm,重量1.8kgで,慣性質量353g-cmS2という重量
級で,起動トルク1.2kg・cmの4相12極クォーツPLL・DCサーボモーターによるダイレクトドライブ方式が
採用されていました。水晶発振器の高精度な基準信号によってモーターの回転数を制御するクォーツPLL
方式と高精度・高トルクのモーター,ダイナミックバランスのとれた重量級ターンテーブルにより,ワウ・フラッ
ター0.03%(WRMS・JIS),SN比75dB(DIN-B)という正確で滑らかな回転を実現していました。
また,ストロボ機構には通常のネオンランプに代えて,LEDが採用され,クォーツの発振周波数を使用した
1/1000秒という非常に短いパルス幅の信号を作り出してLEDをドライブする方式により,にじみの少ない
クリアなストロボ機構となっていました。

トーンアームは,全長320mm,有効長227mmのスタティックバランス形・ユニバーサルS字パイプアームで
アームパイプには,剛性の高いステンレス製パイプを採用し,アームのたわみが抑えられていました。アー
ムのピボットでは垂直方向のピボットのスパンを広げ,水平軸受けに本格的なラジアルボールベアリングを
採用するなど,ガタを抑えた高精度な支持が実現されていました。
カウンター・ウェイトには,従来の針圧ノブとメインウェイトによる構造にウェイトケース,ブチルゴムダンパー
を加えた,アンチレゾナンス・フィルターを内蔵したカウンター・ウェイトを採用していました。
この共振防止機構により、30Hz~80Hz付近での共振を抑え、低音域の分解能を向上させていました。
ヘッドシェルから出力コード・ピンプラグまでのトータルDC抵抗を低く抑える事で音質を向上させ,MCカー
トリッジへの対応性も高めていました。ヘッドシェルにはマグネシウム合金製のものを搭載し,分解能を高
めていました。
キャビネットは,ダイカスト,木枠,レジナミック(樹脂系の複合材)を組み合わせたもので,剛性が高くハウ
リングに強い構造となっていました。

DP-EC3は,型番にあるECの型番の通り,EC(Electronic Control=電子制御)プレーヤーと称し,フル
オートプレーヤーとして基本性能と操作性の両立が図られていました。アームの各位置検出には無接触の
光学方式を採用していました。アームリフターの状態(アームの上昇・下降),アームが水平廻動内のどの
位置にあるかを瞬時に無接触で検出して作動する設計で,どの位置からもオート動作が可能となっていま
した。トーンアームの駆動には,垂直方向,水平方向それぞれ専用の独立したモーターを搭載し,ターン
テーブルの回転にはもちろん,他の方向アームの駆動にも影響を与えないようになっていました。また,
オート動作中以外には,アームの通常のマニュアル操作も可能でした。



レコードサイズの検出も光学方式で自動化されていました。リフレクターで光を斜め上から照射し,ターン
テーブル用リフレクターからセンサーを光を導き,レコードのサイズ(30cm,17cm)に応じて照射・遮断さ
れ,センサーの出力が変化し,出力回路が送られたロジック回路によりレコードサイズが検出されるように
なっており,そこで検出されたレコードのサイズをもとに,針先降下位置,回転速度が自動的に決定され
ボタン一つで演奏がスタートできる(オートリードイン)ようになっていました。また,レコードに針を下ろす際
の不快なノイズをタイミングよくカットするミューティング機構も搭載されていました。その他,演奏終了後に
アームが戻るオートリターン,演奏途中でもアームが戻せるオートカット,演奏終了後アームがレスト位置ま
で戻ってから再び演奏を開始するオートリピートが搭載され,レコードサイズの検出機構により,レコードが
載っていないときはアームが降下しない針先保護機能も搭載されていました。
操作ボタン類は,前面に配置され,マイクロスイッチを使用したフェザータッチ式を採用していました。新し
い指示にすぐ反応するクィックレスポンス機構ともあいまって,レコードをセットした後は,ダストカバーを閉
じたままでの軽快で快適な操作感覚を実現していました。

以上のように,DP-EC3は,フルオートプレーヤーとしてオーソドックスかつ使いやすい1台としてまとめら
れていました。シンプルなデザインは,大きな特徴はありませんが,ダイヤトーンのまじめな設計が表れて
いたと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



しなやかな動作とともに
優れた音質をものにした実力機。

◎高性能トーンアームで質の高い再生音
◎電子制御によるスムーズなアーム動作
◎クォーツ制御による精度の高い回転
◎アルミダイカストのターンテーブル




●主な定格●

●ターンテーブル駆動部●

駆動方式 ダイレクトドライブ
モーター 4相12極クォーツPLL・DCサーボモーター
ターンテーブル 外径333mm,重量1.8kg
アルミ合金ダイカスト
回転数 331/3,45(rpm)
ワウ・フラッター 0.03%(WRMS JIS)
SN比 75dB以上(DIN-B)


●トーンアーム部●

形式 スタティックバランス,ユニバーサル
S字パイプ形
全長 320mm
有効長 227mm
オーバーハング 14mm
トラッキングエラー角 +2.9°,-1.5°
オフセット角 22°
針圧調整 0~3g直読式(0.1gステップ)
ヘッドシェル マグネシウム合金(6.2g)
カートリッジ取り付け
重量範囲
11~16.5g
16~21.5g(サブウェイト使用)


●総合●

電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 9W
外形寸法 470W×150H×395Dmm
重量 12.5kg
付属品 45回転用アダプター,オーバーハングゲージ
ドライバー,サブウェイト

※本ページに掲載したDP-EC3の写真・仕様表等は,1980年11月のDIATONE
 の
カタログより抜粋したもので,三菱電機株式会社に著作権があります。したがって
 これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
ていますので,
 ご注意ください。

 

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