AKAI GX-F95
STEREO CASSETTE DECK ¥198,0001981年にアカイが発売した3ヘッドデッキ。1975年に,アカイは,当時のカセットデッキの常識を超
えた3モーター3ヘッドという構成のカセットデッキ,GXC-570Dを発売して高い評価を得ていました
が,その技術を受け継ぎさらに高めた,一つの頂点といえるのがこのGX-F95でした。ヘッドは,アカイ自慢の「スーパーGX(Glass & X’tal Ferrite)ヘッド」によるコンビネーション3ヘッド
でした。この「スーパーGXヘッド」は,フェライト素材を独自の加工技術によりローノイズ・クリスタル化
(単結晶化)し,これをヘッドコアとシールドコアに用い全体を高硬度ガラスで固めたもので,(1)従来
のフェライトが抱えていたノイズや粒子脱落などの難点を解決(2)高域でのエディカレントロス(渦電
流損失)が極めて小さく,高い透磁率と広い周波数特性を実現(3)ヘッドギャップの工作精度が非常
に高くできる・・などの利点を持ち,優れた音質と高い耐久性を実現していました。当時,アカイは他社
のデッキがメタル対応のためにセンダスト等の合金ヘッドに向かう流れの中,High Bs,High μフェ
ライト材の優れた性能と可能性を信じ,高性能ヘッド「スーパーGXヘッド」を完成させ,自社のデッキに
搭載していました。GX-F95では,この「スーパーGXヘッド」を録音用と再生用に専用化して用い,高
精度に一体化したコンビネーションタイプの3ヘッドとして,録音用ヘッドのギャップは4ミクロン巾,再生
用ヘッドのギャップは1ミクロン巾とそれぞれにあった理想的なギャップ巾で搭載していました。
走行系は,シングルキャプスタンで,キャプスタン駆動用とリール駆動用のモーターを搭載する2モーター
構成でした。特に,キャプスタン駆動用にはブラシレス・クォーツロックDDモーターを使用していました。
このモーターは,ホール素子位置検出による三相全波駆動方式と,高精度で応答の早いFGサーボ+
水晶発振による位相制御のクォーツロック回路により,強トルクと優れた回転精度,静粛性,耐久性を
誇り,ダイレクトドライブ方式でキャプスタンを駆動して,高い走行精度を実現していました。アンプ系は,録音アンプは歪みを極小に抑えたDCアンプを搭載し,再生アンプにはデュアルFETを採
用して大きく特性の改善を図っていました。GX-F95では,操作系とオートチューニングのそれぞれに対してコンピュータが使用され,当時としては
最先端の2機の4ビット(!)マイクロコンピュータが搭載されていました。
テープ走行の操作系には マイクロコンピュータが適切にテープ走行,ヘッドの動き,カウンター等をコン
トロールするロジックコントロールとなっていて,フェザータッチの操作系となっていました。
オートチューニングは,録音イコライザー及び録再感度のチューニングは左右独立で2回ずつ,(バイア
スは左右同時に2回行われる)行われる「左右独立ダブルチューニング方式」で行われ,さらに,テー
プの巻き始めのテープ特性の不安定な部分は自動的に早送りしてからチューニングが行われるという
先進的なものでした。後にGX-F91,GX-R99などのコンピュータを利用して自動化をさらに進めた
名機を生む出したアカイの高い技術の片鱗をうかがわせるものでした。テープセレクターはオートで,Normal,CrO2,METALのポジションに対応していました。テープカウン
ターは4桁のデジタル式で,テープ走行量/経過時間のどちらにも使えるようになっていました。レベル
メーターは,2色24セグメントのFLバーメーターで,VU/ピークの切換もでき,1秒間のピークホールド
機能も付いていました。プレイ機構としては,オートリピート,オートストップ,オートプレイ,メモリーなど
の基本的なオート機構を備え,ワンタッチで録音開始位置に戻ってスタンバイポーズ状態になる録音
キャンセル機構も備えていました。
ノイズリダクションとしてドルビーNR(Bタイプ)が搭載され,その他の機能では,マイク,ラインミキシン
グ機構,録音ミュート機構,タイマー録音 再生機構,などが備えられていました。
基本的な操作系以外は下部のシーリングドアの中に配置され,シーリングドアを閉めた状態ではシンプ
ルな外観となりました。シーリングドアはモータードライブにより,ワンタッチでソフトに開閉するようになっ
ていました。また,カセットリッドは,シンプルなアルミパネルのものと,テープ走行が見えるアクリルタイ
プの両方が付属し,取り替えられるようになっていました。また,全体が精悍なブラックボディのブラック
モデルもありました。
以上のように,GX-F95は,アカイ自慢の高いデッキ技術による優れた基本性能にコンピュータによる
自動機構を組み合わせた先進的な内容を持つデッキでした。アカイらしいすっきりとしたデザインと,そ
のイメージ通りのすっきりとクリアな音を持つ高級機でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
アカイが,いま望みうるカセットの音と
機能に挑戦した。
そしてGX-F95。
GXC-570D以来の3ヘッド思想は,
スーパーGXヘッドで開花した。
アカイは主張します。
最高のデッキにこそ,オートチューニングはふさわしい。
クオリティを極める重装備。
3ヘッド・2モーター・クォーツロック・DCアンプ。
●スーパーGX3ヘッドシステム
●2モーターシステム
●クォーツロックD.D.方式
●録音アンプのDC化
●コンピュータコントロール
カセットデッキはここまで進化した。
マイクロコンピュータ2機搭載による未来派オペレーション。
●高精度オートチューニング機構
●オートテープポジションセレクター機構
●電子デジタルテープカウンター
●オート/リピート/メモリー機構
●録音キャンセル機構
●センサーライトコントロールシステム
●集中表示のファンクションインジケーター
●ピークホールド付高精度FLバーメーター
●モータードライブ開閉のシーリングドア
●GX-F95の主要な規格●
トラック方式 | 4トラック2チャンネルステレオ方式 |
テープスピード | 4.75cm/秒 |
ワウ・フラッター | 0.028%WRMS(JIS) |
周波数特性 | 20〜17,000Hz ±3dB LNテープ
20〜18,000Hz ±3dB CrO2(SA)テープ 20〜21,000Hz ±3dB Metalテープ |
歪率(1kHz0VU) | 0.6% Metalテープ |
録音バイアス周波数 | 100kHz |
総合SN比 | 62dB(Metalテープ使用時,3%THDレベルWTD)
ドルビーNR使用時 S/N改善量は5dB(1kHz),10dB(5kHz以上) |
ヘッド | スーパーGX録音ヘッド×1
スーパーGX再生ヘッド×1 ダブルギャップ消去ヘッド×1 |
モーター | クォーツロックPLLサーボDDモーター(キャプスタン駆動用)×1
DCモーター(リール駆動用)×1 |
早送り・巻戻し時間 | 60秒(C−60テープ使用時) |
入力(レベル) | マイク:0.25mV(適合インピーダンス600Ω)
ライン:70mV(入力インピーダンス100kΩ以上) |
出力(レベル) | ライン:0〜410mV(最大時0VU)負荷インピーダンス20kΩ以上
ヘッドホン0〜100mV/8Ω |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 41W |
寸法 | 440W×164H×364mm |
重量 | 12.5kg |
※本ページに掲載したGX-F95の写真,仕様表等は1981年4月
のAKAIのカタログより抜粋したもので,赤井電機株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等する
ことは法律で禁じられていますのでご注意ください。
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