Technics SU-A4
STEREO DC CONTROL AMPLIFIER ¥200,000

1979年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したコントロールアンプ。1965年に松下電器(現パナソニック)
は,オーディオブランドとしてテクニクスを立ち上げ,総合家電メーカーとしての技術を投入し,すぐれたオーディオ
製品を作り上げていきました。スピーカーからスタートしたテクニクスブランドは,その後,様々な機器に広がり,ア
ンプにおいても高い技術を発揮していきました。1972年には,当時の国産機器の水準を大きく超えたセパレート
アンプSE-10000SU-10000を発売,1977年には,さらに超弩級機SE-A1,SU-A2を発売し,高い評価
を得ていました。そして,超弩級コントロールアンプSU-A2(¥1,600,000)の弟機として,より手頃な高級機と
して発売されたのがSU-A4でした。

スイッチング歪,クロスオーバー歪を原理的に除去し,すぐれた裸特性を得るために,全段A級増幅が採用されて
いました。回路構成は,ICL(インプット・コンデンサーレス)のMCプリ・プリアンプ,ICLのフォノイコライザーに完全
DCアンプ(フラットアンプ及びバッファアンプ)をプラスした構成になっていました。この構成により,MC入力は2つ
MM入力は1つのカップリングコンデンサーを通過するのみとなり,ハイレベル入力では,信号経路,NFBに一切
コンデンサーを含まない完全DC増幅となっていました。

フラットアンプ及びバッファアンプは,入力段を特性の揃ったデュアルFET差動増幅で構成し,カスコード,カレント
ミラー負荷とし,SEPP出力段をもつ2段構成としていました。出力トランジスターには,Hi-fTのSLPT(スーパー・
リニア・パワートランジスタ)を採用していました。SLPTは,高周波特性に優れた小信号用トランジスタを200個集
積したのに等しいというもので,100MHzオーダーの高域再生限界と小電流時から大電流時まで極めてリニアに
高い増幅率を誇り,超高域にいたるまでの低歪みを実現した素子でした。これにより,低歪化と周波数特性のワイ
ド&フラット化(DC〜400kHz,−3dB)が実現されていました。また,DC化されたバッファアンプにより,0.2Ωの
低出力インピーダンスが実現され,パワーアンプとのリモート設置も可能となっていました。

MCプリ・プリアンプは,超ローノイズFET4パラ構成で,フォノイコライザーは,デュアルFETによる差動増幅カスコー
ド・カレントミラー負荷の入力段により,いずれもICL化が実現されていました。フォノイコライザー部には,レコードの
ソリなどによる超低域ノイズをカットするイコライザー・サブソニック・フィルターが搭載されていました。

トーンコントロールは,シェルビング・トーン(設定された周波数以上または以下を全体的に一気にブーストあるいは
カットする方式のトーンコントロール)が搭載されていました。通常のbass,trebleに加えてsuper bass,super
trebleが装備されていました。bassは,ターンオーバー50Hz・最大変化量±5dB,trebleはターンオーバー2kHz
最大化変量±5dBというコントロール特性となっていました。そして,super bassは,12dB/octの急峻な立ち上が
りと,最大0dB〜12dBという可変特性・ブースト量をもち,スピーカーのf特を,低域へ最大1oct拡張できるというも
のでした。さらに,ターンオーバーは50Hz〜200Hzまで連続的に可変できるようになっていました。super treble
は,ターンオーバー8kHz・最大可変量±10dBで,カートリッジf特の補正等に便利なものでした。
これらのトーンコントロール機能は,ゲイン1で,DCフラットアンプとDCバッファアンプの間に挿入され,ON/OFF(via
tone−DC)が可能で,OFF(DC)時には,ストレートDCモードとなるようになっていました。

ボリュームには,5000万回転にも摩耗劣化無しというすぐれた耐摩耗性をもつCP(コンダクティブ・プラスチック)抵抗
体が使用されていました。抵抗体の表面は鏡面仕上げがされており,マルチコンタクトの摺動ブラシとあいまって,接触
抵抗は,従来の2分の1に抑えられていました。このCPボリュームを各チャンネルあたり2連(フラットアンプの前後)計
4連で搭載し,ボリューム絞り込み時のノイズを抑え,SN比を向上させていました。また,CP抵抗体はコンピュータを用
いて正確に較正されており,ボリュームのdB表示通りの正確な特性が確保されていました。

上述のように比較的機能的には多機能なコントロールアンプで,そのほかに−20dBのオーディオミューティング,ターン
オーバーが2段階(250Hz,500Hz)に切り換えられるラウドネスコントロール,inputセレクターとは別に録音ソースを
選べるrecセレクターなどが装備されていました。PHONO端子,TAPE端子とも2系統あり,PHONOの1系統はMC対
応となっていました。また,プリアウト端子は2系統装備され,パワーアンプの電源のon/offにも使える連動タイプのACア
ウトレットが装備されていました。
フロントパネルは,主要な操作系はパネル上面に配置され,下部のポケットドア内には,多くのコントロール機能が装備
される形になっていました。ポケットドアは着脱可能で,開けた裏側の面にコントロール類の操作状態が記録しておける
ように工夫されていました。

以上のように,SU-A4は,超弩級機のSU-A2を別格とすれば,当時のテクニクスのコントロールアンプのトップモデル
で,オーソドックスに性能を追求した回路構成と,各部に投入された高品質の素子,多彩なコントロール機能など,バラ
ンスのとれたコントロールアンプとして完成されていました。ノイズ感や歪み感の少ない音は,テクニクスらしいものでし
た。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




メカニズム,趣味性・・・オーディオを
知りぬいた男たちの
エグゼクティブセパレートシステム
A3,A4

プリアンプにおける波形伝送の理想を
追求したコントロールアンプ



●SU-A4主な定格●


入力感度/入力インピーダンス phono1・2(MM):2.5mV/47kΩ
phono1(MC):100μV/47Ω
tuner,aux,tape:150mV/47kΩ
全高調波歪率(20Hz〜20kHz) tuner,aux,tape,phono(MM),phono(MC)
 (VR max,5V output):0.001%
 (VR−30dB,1V output):0.001%
SN比(IHF-A) phono(MM):90dB
phono(NC):78dB(250μV入力)
tuner,aux,tape:105dB
周波数特性 phono(MM):20Hz〜100kHz,RIAA±0.2dB
phono(MC/MM):20Hz〜20kHz,RIAA±0.15dB
tuner,aux,tape:DC〜20kHz(+0,−0.1dB)
            DC〜400kHz(+0,−3dB)
最大許容入力 phono(MM):300mV(1kHz,RMS)
phono(MC):12mV(1kHz,RMS)
シェルビングトーン super treble(50kHz):±10dB
treble(20kHz):±5dB
bass(50Hz):±5dB
super bass(20Hz,12dB/oct):0dB〜12dB
ターンオーバー周波数 super treble:8kHz
treble:2kHz
super bass(12dB/oct):50Hz〜20Hz連続可変
bass:500Hz
フィルタ EQサブソニック:20Hz,−12dB/oct
ラウドネスコントロール(VR,−30dB) ターンオーバー周波数(250Hz):+8dB,25Hz
ターンオーバー周波数(500Hz):+8dB,50Hz
出力電圧/出力インピーダンス recout:150mV/500Ω
preout:1V/0.2Ω
プリアウト最大出力電圧 15V(総合)
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 65W
外形寸法 430W×97H×360Dmm
重量 8.8kg
電源スイッチ連動ACアウトレット 最大供給電力600W
※本ページに掲載したSU-A4の写真,仕様表等は1980年4月のTechnics
 のカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に著作権があります。
 したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じ
 られていますのでご注意ください。

  
 
 
★メニューにもどる


★セパレートアンプPART7にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp

inserted by FC2 system